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看護師の平均年収は?男女や地域・年齢からキャリア別の給料事情
公開日:2022/2/24
最終更新日:2023/11/8
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看護師の年収は地域や性別、働く施設の規模といった条件によって変化します。今回は看護師の平均年収とその内訳にキャリアパスによる給与の変化から医療・福祉業界から他業種の年収までをそれぞれ比較しながら解説します。
目次
看護師の平均年収を解説。条件別に比較する給料事情
世間では看護師は高給与だといわれることがありますが、実際のところはどうなのでしょうか。現場では、あまりそのような実感は湧かないかもしれません。病院や施設などで働いていると、資格手当や夜勤手当がついているので、年収としては高く感じそうです。しかし、看護師の業務量やその責任の重さから、給与が少ないと感じ、他の職種に比べても本当に高いのか、それとも低いのか、いまの自分の給与が相場と比べてどうなのかもよくわからないことがあるかもしれません。実際に看護師の平均年収と、医療・福祉業界、その他さまざまな業界の年収を比較してみましょう。
看護師の平均的な年収の推移
過去10年にわたる、全国の看護師全体の平均年収の推移です。
年 | 年収 |
---|---|
2020年 | 492万円 |
2019年 | 483万円 |
2018年 | 480万円 |
2017年 | 478万円 |
2016年 | 481万円 |
2015年 | 478万円 |
2014年 | 473万円 |
2013年 | 472万円 |
2012年 | 471万円 |
2011年 | 475万円 |
これらは基本給以外にも夜勤手当や残業代、通勤手当、年間賞与などを含んだ総額で手取り額ではありません。こうしてみると、徐々に年収はあがりつつ、この10年では約17万円近くあがっています。大学卒の看護師が増えていることが関係しているかもしれません。なかでも2019年~2020年では10万円近く上がっていることがわかります。新型コロナウイルスによる感染拡大の影響で病院経営が赤字となり、賞与カットなどがあったにもかかわらず、増えているこの状況。コロナ禍の影響で業務のしわ寄せや、コロナ病棟やワクチン接種などの求人では人材確保のために高時給・高給与の待遇であったため、それらが影響しているかもしれません。
看護師の平均年収は約492万円で中央値の年収は479万円
令和2年賃金構造基本統計調査によると、看護師の平均年収は4,918,300円(平均年齢41.2歳、勤続年数8.9年)です。しかしデータの分布の中央にあたる中央値としては、少し年収額は下がり4,797,700円(平均年齢42.6歳、勤続年数8.8年)となっています。
大卒と高卒+3年課程新卒の給料の差は?内訳を解説
2020年の賃金構造基本統計調査では、看護師の平均年収は約492万円であることがわかりました。その内訳は、2020年病院看護実態調査によると、以下の通りです。
2020年度の新卒看護師の初任給、平均基本給与額
平均基本給与額 | 平均税込給与総額 | |
---|---|---|
高卒+3年課程新卒 | 202,289円 | 262,277円 |
大卒 | 208,918円 | 270,292円 |
勤続10年・非管理職 | 244,587円 | 318,916円 |
※税込給与総額には通勤手当や住宅手当、家族手当、夜勤手当を含みます。時間外手当や新型コロナウイルスに係る危険手当等は除きます。
基本給は職場によっても大きく変わってくるところです。看護師は最終学歴により、平均して6,000円程度、基本給に差があります。勤続10年の非管理職で基本給は35,000円程度あがっているため、1年で3,500円程度、昇給する計算となります。
平日に行う夜勤に支払われる1回あたりの平均手当額
手当 | 平均手当額 |
---|---|
準夜勤手当(三交代) | 4,154円 |
深夜勤手当(三交代) | 5,122円 |
夜勤手当(二交代) | 11,286円 |
参考: 2020年 病院看護実態調査 (5)夜勤手当 p.19(日本看護協会)
例として、三交代で月に4回ずつ準夜勤と深夜勤をした場合(計8回)は37,104円、二交代で月に4回夜勤をした場合は45,144円の夜勤手当となります。年間にすると約45~54万円の夜勤手当という計算です。看護師の年収の内訳としては、この夜勤手当の割合は大きいものです。
残業代(時間外手当)
例)超勤1時間2,500円計算で、およそ月1~1.2万円の残業代
業務前の準備や片付けなどは前残業、後残業として、研修なども業務とみなされるようになり、時間外手当を付ける必要があります。しかし、知らずにサービス残業している場合や、職場によっては残業代をきちんとつけられるところばかりではないため、どこまで正確に申請されているかは疑問が残るところです。実際の残業時間については、ブラックボックス化されやすい部分です。
