訪問看護師の役割と仕事内容は?給料・年収から就業方法を解説

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昨今ますますニーズの増えている訪問看護師。この記事では訪問看護師の役割から仕事内容、給料・年収などの待遇傾向やどんな人が向いているのかまでレクチャーします。

訪問看護とは

訪問看護とは、看護師が自宅で療養する方の居宅を訪問して、必要な医療処置や日常生活援助を提供するサービスです。介護や医療サービスが必要な状態でも住みなれた自宅で過ごしたいと思う人を、できる限り平穏に過ごせるようにサポートします。

訪問看護の需要

入院期間が短くなっている昨今では、退院後も自宅で療養する人が増えていて、訪問看護の需要も高まっています。以下は直近20年間の訪問看護ステーション数の推移をまとめたグラフです。

訪問看護ステーション施設数の推移

訪問看護ステーション数

参考: 訪問看護の現状とこれから 2022年版

2001年の訪問看護ステーション数が4693か所であったのに対して、2021年の訪問看護ステーション数は12078か所と、直近20年間で2.5倍以上増えていることがグラフより読み取れます 。

さらに、厚生労働省の「社会保障審議会介護給付費分科会 資料3_訪問看護」より、訪問看護ステーションの従事者数も年々増加していることがわかり、訪問看護は年々ニーズが高まっているサービスといえるでしょう。

訪問看護師の役割

訪問看護師の役割は、利用者の自宅に訪問し医療サービスを提供することで、在宅療養をサポートすることです。訪問看護の対象者は主治医に訪問看護の必要性を認められた人で、年齢や疾患は問われません。

訪問看護師の仕事内容

訪問看護師の仕事内容は、医療処置から日常生活や心理的な援助まで多岐にわたります。以下では訪問看護師の主な仕事内容を紹介します。

訪問看護計画書の作成

訪問ステーションなどに在籍する訪問看護師は、病院看護師と同じく主治医が作成した「訪問看護指示書」をもとに訪問看護計画書を作成する必要があります。訪問看護計画書の作成は看護師資格の取得者が行う仕事なので、准看護師では行えません。

訪問看護計画書は主治医の指示、ケアプラン、利用者の希望に沿った内容にすることが大切です。作成する頻度は定められていませんが、月に1回ほどの頻度で主治医やケアマネージャーに提出するのが望ましいとされています。

健康状態の観察

利用者の健康状態の観察をすることは訪問看護において重要な仕事です。 訪問看護師は、看護計画に沿ってそれぞれの利用者の自宅に訪問しますが、利用者によって頻度やかけられる時間は異なります。

病院と違って毎日何度も観察できるわけではありません。限られた時間の中でも利用者の些細な症状も見逃さないように、注意して観察するようにしましょう。

医療処置

内服薬の管理・褥瘡の処置・カテーテル類の交換・酸素吸引など訪問看護師の医療処置は多岐にわたります。 さらに自宅療養における医療処置は、家族の協力が必要な場合もあります。訪問看護師は、利用者とその家族が安心して処置を行えるように、わかりやすくかつ的確な指導や説明を行うことも仕事の一つです。

訪問看護の医療処置は利用者の介護度や重症度によって大きく異なるため、幅広く行えることが理想でしょう。

日常生活援助

訪問看護師は、排泄や清潔など、利用者に合わせた日常生活のケアも行います。また同居の介護者がいる場合は、普段どのように介護を行っているのか情報収集し、必要があればアドバイスをすることもあります。日常生活援助を通して、自宅での療養が継続可能かどうかアセスメントすることも訪問看護師の重要な仕事です。

相談などの心理的援助

訪問看護師の仕事は、身体面の援助だけではありません。利用者本人はもちろん、介護者となる家族もさまざまな不安や悩み、ストレスを抱えています。利用者の不安に耳を傾け適切なアドバイスをするなど、心理面の負担を少しでも軽減できるような対応も必要です。

夜間や休日のオンコール対応

オンコール対応とは利用者からの電話対応のことであり、多くの事業所では利用者の急変に対して24時間365日対応できるようにオンコール体制が整えられています。電話のみで解決することがほとんどですが、場合によっては利用者の自宅に訪問して対応することもあります。ひと月の担当回数は事業所によって異なります。

訪問看護師の給料・年収はどのくらい?

