精神科看護師とは?業務の役割・給料・キャリアプランまで

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精神疾患を有する患者数は年々増加しています。中でも外来の通院患者数は増加が著しく、精神科看護師は病院だけにとどまらず地域や在宅へも活躍の場を広げています。今回は精神科看護師の働き方や特徴を詳しく解説します。

精神科看護とは?業務の役割を解説

精神科看護師とは精神科で働く看護師の呼称です。どのような役割を果たすのか、日本精神科看護協会では以下のように定義しています。

精神科看護とは、
精神的健康について援助を必要としている人々に対し、
個人の尊厳と権利擁護を基本理念として、専門的知識と技術を用い、
自律性の回復を通して、その人らしい生活ができるよう支援することである。

【引用】精神科看護の定義 日精看オンライン

精神科看護では薬剤やさまざまな治療方法を組み合わせ、患者の心や精神が回復する過程をサポートします。患者と信頼関係を構築しコミュニケーションを深め、回復過程に寄り添うのも精神科の看護です。

精神科看護の役割は一人ひとりの内面と向き合うこと

精神科ではうつ病や統合失調症などの精神の病気や知的障害・発達障害、認知症や薬物依存症・PTSD・摂食障害・てんかんまで幅広い対象の心・精神の治療を行います。

精神科看護は医師の診察の補助やバイタルサイン測定、服薬管理、保清や食事・更衣・排泄などのセルフケア介助がおもな業務です。さらに、心や精神の病気を抱える一人ひとりの内面と向き合い、些細な変化を見逃さず回復へサポートするのも精神看護の大きな役割です。

給与・年収

精神科看護師の給与は働く場所によって差があります。令和2年度の厚生労働省の調査によると、全国の看護師の平均月収は33万8,400円、平均年収は491万8,300円です(※夜勤手当など各種手当含む)。入院病床のある病院で夜勤も行いつつ勤務すれば、平均月収・年収程度の収入が見込めるでしょう。

看護師の平均年収491万8300円(平均年齢41.2歳) 月収34万円/ボーナス86万円

近年ではクリニックで働く精神科看護師も増えていますが、夜勤がないため平均より給与・年収は低くなる可能性があります。一方で精神科訪問看護はクリニックより時給が高い傾向があり、平均給与・年収が高くなる可能性もあります。さらにオンコール対応をすると手当がつくため、病院勤務より収入は多くなるかもしれません。

多様化する精神科看護の役割

2000年代に入り精神科医療は大きく変化し精神科看護の役割も多様化しています。精神科看護の対象者の動向や特徴を紹介します。

変わりつつある精神科

2004年に「入院医療中心から地域生活中心へ」と理念が示され、2017年に「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築も理念に加わりました。2022年からは精神疾患を持つ患者の訪問看護に「精神科在宅患者支援管理料」が算定できるようになり、地域全体で患者を支える体制が整いつつあります。

精神科医療の現状

精神科の対象疾患は多岐にわたるうえ患者の対象は全年齢と、多様な精神疾患に対応できる医療体制の構築が課題でした。そうしたなか、2018年より地域包括ケアシステムの対象が精神障害者にも拡充されました。さらに地域の医療機関で対象疾患を分担し連携する「連携拠点機能」の構築や、24時間体制で患者を受け入れる精神科救急医療体制が導入され、亜急性期〜維持期まで地域で患者の療養を支える体制が整えられています。

患者数の推移

近年、こころの病気を抱える患者数が年々増えています。特に気分障害といわれるうつ病や双極性障害の患者数は20年で約3倍になりました。

【引用】うつ病やその他のこころの病気(精神疾患) 平成30年版 厚生労働白書(P80)

外来患者の動向

現在約392.4万人いるとされる精神疾患を持つ患者の9割は外来通院患者で、年々、増加の一途を辿っています。

【引用】平成30年版 厚生労働白書(P7)

精神科入院の動向

精神科の入院患者数は過去15年間で約4万人減少し、病床数は約2万床減少しました。外来の増加にも表れているように、精神科は在宅医療に舞台の中心を移しつつあります。

精神科の入院に関する大きな特徴は再入院率の高さです。6か月で約30%、1年で37%ほどの患者が再入院しています。

【引用】精神科デイ・ケア等の利用者数の年次推移(各年6月)新たな地域精神保健医療体制のあり方分科会における論点整理(7月15日)の報告(P18)

