【業務独占資格】【名称独占資格】【設置義務資格】とは?違いは?医療福祉、看護師、保健師は?

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国家資格の「業務独占資格」と「名称独占資格」は何が違う?

「看護師」「保健師」「助産師」などの看護職は、保健師助産師看護師法に基づき、厚生労働大臣が認定した「国家資格」です。医療・介護の職場では、ほかにもさまざまな国家資格を持つ職種が働いています。さらに、同じ国家資格でも【業務独占資格】【名称独占資格】【設置義務資格】などの違いがあります。「看護学生時代に勉強したような…?」と曖昧な方は、この機会にもう一度整理しておきましょう!

目次

  1. 医療現場の国家資格ってどんな資格?
  2. 国家資格の種類と分類は?
  3. 無資格で業務を行うと罰せられるのが【業務独占資格】
  4. 無資格で名称を名乗ると罰せられるのが【名称独占資格】
  5. 【業務独占資格】と【名称独占資格】その意味を理解すると区別しやすい!

医療現場の国家資格ってどんな資格?

医療現場で働く職種のほとんどが「国家資格」ですが、「じゃあ、国家資格って何?」と聞かれて正確に答えられる自信はありますか?

国家資格とは、国の法律に基づいて、ある特定の分野で「一定以上の能力・知識がありますよ」「その分野(職業)に従事してもいいですよ」と認め、証明する仕組みのことです。

国家資格の代表的なものには、医師・看護師・薬剤師などがあります。

これらの職業は、その分野における能力・知識が十分でなければ生命を脅かす危険性もあること、その高い専門性から一定の社会的地位・信頼性が保証されています。

国家資格の種類と分類は?

国家資格には、大きく分けて3つの種類があります。

それが「業務独占資格」「名称独占資格」「設置義務資格」です。

業務独占資格

ある特定の業務(仕事)において「資格を持つ人だけに、その業務に従事することを認める」という資格が業務独占資格です。

これは、「資格がなければ、その業務に従事することはできない」と言い換えることもできます。

業務独占資格の中で、医療関係の資格には次のようなものがあります。

弁護士、税理士などそのほかの資格を全部合わせると100種類近い資格が定められています。

● 医師・・・医師の資格がなければ、医業を行うことはできない
● 歯科医師・・・歯科医師の資格がなければ、歯科医師業を行うことはできない
● 薬剤師・・・薬剤師の資格がなければ、調剤業務を行うことはできない
● 看護師・・・看護師の資格がなければ、傷病者や褥婦の療養上の世話・医師の診療の補助を行うことはできない

それぞれの資格と業務内容、業務範囲は法律で定められており、その行為を無資格者が行うと、法律違反となり罰せられます。

ただし例外もあり、看護業務・調剤業務・放射線照射業務については、状況に応じて医師自らが行うことを認めています。

名称独占資格

ある特定の業務(仕事)において「資格を持つ人だけが、その名称を用いることができる」という資格が名称独占資格で、医療分野では以下のようなものがあげられます。

● 保健師
● 栄養士・管理栄養士
● 理学療法士
● 作業療法士
● 臨床検査技師

これらの資格は、「資格を持たない人がその職業を名乗ること」は禁止していますが、資格を持たない人が、その業務を行っても罰せられることはありません。

例えば、保健師の主な業務に保健指導や健康相談がありますが、これらの業務は看護師も行うことができます。

つまり、「看護師として」保健指導・健康相談を行うことは問題ありませんが、保健師の資格を持たない看護師が「保健師」と名乗ってそれらの業務を行うと罰せられるということです。

栄養士や理学療法士の業務についても同様で、看護師が看護の一環として栄養指導や関節可動域訓練を行うことはできますが、「栄養士」「理学療法士」の名称を用いることは禁止されています。

ちなみに、医師・薬剤師・看護師は「業務独占資格」であり「名称独占資格」でもあります。

設置義務資格

設置義務資格(必置資格)とは、特定の事業や業務を行う際、その企業・事業所・病院などに「資格保持者を最低1名置かなければならない」というものです。

医療分野では、病院などで重要な薬剤を管理する「麻薬取扱者」や「毒物劇物取扱責任者」、ドラッグストアで一般用医薬品(第二類・第三類)を販売する「登録販売者」などが該当します。

このように、ひとことで「国家資格」といっても、業務独占・名称独占・設置義務資格などさまざまな分類があります。

無資格で業務を行うと罰せられるのが【業務独占資格】

業務独占資格は、医師なら医師法、看護師や助産師なら保健師助産師看護師法というように、それぞれの資格(職業)の根拠となる法令があり、業務内容は法の中で決められています。

そして、無資格で特定の業務を行うことを禁止しています。

このような法的規制を行う背景には、専門的な知識・能力が保証されていない人(資格を持たない人)がその業務を行うことで、健康・財産・最悪の場合は命をも脅かす恐れがあるためです。

医師資格を持たない人が医業を行う、看護師資格を持たない人が医師の診療の補助を行うなど法律に違反した場合は、懲役もしくは罰金刑の厳しい処罰があります。

無資格で名称を名乗ると罰せられるのが【名称独占資格】

無資格で特定の業務を行うことを禁止する業務独占資格に対し、名称の使用を禁止するのが「名称独占資格」です。

理学療法士の資格を持たない人が「理学療法士」と名乗ることはもちろんのこと、あたかも理学療法士の資格を持っているかのように、似たような名称を用いることも禁止されています。

医療に従事する多くの職種が、この「名称独占資格」となっているのは、「専門的な資格・業務を識別すること」「社会的な信用を確保すること」「特定の行為による被害を未然に防ぐこと」などの理由があるためです。

業務独占資格と名称独占資格、その意味を理解すると区別しやすい

看護学校での勉強や国家試験の受験以来、あまり耳にすることのなかった「業務独占」「名称独占」という言葉。

「看護師はどっち?」「保健師は?」とわからなくなったときは、無資格者が「業務を行う」もしくは「名称を名乗る」ことで罰せられる国家資格と覚えると、区別しやすいのではないでしょうか?

この機会に、改めて整理しておきましょう。

■この記事を書いた人:遠藤愛(えんどうあい)
関東の病院で外科・内科・地域包括ケア病棟、地域連携室に勤務。
その後、介護施設、訪問看護に従事。看護学校での外科看護臨時講師の経験あり。

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