看護師の妊娠報告はいつするべき?夜勤など働き方の注意点

全て表示

eyecatch

女性にとって大きなライフイベントのひとつである妊娠。看護師の場合、妊娠報告のタイミングやいつまで夜勤を続けるかなど悩みも多いでしょう。妊娠中の働き方と注意点、看護の現場でも起こりやすいマタハラへの対処法もあわせて解説します。

妊娠がわかった看護師がまずやるべきこと

妊娠がわかると、これから起こる体調の変化や赤ちゃんの経過など、さまざまな思いを抱くことでしょう。そんななか、看護師をはじめ働く女性は、妊娠がわかったら職場に報告し、今後の働き方についても考えていく必要があります。

妊娠がわかったらまずやるべきことを以下で解説していきます。

産休時期の把握

妊娠がわかったらまず出産予定日を予測し、産休時期を把握してみましょう。妊娠初期は出産予定日が確定されていない時期なので、最終生理開始日から計算し、出産予定日を予測します。

今は出産に関するアプリが多くあるので、それを活用すると簡単に出産予定日を予測できます。産休時期は、出産予定日の前6週間(双子の場合は14週間)と産後8週間になります。

産後の育休取得や働き方の検討

妊娠がわかったばかりの初期は体調不良が起きやすいため、産休や育休のことまでしっかりと考えられないかもしれません。体調が落ち着いているときに育休を取得した後に職場復帰するのか、出産に伴い一度職場を離れるのかなど、家族とも相談しながら産後の働き方を検討しておきましょう。

産休・育休に関する制度や、給付金について調べ、産後の生活をイメージしておくと、直前になって焦ることがなく安心です。産休・育休の制度に関する詳細は、別の記事で解説していますので、そちらを参考にしてください。

職場へ報告

出産予定日がわかり、今後の働き方についてプランがまとまったら、職場に報告しましょう。看護業務のなかには妊婦が避けるべきものもあり、妊娠中は疲労感や体調不良が起きやすく、職場は急な休みにも対応できるよう人員配置などを考慮する必要があるためです。

ただ、看護師の職場は基本的に人員不足かつ多忙であるため、多くの看護師が報告をためらってしまう傾向があります。
看護師の適切な妊娠報告の時期や内容について、以下で詳しく解説していきます。

看護師の妊娠報告はいつが最適?

次に、看護師の妊娠報告に最適な時期や報告内容について解説します。

妊娠がわかったら早めに報告した方が安心

看護師の場合は、妊娠がわかった時点で早めに報告するのがベストです。看護師の職場は放射線や薬剤、感染症患者への対応など、胎児への影響が懸念される業務があるほか、看護業務は重労働が多いため体への負担も心配です。

とくに妊娠初期(~13週)はホルモンバランスの変化により情緒が不安定になりやすく、つわりや倦怠感など体調にも変化が起き始めます。体調がすぐれず急な休みをもらう可能性もあるため、上司には早めに報告しておくと安心です。

「安定期までは周囲に知られたくない」という場合は、上司への報告とあわせて他のスタッフへの報告時期について相談しましょう。

妊娠報告の際に伝えるべき内容

上司に妊娠を報告する際に、ナースステーション内では伝えづらい場合も多いと思います。あらかじめ上司に時間を作ってもらい、別室の落ち着いた環境で報告した方が安心です。報告する際は以下について報告しましょう。

  • 現在の週数
  • 出産予定日(初期の場合は確定していないことが多いので、大まかでOK)
  • 体調面や業務上の不安なことなど
  • 今後の働き方について

妊娠報告の際に、産休・育休の取得や復帰後の働き方についての希望を伝えておくことで、上司も人員配置が立てやすくなります。ただ、妊娠経過によってはプランが変わる可能性もあります。上司とは定期的にコミュニケーションをとり、情報共有をしておくことも必要でしょう。

【妊娠報告の例文】

妊娠していることがわかり、現在○週で、出産予定日は○月○日頃の予定です。
つわりなど体調が不安定になることもあるかと思い、早めにご報告させていただきました。
今後の業務についてご相談させていただいてもよろしいでしょうか?

【その後伝える内容の例】

  • 産休に入るのは○月ごろからの予定です。(産休入りはいつ頃か)
  • 育休も取得したいと考えています。(育休取得を希望するかどうか)
  • 育休明けは復帰させていただきたいと思っています。(産後の働き方について)

【締めの挨拶】

ご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが、引き続きよろしくお願いします。

看護師の妊娠中の働き方【Q&A】

ここからは、看護師の妊娠中の働き方でよくある疑問について解説します。

Q1.つわりで休める日数は?