診療所(クリニック)の増加

精神疾患患者の療養場所は在宅へ移行しています。この20年間で小児科や産科・産婦人科は減少傾向ですが、精神科のクリニック数は2倍に増加しました。とくに東京や神奈川・大阪・京都・福岡などの大都市圏での人口10万人に対するクリニックの数は、茨城や静岡・熊本の1.5~2倍にのぼります。地域間の医療格差の拡大が顕著になっています。

【参考】診療所 精神科 人口10万人対施設数(2017年) 診療所の診療科特性について(その1) -診療所数、医師数、診療行為- 日医総研リサーチ・レポート No.113(P12 図2.3.3)

精神科に特化したデイケアや訪問看護ステーションの増加

精神科の治療の場が入院中心から地域生活中心へとシフトしていく中で、デイケアや職場復帰支援・作業所の開設が進み、利用者は約10年で1.7倍に増加しています。また自宅療養のサポートを行う、精神科訪問看護の利用者は約10年で5倍に増加しました。

【参考】精神科デイケア等の利用者数の年次推移(各年6月)新たな地域精神保健医療体制のあり方分科会における論点整理(7月15日)の報告(P31)

精神科看護師の看護の特徴

精神科で一番重要な看護は患者の心・精神の安定への支援です。一人ひとりの病状に応じた薬物療法や精神療法・精神科リハビリテーションが受けられるように、看護師は患者と信頼関係を構築しサポートを行います。

手術や抗がん剤治療など、一般的な診療科で行う治療・看護はありません。しかし採血や点滴は行いますし、日常生活ケアや自傷・他害による外傷のケアも精神科には欠かせない看護です。

糖尿病や高血圧、心臓病や腎臓病などさまざまな疾患を併発している患者も多く、精神科単科ではなく、精神科と内科・外科の複合科の入院病床やクリニックも増えています。精神科の患者の中には体調の変化を適切に表現できないケースも少なくありません。心身の不調に伴う予兆や変化に気付ける幅広い知識とアセスメント力が求められています。

急性期・慢性期・維持期の看護

精神科は病期により、以下の特徴があります。一人ひとりの病状に合わせたかかわりと信頼関係の構築が、精神科看護では全ての病期において重要になっています。

精神科の病期ごとの特徴

亜急性期 慢性期 維持(療養)期
治療の場 入院病床(病状に応じて閉鎖病棟に入院) 入院病床/在宅 在宅
治療の目的 急性症状からの早期離脱と回復 心身の機能回復、自立と適応の支援、生活の質の維持・向上 症状増悪を防ぎながら、生活の質を維持する
社会生活・社会参加ができる
患者の状態 急性症状で混乱している 症状の回復期、患者によっては悪化する可能性がある 精神的には比較的安定している
病気を抱えながら社会で生きる
治療介入 薬物療法・精神療法・精神科リハビリテーション 薬物療法・精神療法・精神科リハビリテーション・集団精神療法・認知行動療法 薬物療法・精神療法・精神科リハビリテーション・集団精神療法・作業療法・就労支援
看護介入 心理ケア・日常生活支援 心理ケア・日常生活支援 訪問看護による心理ケア・日常生活支援

精神科看護師は「きつい」「怖い」「つらい」は本当?

場合によっては「きつい」「怖い」「つらい」と言われることもある精神科看護師。働く上でのメリットとデメリットを紹介します。

精神科看護師になるメリット3選

精神科看護師として働く場合のメリットを3つ紹介。どんなことに「やりがい」があるのかを解説します。

メリット①患者の心身に寄り添った看護が提供できる

病気により人間関係を拒否する患者も少なくありません。信頼関係を構築する過程で相手の辛さや感情を汲み取り、一人ひとりに寄り添った看護ができるようになります。また、活躍の場は院内に限らず在宅やグループホームまでさまざまな場面に広がっています。

メリット②男性看護師が活躍できる

急性期の患者が混乱状態に陥った際、男性看護師が相手をすることで患者は心理的に委縮し落ち着きやすい傾向にあると言われており、精神科の入院病棟では男性看護師が多く活躍しています。また、急性期の患者の暴力に対応するため体力や筋力のある男性看護師が多く配置されるケースや男性特有の悩みを抱える思春期の患者などへの対応のために男性看護師が配置されるケースもあります。精神科では男性看護師がより一層活躍できるでしょう。

メリット③残業が少ない傾向にある

精神科での治療の第一歩は規則正しい生活です。精神科病棟では、入浴や服薬・食事・レクリエーションなど1日のスケジュールが決まっていることが多く、残業の発生回数は少ない傾向にあります。クリニックも予約制を取っているところが多く、比較的残業が少ないことはメリットとして挙げられます。

