看護師の勤務形態とは?二交代・三交代・夜勤専従のメリットを解説

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看護師の働き方は多種多様であり、勤務形態だけをとっても二交代制や三交代制、夜勤専従など多岐にわたります。今回は看護師の勤務形態における種類ごとのメリットと、理想的なシフトの組み方について紹介します。

看護師のさまざまな勤務形態の解説

働き方改革の一環で、看護師が働く職場では様々な勤務形態があります。日勤と夜勤のあるシフトでは、二交代と三交代とでわかれていることが多いです。日本医療労働組合連合会による2020年度の夜勤実態調査での「夜勤形態別の職場数」では、三交代を採用している職場は54.5%、二交代は39.0%、混合は6.5%でした。2019年度の調査に比べて二交代制が増減を繰り返しながら、徐々に増加傾向にあります。それぞれの勤務形態の特徴と、それに伴う問題について解説します。

三交代制のメリットとデメリット

日勤と準夜勤、深夜勤があるシフトです。それぞれの基本的な勤務時間は以下になります。

  • 日勤:朝8時半前後~夕方の17時前後まで
  • 準夜勤:夕方17時前後~夜中1時前後まで
  • 深夜勤:夜中1時前後~朝8時半前後まで

30分程度、勤務交代の申し送りのために一緒に働く時間帯があります。夜中に緊急入院や急変対応があっても、勤務交代で次の勤務者に引き継いでリセットできることはメリットのひとつかもしれません。しかしデメリットとして三交代はシフトの組み合わせが二交代に比べて難しいことが問題のひとつとしてあります。例えば、よくみかける「日勤深夜」というシフトは、日勤が終わったあと、一時帰宅し仮眠を取り、夜中の1時前後までに再度出勤するというものです。昼間の患者さんの様子をみているため、申し送りにかかる時間はそれほど多くはありませんが、ゆっくりと休む時間がないまま8時間以上の勤務を続けるのは、身体への負担も大きいものです。

また、準夜勤のあとに休みが入るシフトも多いですが、準夜勤で夜中自宅に帰り就寝するとしても、休みの日とはいえも丸一日自由に使えるわけではなく、昼間の一部は仮眠や体力回復のための時間にとられてしまいます。このことから準夜勤のあとの休みは「休んだ気がしない」という現場の声も多いです。こうした勤務間のインターバルがどの程度空いているのかも重要になってきます。

二交代制のメリットとデメリット

日勤と夜勤のシフトで組まれる二交代制の基本的な勤務時間は以下になります。

  • 日勤:朝8時半前後~夕方の17時前後まで
  • 夜勤:22時から翌朝5時まで

多いシフトは、朝8時半前後~夕方の17時前後までの日勤、夕方17時前後~翌朝8時半前後までの夜勤です。三交代と同じく、勤務交代時には一緒に働く時間帯があります。三交代でいうところの2回分の夜勤を一度にこなせるのは、通勤や申し送りなどを考えると楽だと考える人もいるでしょう。しかし、緊急入院や対応などで忙しいと休憩も取れないこともあります。また、二交代の夜勤は16時間以上の拘束となるため、合間で食事休憩と仮眠休憩を取ることになります。
準夜勤と深夜勤で看護師が4人必要なところを、二交代では2~3人で夜勤が組めるというメリットはありつつも、休憩がないと16時間以上の勤務となるため、労働面でも健康面でも大きな問題となっています。

早番、遅番のメリットとデメリット

日勤と夜勤以外に早番遅番というシフトもあります。これは患者さんや利用者さんの食事の時間帯などに合わせての勤務です。食事の時間帯は食事介助だけでなく、移動介助や配薬、洗面介助なども必要な場面で忙しくなる時間帯です。特に介護度・重症度の高い職場では夜勤帯の少ない人数だけでは人手が足りなくなるため、早番遅番というシフトをつけて調整しています。主に部屋持ちはなく、ナースコールや処置、入退院準備など、フリーで対応することが多いです。毎日受け持ち患者がいる勤務のなか、ときにフリーで動ける勤務があると、気分転換になるというメリットもあります。

長日勤(ロング日勤)のメリットとデメリット

二交代の16時間以上拘束の負担を減らすために長日勤(ロング日勤)を設定して夜勤を13時間以内におさえる取り組みもあります。長日勤は8時半前後~夜の20時前後まで勤務し、夜勤は20時前後に出勤して翌日の8時半前後までの勤務です。長日勤のメリットは勤務回数を増やさずに済む効果を狙っていますが、昼食と夕食前後の業務が忙しい時間帯、検査や手術、処置などが多い日勤で長時間勤務となるのは、デメリットもあり拘束時間が長く業務量の増加に伴い負担も大きくなるため、導入は慎重に、徹底した業務整理が必要です。

夜勤専従のメリットとデメリット

職場で夜勤ができる人が少ない場合などに、夜勤専従をつけることがあります。子育て世代が多い職場などでみられるシフトです。日勤には入らず、夜勤のみでシフトを組みます。日本看護協会では、夜勤専従者の過重負担を防ぐために、夜勤の総時間数・回数を少なくする、夜勤専従勤務の期間を短くすることを推奨しています。また、夜勤時間数の上限を月144時間としていますが、これは通常の夜勤・勤務交代を行う看護師の平均夜勤時間数72時間以内の倍を上限とする考え方です。二交代で一回約16時間の夜勤で計算すると、月に約9回の夜勤となり、三交代で一回約8時間の準夜勤、深夜勤で計算すると、月に約18回の夜勤ということになります。

