美容看護師の働き方解説。仕事内容から年収・給料事情まで

全て表示

eyecatch

美容医療市場は近年拡大し「美容看護師」「美容ナース」のニーズが高まっています。美容看護師は看護学校で実習がなく、馴染みのない看護師も少なくありません。今回は美容看護師が担う役割と働き方を解説します。具体的な仕事内容や年収事情も紹介するので参考にしてください。

美容看護師とは?

美容看護師とは文字通り「美容」に関連した職場で働く看護師を指します。美容外科・美容皮膚科・形成外科・美容整形・美容クリニックなど活躍の場は年々、増加しています。「美容」という言葉から、美容看護師に華やかなイメージを持つ人は多いでしょう。実際の美容看護師はどのような業務内容で働いているのでしょうか。

「美容看護師」は転職市場で人気が高い職業?

美容外科・美容皮膚科・形成外科など美容に関連した職場で働く美容看護師は、専門知識と高いスキルを武器に患者の悩みを解決できる治療や施術を医師ともに提供します。美容系クリニックはクリニック全体の3.5%と少なくレア求人の傾向が続いていますが、新規開業のクリニックも増えており就職・転職は可能です。夜勤のない勤務が中心ですが、インセンティブや報奨金・指名手当で平均よりも高い給与を得ている美容看護師も多く、転職市場でも人気の職場です。SNSなどでも話題になることもあり、さまざまなクリニックで働く美容看護師がインフルエンサーとなり美容知識を投稿するケースもあります。

看護学実習に含まれない理由は?

看護実習には美容看護の科目はありません。その理由は、看護学実習は病気の人に対する看護・ケアの学習が目的であり、「美容」に関する施術・看護が病気に該当しないためです。

美容看護師が働く美容外科・美容皮膚科の違い

美容看護師が活躍する診療科は美容外科と美容皮膚科です。似た名称の形成外科とは以下の違いがあります。

美容外科 美容皮膚科 形成外科
診療科の特徴 ・形成外科の一種で美容整形を行う
・顔や体などを手術で理想の形に整える
・メスを使わず皮膚を綺麗にするための治療 ・けがや病気・美容目的で体の表面の変形や異常を手術によって機能的・美容的に修復する
※形成外科の中に美容外科も含まれる
施術内容 ・脂肪吸引や豊胸手術、二重整形、鼻整形、小顔整形などの手術
・ヒアルロン酸やボトックスのプチ整形
・レーザー治療やフォトフェイシャル、ケミカルピーリング、ヒアルロン酸やボトックス、医療脱毛などの施術 ・けがや傷、褥瘡、ケロイドなどの修復、ほくろやいぼの切除
・乳癌後の乳房再建・リンパ浮腫の改善
・生まれつきの多指症や口唇・口蓋裂
※美容外科と同様の施術を行う
業務内容 ・カウンセリング
・手術介助
・術前・術後ケア
・カウンセリング
・美容メニューの施術
・エステ・マッサージなどの施術
・カウンセリング
・手術介助
・術前・術後ケア

美容看護師の仕事内容と年収事情

美容看護師の仕事内容は、主にカウンセリングや施術、施術後の管理・アフターケア、手術の介助です。電話での受付や予約・施術のスケジュール管理を行うケースもあります。

一般的な診療科と大きく異なるのは「体調の悪い患者が少ない」という点です。美容や審美を目的とした治療・施術は健康保険診療の対象外で、興味・関心のある患者が自由意思で来院するのも特徴です。

勤務スタイル

一般的な美容クリニックは日勤メインです。勤務時間はクリニックの開業時間によって異なります。患者が仕事帰りに受診できるように夕方~夜間帯の診療を行っている場合もあり、シフト制を取り入れています。土日祝日などの休日や長期休暇は患者のニーズが高いため、交替制で出勤するケースが一般的です。

給料・年収

令和2年度の厚生労働省の調査によると、全国の看護師の平均年収は491万8,300円、平均月収は33万8,400円です(※夜勤手当など各種手当含む)。一般的なクリニックでは夜勤がないため、病棟勤務の看護師より給与は低くなる傾向が見受けられますが、美容系のクリニックでは事情が異なり、病棟勤務の看護師より高給与が望めると言われています。

その理由は、美容外科や美容皮膚科が自由診療だから。自由診療の医療機関では、医療行為に対して自由に金額を定められるため、医療機関の収入が看護師の給料にも直接的に反映されやすいのです。インセンティブや報奨金、指名手当など看護師の営業努力によって支給される手当などもあることから、美容看護師は努力次第で高収入を目指しやすいといえるでしょう。