精神科看護師になるデメリット3選

精神科看護師として働く場合のデメリットを3つ紹介。「きつい」「怖い」「つらい」と言われる理由を解説します。

デメリット①身体ケアや医療行為が少ない

身体ケアや医療行為が少なく、スキルが身につかないといわれている精神科。しかし、頻度は少ないものの、病棟・クリニックともに採血や点滴などは行います。とくに昨今では精神科単科ではなく内科や外科との複合科の精神科も増えているため、身につく技術が極端に少ないとも言えなくなっているのが現状です。

デメリット②心理的な負担がある

患者のネガティブな感情や体験を聞き続けると、看護師の心理的負担が増すケースがあります。患者と適切な心理的距離を取った関わりが重要です。

デメリット③暴言・暴力を受ける可能性がある

精神科看護師が「きつい」「怖い」「つらい」と言われる理由として、急性期病棟では精神状態が悪化し、暴言・暴力に至る患者が少なからずいることにあります。自分一人で対処しないこと、病状の悪化が原因であることを理解しチームで関わることが重要です。回復期病棟やクリニックなどでは比較的起こりにくいため、暴言・暴力を受けにくい職場の選択も重要です。

精神科看護師のやりがいは?

精神科看護のやりがいは、入院・外来問わず、看護師の関わりが患者の精神状態や治療効果に直結する点です。そうした中で多くの看護師が挙げる精神科看護のやりがいは、回復する患者の姿を近くで見られることです。回復した患者の笑顔や感謝の言葉に癒されることもあります。病気とともに人生を歩む患者を、一番近くでサポートできるのも精神科看護師ならではのやりがいです。さらに仕事を通して自分の特性や心と向き合うきっかけが生まれ、看護師としても人間としてもさらなる成長が見込めることも精神科看護師やりがいともいえるでしょう。

精神看護師は「きつい」「怖い」「つらい」の理由は?

精神看護師に「きつい」「怖い」「つらい」といった印象が生じてしまう一番の原因は、亜急性期の患者からの暴言・暴力や患者とのコミュニケーションの難しさです。何気ない患者の言葉に傷つくこともあるでしょう。患者に寄り添うあまり自分自身の心が不安定になってしまう人もいます。最近では、スタッフの心の負担を軽減する卒後教育に力を入れる病院も増えました。精神科以外の一般病棟でも認知症などこころの病を併発している患者が増加しています。精神科だけが特筆して「きつい」「怖い」「つらい」と言われるイメージは徐々に減少していくかもしれません。

精神科看護師にという職種に向き不向きはある?

精神科看護師にも向き不向きがあるようで、ここでは「向いている人」の特徴を3つ紹介します。

精神科看護師に向いている人の特徴

コミュニケーション能力が高い

言語的・非言語コミュニケーション能力が高いということは、患者一人ひとりの病状や心理面の変化、精神状態の背景を察して適切な対応ができるということです。患者は自分を理解してくれる、寄り添ってくれる医療者を敏感に察知するため、言語的・非言語コミュニケーション能力の高い看護師に安心感を覚える傾向にあります。言語的・非言語コミュニケーション能力が高い看護師は患者との信頼関係を構築しやすいでしょう。

洞察力に優れている

自分の状態を的確に表現できない患者もいます。些細な違和感を見逃さず、病態の変化の予兆をキャッチできる洞察力に優れている人が精神科看護師に向いています。

相手を尊重できる

妄想や幻聴・問題行動を軽視せず、相手の置かれている状況を理解しましょう。訴えを尊重し真摯に向き合うことが精神科の看護では大切です。

この特徴はあくまで参考例です。当てはまらないからといって、精神科看護師として働けないという訳ではありません。当てはまらなかった人であっても実際に働いていく中で必要なスキルは身についていくでしょう。

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精神科看護師に関連する資格

精神科看護師にはどのようなキャリアパターンがあるのでしょうか?関連する4つの資格を紹介します。それぞれの役割や資格取得方法は以下の表を参照ください。

精神科認定看護師 資格

特徴 日本看護協会の資格で精神看護の領域ですぐれた知識・技術をもつ看護師。看護実践・相談・協働・知識の集積を担う
役割 ・すぐれた看護実践能力を用いて、質の高い精神科看護を実践する
・精神科看護に関する相談に応じる
・精神科看護に関する指導を行う
・精神科看護に関する知識の発展に貢献する
必要な資格・実務経験年数 ・日本国の看護師の免許を有すること
・看護師の資格取得後、通算5年以上の看護実務に従事し、そのうち通算3年以上は精神科看護実務に従事していること
・臨床で実務を行っていること
・臨床で実務を行っていない場合は、精神科看護を実践する場を1か月 に 28 時間以上(週7時間程度)もち、それを証明すること
・上記を満たしたうえで精神科認定看護師教育課程を規定時間受講すること
資格取得方法 精神科認定看護師認定審査に合格する
資格取得後の働き方 ・優れた看護実践能力を活かし、質の高い精神看護を実践する
・患者だけでなくスタッフの教育も担う