メリットとしては朝早く起きるのが苦手という人や、夜勤手当が欲しいと考えるスタッフからは、「夜勤専従の方がやりやすい」という声もあります。重要なのは、強制的に選択させられるのではなく、本人の意思でこの勤務形態を選ぶことができる状況かどうかということです。

看護師のシフト勤務の課題を解消する「勤務編成の基準」と「正循環と逆循環のシフト」

勤務編成の基準

夜勤を含むシフト勤務では、様々な課題があることがわかりましたが、ここで日本看護協会が提案している「勤務編成の基準」11項目を紹介します。

基準1:勤務間隔 勤務と勤務の間隔は11時間以上あける
基準2:勤務の拘束時間 勤務の拘束時間は13時間以内とする
基準3:夜勤回数 夜勤回数は、3交代制勤務は月8回以内を基本とし、それ以外の交代勤務は労働時間などに応じた回数とする

基準4:夜勤の連続回数

夜勤の連続回数は、2連続(2回)までとする
基準5:連続勤務日数 連続勤務日数は5日以内とする
基準6:休憩時間 休憩時間は、夜勤の途中で1時間以上、日勤時は労働時間の長さと労働負荷に応じた時間数を確保する
基準7:夜勤時の仮眠 夜勤の途中で連続した仮眠時間を設定する
基準8:夜勤後の休息
(休日を含む)
夜勤後の休息について、2回連続夜勤後にはおおむね48時間以上を確保する
1回の夜勤後についてもおおむね24時間以上を確保することが望ましい
基準9:週末の連続休日 少なくとも1ヶ月に1回は土曜・日曜ともに前後の夜勤のない休日をつくる
基準10:交代の方向 交代の方向は正循環の交代周期とする
基準11:早出の始業時刻 夜勤・交代制勤務者の早出の始業時刻は7時より前を避ける

引用:看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン(日本看護協会)

これらの項目は一度に満たさなければならないわけではありませんが、地域性や各施設の特性、スタッフのニーズなどを考慮して実現可能な範囲で進めるようにとされています。

正循環と逆循環のシフトとは

日本看護協会では、三交代での「正循環」と「逆循環」のシフト編成例を取り上げ、勤務開始がより遅い時刻となるシフトを組む「正循環」を推奨しています。理由として、人間の生体リズムはおおむね25時間周期であり、1日(24時間)ごとに 自然に1時間ずつ後ろ(時計回り)にずれていくという特性があげられています。そのため、よくあるシフトの「日勤→深夜勤→準夜勤」という逆循環より、「日勤→準夜勤→非番(法的には休日として扱えない)→深夜勤」といった正循環の方が、身体を新しいリズムに調整しやすくなります。しかし、準夜勤明けの日中は非番で、その日の夜に深夜勤に行くというシフトは慣れるまで少し時間がかかりそうです。

3交代制での逆循環(図上段)と正循環(図下段)のシフト編成例

夜勤前後の休息、睡眠の見直しも重要

夜勤前後の休息、睡眠について、就寝前のパターンを作っておくといいでしょう。例えば、就寝30分前には部屋を暗くする、軽くストレッチをするなど、その行動をすることで睡眠のスイッチが入りやすくなります。寝付きにくい場合には、心地よい音楽を流す、ぬるめのお風呂につかるなどでもリラックスできます。横になって目を閉じるだけでも違います。アルコールには入眠効果もありますが、眠りが浅くなりやすく疲れが取れにくいため、睡眠薬代わりにアルコールを飲んだりするのは控えましょう。
また、休みの日などに寝だめをすることも、かえって睡眠が浅くなる原因となります。勤務開始前の仮眠は2時間程度におさえ、サーカディアンリズム(約24時間周期のリズムをもつ生理現象。一般的には体内時計と呼ばれる)で体温があがり眠りにくくなっている午後6時前後の仮眠は避けたほうがよいでしょう。

自分に合った看護師としての勤務形態の選択を

看護師として病院や施設で働くうえで、夜勤を含めた変則的なシフトとの付き合いは切り離せません。心身ともに負担が増える前に、勤務間のインターバルでの過ごし方の改善といった自分にできることから始め、職場の勤務形態が辛い場合は、どのようなシフトが自分に合うのかを見極め、自分らしく働ける場所を見つけましょう。

引用・参考

1)日本医療労働組合連合会:2020年度 夜勤実態調査~報告集~,医療労働:640(12):7,202
2)看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン(日本看護協会)

白石弓夏
この記事を書いた人
白石弓夏
1986年千葉県生まれ。2008年に看護専門学校卒業、看護師免許取得。10年以上病院やクリニック、施設等で勤務。2017年よりライターとして活動。現在は非常勤として整形外科病棟でも勤務中。2020年11月には9人の看護師にインタビューした著書『 Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~(メディカ出版)』を発売。

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