看護師の退職金制度とは?制度の仕組みから支給額の計算方法までを解説

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退職時に支払われる退職金。退職の際に自分がいくらもらえるのか気になりますよね。退職金はどのように計算され、差し引かれる税金や支給されるのか額の目安や相場を解説。退職後のプラン設計に役立ててください。

看護師の退職金制度を理解してマネープランに備える

退職を検討した際に気になることのひとつに「いま辞めて退職金がいくらもらえるか」があるはずです。看護師の退職金は、定年まで勤務しなくとも3年前後の勤務実績があれば支給されるのが一般的。また、勤務年数が長い場合や役職や実績がある場合には、より高額な退職金を得ることも可能です。退職金は退職後のライフプラン、マネープランを左右します。看護師の退職金制度や相場に支給の条件を理解しておきましょう。

退職金制度とは?

退職金は福利厚生の1つで、退職の時に勤め先から支払われるお金のことです。退職金というと「定年退職のときにもらえる」というイメージの方もいるかもしれませんが、定年退職とは関係なく支給されることがある制度です。実際の支給額は勤め先によって異なり、制度や計算方法がとてもわかりにくいのが退職金の難点です。退職金制度には「退職一時金制度」「企業年金制度」「前払い制度」の3つがあります。自身の勤務先がどのような制度を適用しているのか、就業規則や給与規定を確認しましょう。

勤務先の制度によっては退職金がないこともあるので注意が必要です。

退職金制度は必ず設けられている?

退職金を支払うかどうかについては、法律で決められているわけではありません。退職金の有無や金額は、勤め先によって異なります。

厚生労働省の統計によると、退職給付(一時金・年金)制度がある医療・福祉系の企業は87.3%で、約1割の企業には退職金がありません。
さらに、従業員数1,000人以上の企業の92.3%は退職金制度がありますが、従業員数が30〜99人になると77.6%になります。規模が小さくなると退職金制度がない確率は高くなるのです。医療機関に置き換えると、総合病院などの規模の大きな医療機関では退職金制度がある確率は高く、クリニックなど小規模の医療機関では退職金制度のない確率が高まります。

自分の勤め先に退職金制度があるかどうかは、就業規則や賃金規則、契約書類を参考にしましょう。「いくらもらえるのか」の前に「自分の勤め先は退職金制度があるのか」を知っておくことが大切です。

退職金の3つの制度 それぞれの特徴とメリット・デメリット

「退職金」は制度によって以下の3つに分類されます。それぞれの特徴とメリット・デメリットを紹介します。

退職金の種類とメリット・デメリット
特徴 メリット デメリット
退職一時金制度 退職時に一括で受け取る 税金がほとんどかからない 計画的に使わなければならない
退職年金制度(企業年金) 分割して定期的に受け取る 自分で管理しなくてもよい
必要があれば、一括で受け取れる
企業によって制約のある場合がある
(運用先を選べない、60歳まで出金できないなど)
前払い制度 給与やボーナスに上乗せされている 基本給が高く、毎月の給与が増える 税金や社会保険料が高くなる

看護師は退職金をいくらもらえる?目安と計算方法を解説

退職金制度は勤め先によって異なり、制度の内容も複雑です。ここでは、退職金をいくらもらえるか、支給時期と支給金額の簡単な計算方法を紹介します。

勤務年数が条件を満たさないと支給されない場合も

勤務年数が条件を満たさないと退職金は支給されない可能性があります。医療機関で多いのは「勤続3年目以上」に支払われるというケース。「日数が足りなくて退職金をもらえなかった」と後悔しないように、就業規則等を確認したうえで退職時期を決めるようにしたいですね。

支給時期の目安

退職金の支給時期は勤め先によって異なります。一般的な支給時期の目安は、退職日から1〜2か月後の給料日。支給までの期間が長いケースでは、6か月~1年後に支払われたということもあるようです。法律の取り決めがないものなので、事前に支給時期を確認しておきましょう。