つわりは妊娠5〜6週ごろから始まり、12週ごろから少しずつおさまることが一般的です。ですが、つわりの症状は個々によって異なり、なかには出産まで続く人もいます。 そのため、仕事ができないほど症状がつらい人は期間関係なく休むことは可能です。

また、つわりがひどい人は医師の診断により、傷病休暇の対象になる場合もあります。傷病休暇中の給料は出ませんが、健康保険から「傷病手当金」が支給されます。支給条件については勤務先の病院に確認してみましょう。傷病休暇が取れない人は、有給休暇を使うか欠勤扱いとなる可能性が高く、毎月の給料に影響することを考慮しておく必要があります。

Q2.妊娠中の夜勤業務はいつまで可能?

妊娠中の看護師の夜勤業務に関しては個人の体調や要望、職場の方針によって異なります。
職場側は妊婦が希望した場合、夜勤業務の強制はできません。夜勤業務がつらいと感じた場合には、上司に相談してシフト調整をお願いしましょう。

参考:労働基準法のあらまし(妊産婦等)

逆に、ご自身が希望すれば夜勤業務は可能ですが、妊娠中は疲れやすく体調が不安定であるほか、夜勤のスタッフ数は少ないため、夜勤中にトラブルがあった際に対応が難しくなることもあります。夜勤業務の継続は体調面を考慮し、職場や家族とよく相談のうえで決めましょう。

Q3.体調が悪い時はどうしたらいい?

体調が悪い時は無理せずに休むことを検討しましょう。業務中に体調が悪化してしまうと、患者さんに怪我をさせてしまうリスクも考えられます。ご自身の体調だけでなく、患者さんの安全面を考え、無理をせず周囲に相談しましょう。

こんな症状の時は無理せず休もう

  • 吐き気が強く起きているのもつらい
  • お腹の張りがある
  • 頭痛・めまいがある
  • 気分が不安定

体調が悪い時は早めに上司に相談し、フォローしてほしい業務とできそうな業務を具体的に伝えましょう。

母性管理指導事項連絡カードを活用しよう

「母性管理指導事項連絡カード」とは、医師等から女性労働者への指示事項を適切に事業主に伝達するためのツールです。妊産婦が医師等から通勤緩和や休憩などの指導を受けた場合、その指導内容が事業主に適切に伝えるようにするために使われます。「診断書」ではないので、特別な病名がなくても記入してもらえます。

カードがなくても、自分から業務の緩和を申し出ることは可能ですが、上司に言いづらい場合など、医師に相談のうえで記入してもらうのも一つの方法です。

看護師妊娠記事用_母性管理指導事項連絡カード

出典:厚生労働省/妊娠出産・母性健康管理サポート

Q4.勤務中に注意することは?

看護師の妊娠中の勤務においては、以下のことに注意が必要です。

感染症

妊娠中は通常よりも免疫力が低下しやすいので、感染症に十分注意してください。感染症のなかには風疹や水痘など、胎児に影響を与えるものもあるため、感染予防は徹底しましょう。

手洗いうがいなどの標準予防策はもちろん、感染リスクのある患者の担当は避けるなど調整を依頼することも検討してください。妊娠中、万が一感染症が疑われる症状が出た場合は、医療機関に電話連絡をし、指示を仰ぎましょう。

放射線・化学療法

放射線は胎児に悪影響を与える可能性があります。特に妊娠初期は胎児の臓器や組織の形成が活発に行われる時期です。透視下で行う検査や処置などには入らないようにし、被ばくを避けましょう。

ただ、人員数の関係でどうしても患者をレントゲン室に案内しなければならないこともあるかと思います。その際は、撮影室には入らないようにするなど、リスクを最小限にして業務にあたりましょう。

重労働

妊娠すると、疲労感や体調不良が起きやすくなります。そのため妊娠中の看護師の重労働は、体に負担がかかるものといえます。また、腹部に負荷のかかるような業務は、お腹の張りを引き起こす原因にもなります。

おむつ交換や体位交換、患者の移乗介助のような無理な姿勢をとる動作はできるだけ代わってもらうようにしましょう。

Q5.働く妊婦を守る制度はある?

