看護師の退職マニュアル。伝え方から退職理由の例文まで

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仕事を辞めるときいつどのタイミングで伝えるべきか迷っていませんか?円満退職をするためにも計画的に準備することが大切です。今回は円満退職できる退職理由や時期、退職までのスケジュールをまとめました。

看護師が職場を円満退職するには伝え方が重要

退職は自らの可能性を広げる次のステップのひとつです。退職にいたる理由は人それぞれですが、中には退職を決意したものの「引き止められたらどうしよう」「迷惑をかけてしまったらどうしよう」と悩む人もいるでしょう。慢性的な人手不足の職場は多く、退職で与える影響に悩み、退職を尻込みする人も少なくないかもしれません。次のキャリアに支障を出さないためにも、退職時の対応を誤らず、周囲に迷惑をかけずに最後まで責任を持って準備を進めて伝えることを心がけましょう。

看護師の離職の実態

医療現場で働く皆さんのなかには、毎年のように多くの同僚が退職し、新しく入職する場面を見ている人もいると思います。実際に看護師の退職・転職は多いのでしょうか?2021年の日本看護協会病院看護実態調査では、正規雇用看護職員の離職率を以下のように報告しています。

正規雇用看護職員離職率 10.6%
新卒採用者離職率 8.2%
既卒採用者離職率 14.9%

参考までに主要産業における2020年の離職率は14.2%で、看護師は他の職種より離職者が少ない傾向にあります。

また都道府県別の離職率は正規雇用者・新卒・既卒で異なっています。離職率が高い都道府県は以下の通りで、地域によって離職率に差があることがわかります。

離職率の高い都道府県ランキング

1位 2位 3位
正規雇用看護職員離職率 神奈川県(14.0%) 東京都(13.4%) 埼玉県(13.0%)
新卒採用者離職率 栃木県(15.0%) 香川県(14.5%) 兵庫県(10.7%)
既卒採用者離職率 石川県(28.9%) 岩手県(24.6%) 岡山県(23.4%)

【参考】2021年病院看護・外来看護実態調査

看護師を辞めたい?不満の声から読み解く退職理由アンケート

ナース専科では2022年8月に看護師のやりがいやモチベーションについてアンケートを実施しました。今回は300名の現役看護師の回答の中から「退職」に関連する結果を紹介します。看護師は退職についてどのように考えているのか、退職につながるきっかけや理由をみていきましょう。

多くの看護師が「辞めたい」と考えたことがある

アンケートでは7割以上の看護師が辞めたいと考えていることがわかりました。さらに、現在働く職場から転職・離職したいと思っているのかを聞いたところ、以下の回答が得られました。

現役看護師の約2割が早急に転職・離職したいと考えている


「辞めたい」と考えている看護師のうち「すごく転職したい」看護師は2割、「まあまあ転職したい」と考えている看護師と合わせると、実に4割が退職したいと考えています。

不満の声から読み解く看護師の退職理由

退職を決意するまでには、一人ひとりにきっかけや理由があります。まず、現在の職場にどのような不満を抱えているのかを聞きました。

給与や働き方など人間関係などさまざまな不満がありますが、半数以上が人出不足を挙げています。また、忙しさや給与・待遇が上位を占めていることも明らかになりました。皆さんもこのような不満に心当たりがあるかもしれません。

さらにアンケートでは、看護師の仕事をしていて「辛い」と感じることや「辞めたい」と考えるときについてを具体的に聞いたところ、以下のような回答がありました。

職場の不満の具体例

忙しさ

  • 人が足りなくてバタバタする
  • 忙しすぎて患者へのかかわりが薄くなる
  • 自分が対応すべきことにすべて対応ができない
  • スタッフ不足で時間内に業務が終わらない

給与・待遇

  • 残業しても請求できない
  • コメディカルの中でも立ち位置が低い

人間関係

  • コロナで人間関係が悪化した
  • スタッフ間のコミュニケーションが取りづらい
  • 上司の心無い対応
  • 暴力・暴言

そのほかにもインシデントや患者からの暴言・暴力など辛い、辞めたいと感じる場面はたくさんあるようです。

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看護師が円満退職するために必要な準備

看護師が円満退職するためには準備が必要です。「もう辞めたい」「辞めよう」という気持ちが、即座に行動と結びつくことは珍しくありません。しかし、退職に伴う欠員で周りに迷惑をかけず、自身の次のキャリアに支障をきたさないためには円満に退職したいところです。円満退職に向けてどのような準備をするべきか、退職までにやるべきことを3つの時期に分けて解説します。

