2025年問題が看護師に与える影響。余るって本当?今からできる対策を解説

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医療介護業界が抱える課題である「2025年問題」。医療現場で働く看護師にもさまざまな影響があると考えられます。今回は国の動向を踏まえ、看護師の今後の働き方や2025年を見据えて今からできる対策を解説します。

2025年問題とは?

2025年問題とは、団塊世代(ベビーブーム世代)が2025年に人口の約18%を占める75歳以上の後期高齢者となり、超高齢化社会になることです。その先の2040年には人口の約35%が後期高齢者になると推計されています。

2025年問題が医療業界に与える影響

2025年問題で高齢者が増えることによって、がん・心疾患・脳卒中などの疾患や認知症を抱える高齢者が増加し、医療・介護のニーズが増大すると考えられます。地域差はあるものの、2025年に医療需要がピークとなり2035年には介護需要がピークと予測されています

一方少子化が進むなかで不足している医師や看護師をいかに確保するかといった問題が考えられます。また、医療保険や介護保険の利用増加も見込まれることも課題のひとつです。

病床を削減し、療養の場を自宅や地域へと移していくなかで、治療するための医療や最低限の生活を保障するだけの福祉から、予防医療や人間らしく過ごすための医療・福祉が求められるようになるでしょう。

2025年問題に対する国の動向

医療分野における2025年問題に対応するための国の策として、次の3つの取組みが挙げられます。

  • 地域包括ケアシステム
  • 地域医療構想
  • 病床再編

それぞれどのようなものなのか、詳しく解説します。

地域包括ケアシステム

地域包括ケアシステムとは、要介護状態になっても最期まで住み慣れた地域でその人らしく暮らせるための支援体制です。

2025年を目処に構築が推進されており、住まい・医療・介護などの支援を包括的に提供できる地域づくりを目指します。それ伴って「病院で完結する医療から地域で完結型の医療」へと移り変わっていくことが予想されます。

地域包括ケアシステムでは、都道府県や市区町村など地域の特性に応じた体制づくりのほか、さまざまな職種の専門家による連携が必要です。

地域医療構想

地域医療構想とは、推計人口から地域ごとに必要となる医療と病床の必要量を推計し、無駄と不足のない医療体制を構築するための計画です。

病床は、次の4つの医療機能にわけて必要量を算出します。

  • 高度急性期
  • 急性期
  • 回復期
  • 慢性期

地域ごとに病床の偏りや過不足を明らかにし、2025年問題に対応できる医療体制を整える動きがみられます。

病床再編

病床再編とは、地域医療構想で明らかになった医療機能のニーズに合わせて、病床数を新たに編成し直すものです。診療報酬が最も高い急性期病床を削減し、2025年頃からニーズが高まる回復期病床を増やします。

医療費の抑制と、回復期病床へのニーズ増加に対応することが病床再編の主なねらいです。

2025年問題が看護師へ与える影響

2025年以降は国が講じる対策の影響を受けて、看護師にも働く環境や役割などさまざまな変化が求められるでしょう。働く場所によっては看護師が余るという現象なども見受けられるかもしれません。

在宅看護のニーズ増加

地域包括ケアシステムを構築するうえで、在宅看護のニーズ増加が予測されます。看護教育の場でも「在宅看護論」という科目が「地域・在宅看護論」へと変更され、看護の対象者や療養する場の多様化に対応できるようアップデートされています。

現役の看護師にも同様に、考え方や知識のアップデートが求められるようになるでしょう。

求められる役割の変化

病気を治すことだけではなく、病気を抱えながら生活する人を支える医療に重きが置かれるようになることで、看護師に求められる役割も徐々に変化することが考えられます。

看護師は病態や病気による身体の変化、治療に使う薬などを総合的に理解しているため、必要な支援を考えて適切なサービスへつなぐ役割も期待されるようになるでしょう。

看護師は不足する?余る?