【引用】一般社団法人日本精神科看護協会 精神科認定看護師制度設置規則

精神看護専門看護師 資格

特徴 精神疾患患者に対して水準の高い看護を提供する。また、一般病院でも心のケアを行う「リエゾン精神看護」の役割を提供する
役割 複雑で解決が難しい健康問題を抱えた人々に対して、精神看護の知識や技術を用いながら水準の高い看護ケアを効率よく提供する
必要な資格・実務経験年数 ・日本国の看護師の免許を有すること
・看護師の資格取得後、通算5年以上の看護実務に従事し、そのうち通算3年以上は精神科看護実務に従事していること
・看護系大学大学院修士課程(専門看護師コース)を修了すること

資格取得方法 専門看護師認定審査に合格する
資格取得後の働き方 ・総合病院や精神科でリンクナースやリエゾンナースとして精神疾患の患者だけでなく、せん妄や不穏患者の対応にあたる
・職員向け勉強会やスタッフのメンタルヘルスマネジメントなど院内の横断的活動を行う

【引用】精神看護 一般社団法人日本専門看護師協議会

臨床心理士 資格

特徴 臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて、人間の“こころ”の問題にアプローチする“心の専門家”
役割 ①種々の心理テスト等を用いての心理査定技法や面接査定に精通している
②一定の水準で臨床心理学的にかかわる面接援助技法を適用して、その的確な対応・処置能力を持っている
③地域の心の健康活動にかかわる人的援助システムのコーディネーティングやコンサルテーションにかかわる能力を保持している
④自らの援助技法や査定技法を含めた多様な心理臨床実践に関する研究・調査とその発表等についての資質の涵養が要請される
必要な資格・実務経験年数 ・指定大学院(1種・2種)を修了し、所定の条件を充足している者
・臨床心理士養成に関する専門職大学院を修了した者
・諸外国で指定大学院と同等以上の教育歴があり、修了後の日本国内における心理臨床経験2年以上を有する者
・医師免許取得者で、取得後心理臨床経験2年以上を有する者
資格取得方法 認定心理士資格審査に合格する
(マークシート・論述・口頭面接試験がある)
資格取得後の働き方 医療機関・学校・企業・児童相談所などさまざまな場所で、対象者の心理サポートを行う

【引用】公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会

公認心理師 資格

特徴 心理学に関する専門的知識および技術をもって、心の健康に関する助言・指導・教育・情報の提供を行う
役割 ①心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果分析)
②心理に関する支援を要する者に対する、その心理に関する相談及び助言、指導その他の援助
③心理に関する支援を要する者の関係者に対する相談及び助言、指導その他の援助
④心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供
必要な資格・実務経験年数 ①大学において主務大臣指定の心理学等に関する科目を修め、かつ、大学院において主務大臣指定の心理学等の科目を修めてその課程を修了した者等
②大学で主務大臣指定の心理学等に関する科目を修め、卒業後一定期間の実務経験を積んだ者等
③主務大臣が①及び②に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認めた者
資格取得方法 公認心理師試験に合格する
資格取得後の働き方 医療機関・学校・企業・児童相談所などさまざまな場所で対象者の心理サポートを行う

【引用】公認心理師 厚生労働省

活躍の場が広がる精神科看護師

近年の患者数の増加を受けさまざまなシーンでニーズが高まる精神看護師。一般的な診療科と比較し、身体的ケアに関するスキルは身につきにくいかもしれません。一方で精神科看護の最大の特徴である「患者とじっくり向き合い心を支える」経験は、どの科の看護師にとっても重要な、看護に深みをもたらすスキルです。精神科看護師の経験はさまざまな場面で活かせる武器になるでしょう。

参考資料:

令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況 厚生労働省

最近の精神保健医療福祉施策の動向について 厚生労働省

小田あかり
この記事を書いた人
小田あかり
大学看護学部卒業後、小児・内分泌・循環器科で勤務。看護師として働きながら、知識と経験を活かし、医療ライター・監修者として活動中。

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