退職を決意したらおこなうこと

退職を決意したら行うことが2つあります。そのステップを経てから退職を実行に移すようにしましょう。

再度辞める理由と目的を考える

なぜ辞めるのか、辞めてどうしたい・どうなりたいのかをもう一度考えましょう。今の職場から逃げ出したいだけであれば、退職せず部署異動で問題が解決するかもしれないからです。

キャリアアップやステップアップなど進学を目的とした退職であれば、その後のキャリアプランや働き方も考えて退職を決めましょう。進学先によっては休職制度を活用して、キャリアアップできる場合もあります。

行動に移す前に、今一度よく考えることが大切です。

退職に必要な手続きや期間を確認する

退職を決意したからといってすぐに辞められるわけではありません。就業規則を確認し、退職意向を伝える定められた期日より前に退職を申し出るか退職願いを提出してください。就業規則がなければ退職の3か月くらい前が目安になります。ただし民法627条では退職届提出後2週間で退職できると定められています。退職まで長い時間をかけたくないなど事情がある場合は、すぐに退職届を用意しましょう。

また「二度と職場には行きたくない」といった場合は退職代行サービスを使用する方法もあります。ただし、これはあくまで最後の手段です。勤務や引継ぎで迷惑をかけないように、計画的に退職を申し出るようにしましょう。

退職決意から退職1週間前までにやるべきこと

退職を決意してから退職1週間前までにやるべきことはたくさんあります。流れを理解しておけば、スムーズに退職しやすくなるでしょう。

STEP1 退職プランを立てる

退職を決意したら退職プランを立てます。退職をするためにはどのくらい前から申し出る必要があるかは、就業規則を確認してください。おおよその目安は3か月から半年前です。同時に転職先探しも始めておくと、退職後の経済的不安も軽減できるでしょう。

STEP2 上司に退職の意向を伝える

師長など直属の上司に退職の意向を伝えます。あらかじめアポイントを取り、別室で落ち着いた環境で話すようにしましょう。口頭だけで伝えると「言った」「言わない」となるので、メールや書面などでも伝え証拠を残しましょう。

医療機関によっては、看護部長や人事課と退職について話し合う必要があるケースもあるため、日程には余裕を持って意向を伝えてください。おおよその目安は1~3か月前です。

また退職を引き止められてしまう場合も少なくありません。退職日を引き伸ばされ、次の就職や進学に影響が出ないように注意しましょう。

STEP3 退職の日程を決める

退職日と最終勤務日を決めます。有給休暇等を取得する場合は、いつ頃から何日使用するのかを上司と相談します。退職日によって社会保険の保険料、ボーナス、退職金の金額が変わります。不安な場合は、人事課と相談しながら退職日を決めましょう。

STEP4 次の仕事を決める

転職先をまだ探している人は、早めに次の仕事を決定しましょう。退職日の翌日から次の仕事が始められると、健康保険等の手続きが煩雑になりません。

また、次の就職先が決まっていると退職を引き止められにくいですし、収入が途切れる心配もないので退職にまつわる不安が軽減できます。

STEP5 退職願い・退職届を準備し提出する

退職日から1か月程度を目安に、退職に関連した書類を上司や人事・事務長に提出します。必要な書類の形式や種類は医療機関ごとに異なります。就業規則を確認し指定された方法で期日までに提出してください。

STEP6 仕事の引継ぎ

看護師の仕事でも引継ぎが必要なケースがあります。部署の係や委員会・検討会など、自身が関わっていた業務を後任に引き継ぎましょう。自身が作成にかかわったマニュアルや手順書・勉強会資料は個人のパソコンにしか保存されていないケースもあるため、データも忘れずに引き継いでください。

退職1週間前~退職前日ころまでにやるべきこと

退職日も目前。有給休暇消化中の人もいる時期です。退職日に慌てない、退職後に迷惑をかけないためにこの時期にやるべきことを漏らさないようにしましょう。具体的には以下があります。

  • 引継ぎ事項の最終確認
  • 退職に関連した必要書類の準備
  • 荷物・ロッカーの片付け
  • 関係各所への挨拶
  • 必要があれば挨拶用の品を準備

「立つ鳥跡を濁さず」ということわざのように、当日に慌てないために事前にできることは済ませましょう。

退職当日にやるべきこと

退職当日には私物を整理し貸与品を返却します。退職手続きを完了させたら退職・離職に関連した書類を受け取ります。

職場に返却するもの:

  • 職員証
  • IDカード
  • ロッカーキー
  • 制服
  • 健康保険被保険者証

職場から受け取るもの:

  • 雇用保険被保険者証
  • 離職票
  • 源泉徴収票
  • 年金手帳

(これらは後日郵送されるため、職場の指示に従ってください)