妊娠がわかったものの「同僚に迷惑をかけてしまうのではないか」と、周囲の反応に不安を感じている看護師の方も多いでしょう。働く妊婦を守るため、以下の法律が定められています。

労働基準法「母性保護規定」

項目内容
妊産婦等の危険有害業務の就業制限重量物を取り扱う業務、有毒ガスを発散する場所における業務などの、妊娠・出産・保育に有害な業務に就かせることはできない
妊婦の軽易業務転換前屈み作業、長時間の立ち仕事など、身体的に負荷が大きい作業環境にある場合、妊婦が請求した場合は軽易な業務に転換させなければならない
時間外、休日労働、深夜業の制限、変形労働時間制の適用制限妊産婦は時間外労働、休日労働、深夜業(22時〜5時まで)の免除を請求できる

男女雇用機会均等法「母性健康管理規定」

項目内容
指導事項を守ることができるようにするための措置・妊娠中の通勤緩和(時差通勤、勤務時間の短縮等の措置)
・妊娠中の休憩に関する措置(休憩時間の延長、休憩回数の増加等の措置)
妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止妊娠・出産や、産休育休の取得、労働基準法による母性保護措置を受けたことなどを理由に不利益取扱いをしてはいけない
※不利益取扱いの例
・解雇
・契約を更新しない
・降格
・減給や不利益な査定

参考:妊娠・出産期に知っておくべき法律や制度
   厚生労働省/働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について

産後の働き方を検討しておこう

子どもが生まれ、ライフスタイルが変わることで出産後の働き方について悩む人も出てきます。産後の働き方は人それぞれです。さまざまな選択肢があることを理解することで、産後の働き方に対する不安や悩みを最小限にできます。

復帰する

現在の職場への復帰を考えている場合、仕事と子育ての両立を考えていく必要があります。以下の点について検討してみましょう。

育休はいつまで取るのか

育休は、産後8週から子どもが1歳になるまで取得可能ですが、取得期間は個々で異なります。職場内に子育て中の看護師がいるようなら、育休取得状況や育休復帰後の勤務について話を聞いてみましょう。復帰後のイメージがつきやすくなります。

また復帰する場合は、子どもの預け先も検討しなければなりません。職場の託児所や居住地の保育園について調べておきましょう。あわせて、家族のサポートはどのくらい受けられそうか考えておくことも大切です。

夜勤は可能か

もともと夜勤業務をしていた看護師は、復帰後の夜勤も悩みの一つです。小さな子どもがいる場合、希望すれば夜勤業務を免除される法律もあります(育児・介護休業法/「時間外労働、深夜業の制限」)。就業規定により夜勤が免除される職場もあるので確認してみましょう。
また、夜勤を続ける場合は、夜間の子どもの預け先も考えておく必要があります。夜勤の免除を希望する場合は、早めに上司に相談しましょう。

参考:厚生労働省/働きながらお母さんになるあなたへ

常勤か非常勤か

常勤看護師は非常勤に比べて勤務時間が長く、任される仕事も多いため、子育てと仕事の両立に不安を感じる人も多いでしょう。実際に子育てをしながらの仕事は心身ともに負担が大きいものとなるため、復帰後のライフスタイルをイメージし、家族のサポートを受けることも大切です。
両立に不安を感じる場合は、子育てと仕事の両立に慣れるまで、非常勤として働くことも一つの方法です。

退職する

妊娠・出産を機に退職を希望する場合、早めに上司に相談しましょう。また、退職する場合に心配なのは今後の資金面です。給料がなくなっても毎月の生活費などに不安はないか、見直しておくことが大切です。
退職せずに産休・育休を取得すれば、出産手当金や育児休業給付金などが支給されるため休職中も収入が確保できるというメリットもあります。

各種手当については、下記の記事で解説していますので、参考にしてください。

退職する場合、子育てが落ち着いてから看護師として復職するかどうかも検討しておきたい部分です。
一度現場を離れた看護師の多くがブランクに悩んでいます。看護師としてのキャリアプランや希望するワークライフバランスについて、家族も含めて相談してみてください。

看護師としてキャリアを継続したい場合、期間があいても元の職場に再就職できるかどうか、退職前に相談しておくのもよいでしょう。

育休中の退職に注意

育児休暇中に退職すると、育児休業手当の支給対象ではなくなるので注意が必要です。ただ、雇用保険に加入している人は、要件を満たせば失業保険の手当が受けられる可能性があるので、そちらの手続きを進めることで生活費に充てることができます。職場に確認してみましょう。