なお『ナース人材バンク』に掲載中の求人情報によると、都心部では月収30~40万円、最大では50万円以上の美容クリニックもあるようです。

パートやアルバイトの時給

美容クリニックの求人では、最初から正社員として雇用するのではなく、一定のパート雇用期間を設けているところも少なくありません。『ナース人材バンク』に掲載中の求人情報を見ると、パートやアルバイトの時給も一般的な病院より500~1,000円ほど高く設定されているようです。

【参考】ナース人材バンク

必要な資格

美容看護師になるには「看護師」あるいは「准看護師」の資格が必須です。とくに美容外科では手術室の経験があると即戦力として働きやすいといわれています。ほかにも日本化粧品検定やスキンケアアドバイザーの資格を持っていると美容に関する総合的な知識を患者に提供できます。

昨今では医療インバウンドで海外から来日される患者も増えており、中国語や英語が話せるとアドバンテージになるでしょう。

美容看護師の一日のスケジュール

美容クリニックで働く看護師のスケジュールを紹介します。

日勤 遅番
9:00 出勤
患者の情報収集・施術準備
10:00 クリニックオープン
予約患者順に施術・カウンセリングを行う
12:00 出勤
患者の情報収集・施術準備
休憩
13:00 予約患者順に施術・カウンセリングを行う
予約患者順に施術・カウンセリングを行う
14:00
休憩
16:00 記録・片づけをして退勤
予約患者順に施術・カウンセリングを行う
18:00
クリニック診療終了
記録・片づけをして退勤
21:00

美容看護師が「レア求人」といわれる理由

美容看護師がレア求人といわれる理由とは、クリニックの少なさ・働きやすさが関係しています。以下に詳しく見ていきましょう。

形成外科・美容外科のクリニック数が少ない

形成外科・美容外科を標榜する診療所(クリニック)は全体の3.5%しかありません。また、クリニックは病院よりも規模が小さいため求人数の母数が少ないのです。

辞める人が少ない傾向にある

美容看護師を辞める人が少ない理由は以下になります。

働きやすい条件が整っている

一般的な美容系クリニックは予約制で急変がないため、残業が発生しにくいです。夜勤もなく規則正しいリズムで働きたい人や、プライベートを大切にしたい人には働きやすい環境です。

高い給料レンジ

美容系クリニックは医療保険でなく自費診療です。自費診療は利益率が高く、収益が上げられるため基本給やボーナスが高い傾向があります。「インセンティブ」というカウンセリング件数や契約数・施術件数で給与を増額するシステムを取っているクリニックもあり、高給与を得やすい環境が整っています。

美容に興味・関心のある看護師に人気が高い

美容看護師は美容業界の動向を的確に把握し、知識や経験をカウンセリングや施術に活かして働きます。自院の施術やコスメの効果やメリット・デメリットを理解している必要があり、スタッフ同士で施術の練習をしたり、自分でコスメを使ったりすることもスキルアップの一環になるため、美容に対して興味・関心のある看護師にとっては最適な職場であり、欠員が出にくいこともレア求人である理由のひとつと言えるでしょう。

福利厚生として施術料やコスメ代の補助をしているクリニックも多く、美容にかけるお金が節約できる可能性があるのも人気の理由です。

美容看護師に向いている人の特徴は?

美容看護師に向いている人の3つのポイントを紹介します。

ポイント1:人と接することが好き

美容系のクリニックに通う患者の大半は自身の美容に関して何らかの悩みを抱え、解消したいと考えています。そうした患者の悩みを親身になって傾聴し、寄り添うことはもちろん、施術の説明や施術に対する満足度の向上も美容看護師の重要の役割のひとつです。高いカウンセリングスキルと患者との積極的なコミュニケーションが求められる現場です。人と接することが好き、コミュニケーションを取るのが好きな人に向いている仕事だと言えるでしょう。

ポイント2:美容に興味・関心がある

自分自身が美容に関する悩みがあると、悩みを抱える患者の気持ちを理解できます。また、カウンセリングや施術の際に患者に共感し寄り添えるでしょう。美容に対する興味・関心があれば、美容業界の動向にアンテナを張り情報を入手することも楽しめるため、スキルアップしやすくなります。最新の技術やコスメなどを患者に説明するために、自分で試すこともあるでしょう。美容への興味・関心は、美容看護師にとってプラスに働くことが多いでしょう。

ポイント3:ビジネス感覚がある

美容系のクリニックでは「患者=お客様」という意識で接することが多く、美容看護師には接客業としての側面があります。同時に、患者に対して自院の施術やコスメを販売し、売り上げに貢献することがインセンティブにつながるため、クリニックのためにも、自身の給与アップのためにも営業努力は欠かせません。ビジネス感覚を持ち合わせていることは美容看護師にとって大きなアドバンテージになるでしょう。

上記に当てはまらないからといって美容看護師になれない訳ではありません。大切なのは「美容看護師として働きたい」という気持ちです。本記事はあくまで参考に、興味・関心がある方は美容看護師をキャリアの選択肢のひとつとして考えてみてください。

美容看護師に転職して役立つスキルや学べるスキルは?