トラブルにならない「退職理由」。今すぐに使える例文と事例

トラブルにならない円満退職を目指すなら退職理由も重要です。退職しにくいからと言って嘘をつく必要はありませんし、一度嘘をついてしまうと退職時だけでなく転職後も嘘をつき続けなければなりません。退職理由の中には、反対されにくい理由があります。代表的な例を紹介します。

円満に退職できる理由

  • 次にやりたいことがある(キャリアアップ)
  • 病気など身体的な理由
  • 家庭の事情

避けるべき理由

  • 職場の人間関係のトラブル
  • 職場の愚痴や不満

体調や家庭の事情といった、個人の裁量ではどうしようもない理由は反対されにくい傾向があります。愚痴や不平不満などと捉えられかねない退職理由は、反対される可能性があるため避けるようにしましょう。

また、直接伝えることは避けるべき理由であっても、上手に言い換えれば円満退職に繋がる可能性があります。以下に退職理由の例文を紹介しますので、参考にしてください。

退職理由の例文と事例

ネガティブな理由や不満が多い職場でも、退職日まではできるだけ気持ちよく働きたいものです。ここからは、円満退職に繋がりやすい退職理由の例文を紹介します。

例文・事例 ①次にやりたいことがある・キャリアアップを検討している

キャリアアップやスキルアップのための前向きな転職であり、現在の職場ではそれが叶わないことを伝えましょう。

「慢性期での経験を活かし、地域の訪問看護ステーションでスキルアップをしたいと考え退職を決意しました」
「看護についてもっと学びを深めたいため、大学院への進学を決意しました。○○大学大学院に入学が決まったため退職します」

例文・事例②病気など身体的な理由

身体的な理由で退職するケースで主治医の指示がある場合には、その旨も伝えましょう。必要があれば診断書を提出します。

「夜勤などの不規則な生活や、移乗などの体力的に負担のかかる業務が多く、主治医と相談の結果退職を決意しました」

例文・事例③家庭の事情

家庭の事情は人それぞれですが、相手が気を使わない範囲でポイントを押さえて伝えるようにしましょう。

「家族の介護が必要となり夜勤がなく自宅に近い職場で働くため退職します」

例文・事例④職場の人間関係が起因して

人間関係が退職理由に繋がる場合は、ネガティブな面が伝わりやすい傾向にあります。できるだけポジティブに言い換えて退職理由を伝えましょう。

「さまざまなスタッフと実り多い経験をさせていただきました。まだまだ未経験の分野も多く、看護師としての幅を広げたく急性期看護を学びたいため退職します」

例文・事例⑤職場環境への不満

忙しく残業が多い、ゆとりのない職場を退職する場合には以下の例文がおすすめです。

「この職場では先輩や同僚に沢山の指導をいただき、多くの経験を積むことができました。改めて振り返ったときにもっと一人ひとりの患者と向き合い、丁寧な看護を極めたいと思い退職を決意しました」

円満に退職するにはタイミングが重要。適切な時期は?

円満退職するために重要なポイントのひとつは「タイミング」です。いつも忙しい看護師の職場ですが、退職に向き、不向きな時期があります。以下に退職しやすい時期と退職に割けた方が良い時期を、理由とともに紹介します。

退職しやすい時期

退職しやすい時期は年度末や新人が独り立ちし夜勤に入り始める7月頃がおすすめです。その他にも、人事異動の時期や担当していた業務に区切りがつく時期も退職しやすい時期と言えるでしょう。

退職を避けたほうがよい時期

退職を避けたほうがよい時期は、新人のオリエンテーション期間中にあたる4・5月や、職員が夏休みを取り始める8月頃です。ゴールデンウィークや年末年始も休暇希望が多く勤務シフトが組みにくいため、避けるのが無難です。プリセプターシップや係活動、看護研究など任された業務がある場合も、ある程度目途が経ってからでないとチームメンバーの負担が増えるため退職は難しいでしょう。

医療機関や部署によって繁忙期がある場合は避けるようにしてください。円満退職を目指すなら退職時期には十分に気をつけましょう。

円滑に退職するために適切に準備を進めよう

慢性的な人手不足の看護職。辞めにくい雰囲気や引き止められて、スムーズに退職できない人も少なくありません。円満退職を目指すなら退職時期を見極め、トラブルを避けられる退職理由を考えておく必要があります。職場に迷惑をかけないように、最後まで自分の仕事に責任を持って退職しましょう。
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【参考】

1) 2021年の日本看護協会病院看護実態調査

小田あかり
この記事を書いた人
小田あかり
大学看護学部卒業後、小児・内分泌・循環器科で勤務。看護師として働きながら、知識と経験を活かし、医療ライター・監修者として活動中。

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