「看護師が不足する・余る」といずれの説もありますが、看護師全体でいえば依然として人手不足の状況が続くでしょう。ただし就業場所によって不足するか余るかは変わってきます。

病床機能の再編により、急性期病棟の看護師は余る可能性がある一方で、在宅看護や介護など地域医療においてはニーズの増加から不足が見込まれます。

看護師におすすめの今後の働き方

今後看護師の働く場所は病院だけでなく地域へと広がり、働き方も多様化します。おすすめの働き方は、興味関心やライフスタイルによっても異なりますが、需要の高まりに応じた働き方も選択肢のひとつです。2025年問題以降で需要がより高まる働き方を3つ紹介します。

訪問看護師として働く

訪問看護師のニーズは今後より増加していくと考えられます。訪問看護ステーションでの勤務や、保険の制約にとらわれずに在宅でのケアを提供するプライベートナースといった働き方を視野に入れてみるのもおすすめです。

介護施設の看護師として働く

高齢者が増えることで介護のニーズが高まり、介護施設では看護師が不足すると考えられます。特別養護老人ホームなどの要介護者向けの施設だけでなく、サービス付き高齢者向け住宅など介護度が比較的軽い高齢者が利用する施設もあります。

回復期病床で働く

今後病院で働くのであれば、病床が増える回復期病床に注目しておくとよいでしょう。病床再編により、回復期病床を37.5万床まで増やす目標があります。

中央社会保険医療協議会によると、2019年度病床機能報告において回復期病床は18.6万床となっており、2015年時点の13万床から5.6万床の増加が見られました。目標値には遠いものの、2025年にはさらに2.2万床増加し、20.8万床になる見込みです。

2025年問題に向けて看護師がいまからできる対策

看護師にさまざまな変化が求められる今、今後高まるニーズを理解したうえで新たなチャレンジを検討することは必要不可欠です。看護師としてできる対策をとり、2025年以降も活躍できる看護師を目指しましょう。

地域の特性を知る

地域の特性をいまから理解しておきましょう。地域包括ケアシステムでは、地域によって提供する医療にも特色が出ると考えられます。

たとえば、認知症の入院患者が増えてきたという実感から、認知症ケアマニュアルの作成、認知症看護認定看護師との連携など、先々で必要になる対策を予測できるはずです。

他職種の専門性を理解する

他職種の人と連携するために、どのような職種があり、それぞれどのような専門性があるのかを理解しておきましょう。

地域包括ケアシステムのなかで働くにあたり、保健師・訪問看護ステーションの看護師・介護福祉士・ケアマネージャー・薬剤師・管理栄養士など、多くの職種の人と連携しながら患者さんをサポートする必要があるためです。

資格を取得する

地域での看護や高齢者の看護などの分野で資格を取得するのもよいでしょう。以下は在宅・地域看護に関するおすすめの資格です。

  • 認定看護師(在宅ケア(※旧区分では訪問看護)、認知症看護など)
  • 専門看護師(地域看護、老人看護、慢性疾患看護、家族支援、在宅看護など)

その他、保健師やケアマネージャーなどとのダブルライセンスを取得して知識と活躍の場を広げることで、ニーズに対応しやすくなります。

新しい技術へのリテラシーを高める

新しい技術を業務に役立てる能力を養うため、医療ICTにはどのようなものがあるのかをチェックし、情報を追っていきましょう。

科学技術の進歩により、電子カルテや電子お薬手帳、オンライン診療など、医療分野でもITC化が進んでいます。今後病院や薬局、他施設が患者の情報を電子化して共有・閲覧できる「地域医療情報連携ネットワーク」システムも、普及していく可能性があるでしょう。

「治す」から「暮らしを支える」看護師に

長期高齢社会が深刻化する2025年問題。医療や介護のニーズは高まるものの、人手不足が懸念されます。病院で治療を手助けする看護師だけでなく、多職種と連携しながら地域で暮らす人を支える看護師のニーズが今後高まるでしょう。専門性を高めつつ、広い視野と知識をもち、地域の特性を理解しながら働くことが大切です。

参照

回復期入院医療について|中央社会保険医療協議会

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白石弓夏
この記事を書いた人
白石弓夏
1986年千葉県生まれ。2008年に看護専門学校卒業、看護師免許取得。10年以上病院やクリニック、施設等で勤務。2017年よりライターとして活動。現在は非常勤として整形外科病棟でも勤務中。2020年11月には9人の看護師にインタビューした著書『 Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~(メディカ出版)』を発売。

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