転職する

出産後、転職を希望する場合には、子育てとの両立のほか自分自身が働きやすい環境かを検討することが大切です。

子育てと両立しやすい職場か

産後の転職を選ぶ際、仕事と子育てを両立しやすい職場であるかを検討しましょう。両立しやすいかどうかの判断材料の例としては以下になります。

  • 自宅、もしくは入所保育園までの距離
  • 院内託児所があるか
  • 子育て中の看護師はいるか
  • 子育て中の看護師へのサポート体制(夜勤免除、子育て支援手当など)

希望する勤務体制とマッチしているか

子育て中の多くの看護師は、できるだけ子育てを優先しつつ仕事を続けたいと考えていると思います。
看護師は正社員・パートなどの勤務形態や、夜勤・休日出勤などの勤務体制などさまざまな働き方が可能です。自分のキャリアプランを考慮し、家族ともよく相談したうえでよく検討しましょう。

看護師が遭いやすいマタハラへの対処法

「マタハラ」とは妊娠・出産、育児休業等を理由として、解雇や不利益な異動、減給、降格など不利益な取扱いや嫌がらせを行うことをいいます。「マタハラ」から身を守り、正しく権利を主張できるように、妊娠・出産に関する労働法を理解しておきましょう。

下記のような言動は「マタハラ」に該当し、男女雇用機会均等法で禁止されています。

【マタハラに該当する言動の一例】

  • 妊娠(つわり)は病気じゃない
  • 夜勤ができないならパートになれば?
  • 私が妊婦の時はもっと働いていた
  • 男のくせに育休なんて…(マタハラの男性版「パタニティハラスメント」)

残念ながら看護師の現場でもマタハラと思われるような言動が聞かれることはゼロではりません。そこで、看護師のマタハラへの対処法を紹介します。

信頼できる管理職に相談する

マタハラを受けた場合、信頼できる上司に相談し適切に対応してもらいましょう。もし上司に話しづらい場合は仲の良い同僚でもかまいません。一人で抱え込んでしまうと、心身への悪影響につながります。解決策を講じながら、該当の相手とは距離を取りましょう。

適切な窓口に相談する

相談できる人が身近にいない場合、職場のハラスメント対策を行なっている窓口があれば、そちらに相談してみましょう。職場に相談窓口がない場合は、公的機関でもハラスメントの相談窓口を設けているので、利用してみるのも一つの方法です。

参考:日本看護協会/はたらくナースの相談窓口
   厚生労働省/あかるい職場応援団

証拠を残しておく

マタハラ言動をする人は、自分が発した言動を覚えていないものです。そのため、職場で何らかの対処を行なってくれた際に、証拠があると役立ちます。メモや日記に残す程度でもしておきましょう。

職場を離れることを検討する

マタハラが横行している場合、本来はしかるべき手段で解決し、妊娠中の看護師が安心して働ける環境を整備すべきですが、職場によっては人手不足などの理由から即座に解決することが難しい場合もあります。

マタハラによって不眠や気分の落ち込みなど、心身へ大きな負荷がかかっている場合は、退職や転職などその職場から離れることも選択肢のひとつです。自身の健康と赤ちゃんの安全を第一に、上司や人事などに相談のうえ判断しましょう。

参考:日本看護協会「職場のハラスメント対策」
   厚生労働省「働きながらお母さんになるあなたへ」

妊娠がわかったら早めに報告を

看護師の業務には母体に負荷がかかりやすい重労働が多く、放射線や薬品など胎児に影響を及ぼす可能性のあるものを扱う場面もあり、妊娠中の働き方には注意が必要です。つわりなどの体調不良で急な休みを取る可能性もあります。
そのため、妊娠がわかったら早めに報告した方が安心です。妊娠中の不安を最小限にするための注意点を理解し、ご自身と赤ちゃんの健康を守りましょう。

伊藤雪乃
この記事を書いた人
伊藤雪乃
2003年に看護師免許取得後、北海道の公立病院に5年間勤務し、地域医療をに携わる。その後埼玉県の介護施設(ショートステイ)で3年、整形外科病院に10年勤務。 2018年ごろから副業でライターをはじめ、現在はウェブと書籍に携わるフリーライターとして活動中。 2022年11月発売「私立文章女学院」編集協力

ナース転職求人を知りたい方

こちらの記事もおすすめ