美容看護師と病棟看護師は働き方や業務内容は異なりますが、看護師としての技術や知識、経験は共通するものが多くあります。以下に紹介していきます。

病棟経験が活かせる

バイタルサイン測定や採血・注射・点滴などの基本的な手技、輸液ポンプやモニター類の取り扱い、急変対応、処置介助などは病棟経験を活かしやすい項目です。

常に最新の美容知識が身につく

日々進歩する最新の美容医療を提供するため、自然と最新の美容知識が身につきます。

手術看護や術後生活指導などの経験が積める

美容外科で働くと手術介助や術前・術後の看護に携わります。局所麻酔から気管挿管を必要とする全身麻酔まで多様な症例を経験できます。

接遇やカウンセリングスキルが身につく

美容看護師は患者の悩みに寄り添うカウンセラーの役割も担います。患者がクリニックを選ぶ美容業界では、スタッフの接遇やマナーでリピート率も変わります。患者を満足させ「施術してよかった」「また来たい」と思えるような、一般の病院では経験できない接遇やカウンセリングスキルが身につきます。

新卒者は美容看護師に就職することはできる?

新卒でも美容看護師になれないことはありませんが、採用枠は非常に狭き門です。一般的なクリニックではスタッフの人数が少なく、即戦力となる既卒看護師の採用が優先される傾向にあり、新卒の採用は少ないようです。

一部の大手クリニックでは新卒採用を行い、十分な研修期間や教育制度を設けるなどスキルの高い美容看護師の育成に力を入れている場合もあるので、まずは採用情報を確認しましょう。

美容看護師から病棟看護師に戻ることは可能か

美容看護師の多くは病棟を経験してから美容系のクリニックに転職していますが、美容看護師になったあとのキャリアに不安を抱く人は少なくないようです。実際に美容クリニックの就業期間を「ブランク」と捉える医療機関もあり、「キャリアが途切れる」と考える看護師もいるでしょう。しかし、実際のところ一度、美容看護師になったからといって病棟看護師に戻れないということはありません。

その理由は、先述のとおり美容看護師の業務に含まれる手術介助や術前・術後看護、接遇やカウンセリングスキルが病棟看護にも活かせるからです。なかでも外科系病棟や形成外科・皮膚科などの病棟は、美容看護師のスキルを活かしやすいため転職先の有力候補です。

自身の経験やスキルと合致した診療科を選べば、美容看護師から病棟看護師に転職する際、アピールしやすくなります。長い看護師人生のなか、キャリアプランの一環に美容看護師を組み込むことは決して不可能ではないのです。

美容看護師のメリット・デメリット

最後に美容看護師のメリット・デメリットを紹介します。

メリット

多くのクリニックは日勤メインで残業が少ないため、ワークライフバランスを大切にできます。また、インセンティブや指名手当で高給与を目指すことが可能です。美容の知識やスキルも高められ、それらを自身に還元することもできます。以上が美容看護師として働く主なメリットです。

デメリット

患者との成約数や、コスメやサプリメントの販売ノルマを課すクリニックもあるようです。インセンティブで給与がアップするとはいえ、営業活動が苦手な人には好ましくない条件です。また、採血や点滴・緊急入院などスキルを積む機会は少なくなります。一般的な看護技術を磨きたい人、認定看護師や専門看護師のようなエキスパートを目指す人にとっては、美容看護師の経験期間はブランクに等しく、デメリットになるかもしれません。

高給与で美容に携わることができる人気の働き方

美容看護師になるためには、美容に興味・関心があり、患者が美しくなるのをサポートしたい、悩みを解決したいという気持ちが大切です。施設数やスタッフ数が少ないため美容看護師の求人自体はレアですが、新規開業の美容クリニックは増加傾向にあり、就転職のチャンスはあります。接遇やカウンセリングスキル・美容知識など美容看護師だから身につくことが多く、魅力的な働き方といえるでしょう。自身が描くキャリアプランと相談しながら、キャリアの選択肢のひとつとして考えてみるのも悪くないかもしれません。

【参考資料】

令和2年度賃金構造基本統計調査

令和2年医療施設調査 厚生労働省

整形外科と美容外科 日本整形外科学会

形成外科で扱う疾患 日本形成外科学会

小田あかり
この記事を書いた人
小田あかり
大学看護学部卒業後、小児・内分泌・循環器科で勤務。看護師として働きながら、知識と経験を活かし、医療ライター・監修者として活動中。

ナース転職求人を知りたい方

こちらの記事もおすすめ