次に、訪問看護師の給料・年収について、データをもとに解説します。 訪問看護師は日勤業務がメインなので、その分収入も低くなってしまうイメージがありますが、実際に給料を調査してみると、他の職場と大きな差が見られないデータもありました。

訪問看護師の給料

以下の表は、日本看護協会「日本看護協会 ナースセンター登録データに基づく看護職の休職・求人・就職に関する分析報告書」の「常勤看護師の採用を希望する施設が提示する給与の月額平均(総支給額)」をもとに職場ごとの看護師の給料を比較したものです。

訪問看護ステーション 26万7,215円
500床以上の病院 26万1,361円
200〜499床の病院  24万8,431円
20〜199床の病院  23万9,607円
介護老人保健施設  22万8,323円

引用: 日本看護協会 ナースセンター登録データに基づく看護職の休職・求人・就職に関する分析報告書

訪問看護ステーションの提示給与は他の職場と比較しても高めの水準となっており、大きな差がないことがわかります。

訪問看護師の年収

さらに厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」をもとに、訪問看護ステーションのような小規模施設で働く看護師の年収を計算したところ、およそ420万円でした。

企業規模が100人以上の施設で働く看護師の平均年収が462万円であることから、病院と比較するとやや低めの水準であることがわかります。給料や年収に関しては地域や事業所の規模によっても異なるため、一つの目安としてとらえましょう。

訪問看護師に資格や実務経験は必要?

訪問看護師になるために必要な資格や実務経験の必要性について解説します。

看護師または准看護師の資格は必須

訪問看護師は、看護師または准看護師の資格があればなることは可能です。新たに特別な資格を取得する必要はありません。また訪問看護師を通じてキャリアアップを考えている人は、在宅ケアなどの認定看護師やケアマネージャーなどの資格があると役立つでしょう。

実務経験が求められる職場もある

事業所によっては、病院での実務経験が求められる場合があります。理由は、訪問看護の利用者は年齢層が幅広く、さまざまな疾患を抱えているため、豊富な医療知識や経験があった方が幅広く対応できるからです。

また、他職種との関わりも多く業務の多くを一人で担当することになるため、ある程度の実務経験がある看護師のほうが経験の浅い看護師よりも不安が少ないといえます。

ただし、経験が浅いからといって絶対に訪問看護師になれないというわけではありません。経験が浅いけど、訪問看護師として成長していきたいという思いがある人は、各事業所で行っている教育体制についてもチェックしてみてください。

訪問看護師のメリット・デメリット

次に訪問看護師のメリットとデメリットを紹介します。

訪問看護師のメリット

訪問看護師のメリットとして以下の内容が挙げられます。

日勤業務がメインである

訪問看護では基本的に夜勤業務がなく、日勤業務がメインです。さまざまな事情で夜勤ができない看護師にとってはメリットだといえます。ただ、夜勤がなくても夜間のオンコールを担当する場合があるので、転職前には夜間の業務体制について確認しておくとよいでしょう。

利用者と一対一で向き合える

訪問看護は時間や訪問回数は限られていますが、時間内は対象者と一対一で向き合うことができます。一方で病院勤務の場合は複数の患者を一度に担当するため、一人の患者にかける時間が少ない傾向にあります。一人ひとりに思うように患者のケアができないと悩む看護師は魅力に感じるでしょう。

病院から在宅まで、一貫したスキルが身につく

病院勤務では、利用者が退院後に利用するサービスや、自宅療養における問題点などをイメージするのが難しいこともあります。入院から退院後の生活までをトータルで理解できると、利用者に必要な在宅・介護サービスの提案など、より良いケアを提供するためのスキルが身につくでしょう。