退職金の計算方法

「退職金の計算方法は難しそう……」と考えている人も多いでしょう。退職金の計算方法は、大きく3つに分けられます。簡単に3つの種類について解説します。

基本給から計算

退職時の基本給と勤続年数から計算する方法です。勤続年数によって支給率が決まり、長く勤めるほど退職金は多くなります。役職や貢献度が加味される場合もあります。

勤続年数から計算

基本給の額に関係なく勤続年数に連動して支給額が決まる方法です。支給額は定額のため、長く勤めると退職金は多くなります。

ポイント制度・実績から計算

勤続年数や役職ごとに毎年ポイントが加算され、退職時の総ポイント数で退職金が決まる制度です。この制度では、1ポイントあたりの単価が決まっていて、総ポイント数×単価が退職金となります。貢献度や人事評価なども加味され、同じ勤務年数でも一人ひとり退職金の支給額はことなります。

看護師の退職金の平均支給額

内閣府は国家公務員の退職金について報告しています。令和2年度に退職した人に支給された退職金のうち、自己都合で退職した人に向けた支給額を勤続年数別に見ていきます。
国会公務員の退職金は民間よりもやや高くなっていますが、私立病院や民間病院でも同様の傾向となっていますので参考にしてください。

【参考】国家公務員の自己都合による勤続年数別退職金
勤続年数 平均支給額
5年未満 232,000円
5年~9年 864,000円
10年~14年 5,012,000円
15年~19年 2,756,000円
20年~24年 9,013,000円
25年~29年 13,486,000円
30年~34年 16,751,000円
35年~39年 19,742,000円
40年以上 21,067,000円

勤続年数が10年未満では、経験年数×10万円が退職金の目安で支給額は100万円に届きません。
勤続10年を超えると、経験年数×20万円が退職金の目安となり、300万円に近い支給額となります。
勤続15年では経験年数×25万円、勤続20年では経験年数×40万円と、経験年数が上がるごとに支給額は増えていきます。
さらに勤続40年以上の定年間際まで勤めると、退職金は2,000万円を超えます。

看護師の退職金に税金はかかる?

退職金にも税金はかかります。具体的に徴収されるのは、所得税・復興特別所得税・住民税です。しかし、退職金は勤続に対する報酬であるため、給与所得と比べて税金負担は軽くなります。受け取り方によって異なる税金について簡単に解説します。

一括で受け取った場合

退職金は以下の所得控除を受けることができます。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数
20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

勤続年数に1年未満の端数があるときは、たとえ1日でも1年として計算してください。
実際にもらった退職金から、退職所得控除額を引いた金額が、課税所得金額になります。表のように課税所得金額によって、税率と控除額が決まっています。

A 課税退職所得金額 B 税率 C 控除額
1,000円から1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円から3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円以上 45% 4,796,000円

所得税額を求める計算式は「税額=A×BーC」です。退職金の支給額が多いほど、税率も高くなります。その分、控除額も大きくなることを覚えておきましょう。
国税庁が公表している退職金の所得税および復興特別所得税の源泉徴収税額の計算方法も紹介します。ぜひご参考ください。

年金として受け取った場合

看護師の多くが定年よりも早くに退職します。そのため、ほとんどの人が年金ではなく、一括で退職金を受け取っています。年金払いで受け取る人は少ないのですが、参考までに退職金を年金として受け取った場合の税金についても紹介します。

年金として受け取る場合にも所得税の控除があります。「公的年金等控除」として、60歳~64歳までは70万円、65歳以上は120万円が年金から差し引かれます。残った年金額をもとに所得税や住民税を計算します。

勤務年数が長いほど退職金は多く支給される

退職金は多くの場合、勤続年数が長いほど増えていきます。そのため、職場を転々とするよりも同じ職場で長く働いた方が、多くの退職金を受け取ることができます。
退職金制度がない医療機関や、一定の勤続年数や労働時間に満たない場合は支給されない医療機関もあります。いざ退職するとき、退職金が支給されない、もしくは予想より少ないという事態が起きないよう、事前によく調べておきましょう。

引用・参考

1) 就労条件総合調査/平成30年_就労条件総合調査 退職給付(一時金・年金)の支給実態 e-Stat 政府統計の窓口

2) 4 退職給付(一時金・年金)の支給実態 厚生労働省

3) 企業年金制度 企業年金連合組合

4) 退職手当の支給状況 内閣府

5) 退職金と税 国税庁

小田あかり
この記事を書いた人
小田あかり
大学看護学部卒業後、小児・内分泌・循環器科で勤務。看護師として働きながら、知識と経験を活かし、医療ライター・監修者として活動中。

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