訪問看護師のデメリット

反対に訪問看護師で上げられるデメリットは以下の通りです。

夜間のオンコール対応がある

オンコール当番の日は自宅で待機することになりますが、いつでも対応できるように夜間でも準備をしておく必要があります。事業所によってオンコール当番の頻度は異なりますが、月に4~8回ほどが一般的です。家庭がある看護師の場合は家族の協力も必要になるので、人によっては負担に感じる場合も考えられます。

一人で行う業務が多い

訪問看護では、利用者の自宅への訪問をはじめ、オンコール対応・書類の作成・他職種との連携など、多くの業務を一人で行います。そのため、「一人でやっていけるだろうか」など、不安やプレッシャーを感じる可能性もあります。

時間管理や移動が負担になる

訪問看護師は、1日あたり3~5件程度の利用者宅に訪問します。それぞれ訪問時間が決められているため、業務に慣れるまでは時間管理が難しいと感じる可能性があります。

また、夏の暑い時期や冬の寒い時期なども外に出て移動することになるので、体力面で負担に感じることも考えられます。十分な体調管理も必要となるでしょう。

訪問看護師に向いている人は

ここまでの情報をもとに、訪問看護師に向いている人をまとめます。

訪問看護師に向いている人

  • 主体的に行動できる人
  • 臨機応変に対応できる人
  • 利用者と一対一で関わりたい人
  • 家庭の事情などで夜勤ができない人

幅広い仕事内容を一人でこなす必要があるため、主体的で状況にあった行動ができる人が向いているでしょう。しかし、仕事の取り組み方は経験を積むことで徐々に克服される場合もあるので、利用者一人ひとりと向き合いたいという熱意があることも大切でしょう。

訪問看護師が身につけておきたいスキル

訪問看護師の仕事内容や役割をふまえると、さまざまなスキルが必要であるといえます。 次に訪問看護師が身につけておきたいスキルについて解説します。

コミュニケーションスキル

看護師にとって、コミュニケーション技術は必要不可欠なものですが、訪問看護ではより重要となるスキルです。

限られた訪問時間でいかに利用者のニーズを聞き出してアセスメントし、ケアにつながるようなコミュニケーションをとる必要があります。さらに利用者との関わりだけでなく、問題があれば医師の指示を受けたり、ケアマネージャーに提案したりと、他職種と連携が必要になる機会も多くあります。

また、訪問看護は少ないスタッフ数で業務を行っているため、小さな職場で人間関係のトラブルを抱えてしまっては、利用者にも良いサービスを提供することはできません。自分のことだけでなく、同僚の気持ちも思いやれる能力も必要です。

観察・アセスメントスキル

訪問看護を行ううえでは観察力も非常に重要となるスキルです。限られた訪問回数のなかで利用者の変化を見逃してしまうと、利用者の状態の悪化を招く原因につながります。

常に細かい観察をする癖をつけておくことで、些細な状態の変化にも気づきやすくなるでしょう。利用者の全体像を正確にアセスメントし、必要な看護やサービスが受けられるように看護を実施していくことが必要でしょう。

キャリアプランを描くうえで訪問看護師も選択肢に

訪問看護師は、一人での判断が求められる場面もあり、責任の重さに不安を感じるかもしれません。しかし、利用者と一対一で向き合って看護をしたい方や夜勤がない職場で働きたい方に向いています。病院以外で働きたいと考えている人は、訪問看護も一つの選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。

【参考】

訪問看護の現状とこれから2022年

JVNF公益財団法人日本訪問看護財団

日本看護協会 ナースセンター登録データに基づく看護職の休職・求人・就職に関する分析報告書

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伊藤雪乃
この記事を書いた人
伊藤雪乃
2003年に看護師免許取得後、北海道の公立病院に5年間勤務し、地域医療をに携わる。その後埼玉県の介護施設(ショートステイ)で3年、整形外科病院に10年勤務。 2018年ごろから副業でライターをはじめ、現在はウェブと書籍に携わるフリーライターとして活動中。 2022年11月発売「私立文章女学院」編集協力

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