賞与(ボーナス)
年俸制ではないところでは、基本的に夏と冬に賞与が出ます。年間平均賞与からみて、夏と冬それぞれで約40~45万円(基本給の2か月分前後)が支給されるイメージです。国公立病院など職場の母体によっては、賞与は夏と冬だけではなく、3月頃には業績に応じて支給される決算賞与(または臨時賞与、年度末手当、特別賞与などともいう)もあります。毎年同じ額がもらえるとは限りませんが、年収にも大きく影響してきそうです。
キャリア選択で変わる看護師の平均年収
日本看護協会が紹介する賃金体系モデル例(複線型人事制度と等級制度による賃金体系モデル)では、専門職群(ジェネラリスト)と管理・監督職群(マネジメント)、高度専門看護師群(スペシャリスト)と分けたうえで等級制度を組み合わせ、個々の看護師が担っている役割や専門性による貢献に応じて賃金を決定する仕組みです。
しかし、等級や人事制度の方針は施設によってさまざまで、看護師の賃金が頭打ちになるといわれるのは、実際には国家公務員の看護職員に適用される医療職俸給表(三)の影響により、師長以上にならないと昇格しない仕組みが影響していることもひとつの理由です。特に看護部の人数規模に対してもポスト数が少なく、主任や師長になったことで管理職手当がついても、夜勤の回数が減る、残業代がつかないことにより、給与が大して変わらないという声もあります。
看護師が年収1000万円を目指すには
2012年『病院勤務の看護職の賃金に関する調査』によると、看護部長相当職(専任)のうち平均基本給月額は42万7,573円でした。次いで副看護部長相当職は40万5,373円で、看護師長相当職は37万949円、副看護師長相当職は35万882円、主任相当職は32万7,143円でした。また、管理職ではなく、認定・専門看護師などの専門性を生かした業務役割を持つ専門職は32万5,692円でした。副院長相当職の基本給月額の平均は、専任の副院長相当職が65万5,071円、看護部長兼任の副院長相当職が平均52万6,212円となっています。
イメージとして、看護部長相当職の平均基本給を40万円とし、月の手当を5万円、賞与を4か月分とした場合、単純計算で年収は720万円となります。また、副院長相当職を例として、平均基本給を65万とし、月の手当を5万円、賞与を4か月分とした場合、単純計算で年収は1,120万円となります。こうしてみると、看護部長クラスでも年収1,000万円越えは簡単ではないことがわかります。
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地域別の看護師の平均年収ランキング
順位 | 都道府県 | 平均年収 |
---|---|---|
1位 | 青森県 | 540,5万円 |
2位 | 岐阜県 | 530,4万円 |
3位 | 神奈川県 | 521,8万円 |
4位 | 東京都 | 519,1万円 |
5位 | 埼玉県 | 516,0万円 |
6位 | 秋田県 | 515,4万円 |
7位 | 富山県 | 515,3万円 |
8位 | 静岡県 | 513,9万円 |
9位 | 石川県 | 513,3万円 |
10位 | 愛知県 | 510,4万円 |
11位 | 京都府 | 506,8万円 |
12位 | 福井県 | 504,6万円 |
13位 | 茨城県 | 504,5万円 |
14位 | 徳島県 | 504,3万円 |
15位 | 奈良県 | 504,2万円 |
16位 | 山梨県 | 501,9万円 |
17位 | 兵庫県 | 501,2万円 |
18位 | 大阪府 | 498,4万円 |
19位 | 鳥取県 | 496,7万円 |
20位 | 栃木県 | 496,6万円 |
21位 | 千葉県 | 496,5万円 |
22位 | 和歌山県 | 495,6万円 |
23位 | 宮城県 | 495,5万円 |
24位 | 滋賀県 | 495,3万円 |
25位 | 広島県 | 493,6万円 |
26位 | 山口県 | 492,0万円 |
27位 | 新潟県 | 490,1万円 |
28位 | 北海道 | 485,5万円 |
29位 | 長崎県 | 482,3万円 |
30位 | 島根県 | 476,4万円 |
31位 | 長野県 | 476,2万円 |
32位 | 三重県 | 473,8万円 |
33位 | 香川県 | 468,1万円 |
34位 | 岩手県 | 466,6万円 |
35位 | 福岡県 | 463,3万円 |
36位 | 山形県 | 460,0万円 |
37位 | 岡山県 | 458,7万円 |
38位 | 福島県 | 457,1万円 |
39位 | 宮崎県 | 454,9万円 |
40位 | 沖縄県 | 453,8万円 |
41位 | 佐賀県 | 451,1万円 |
42位 | 群馬県 | 445,6万円 |
43位 | 愛媛県 | 444,3万円 |
44位 | 鹿児島県 | 444,0万円 |
45位 | 高知県 | 440,7万円 |
46位 | 熊本県 | 424,4万円 |
47位 | 大分県 | 405,0万円 |
都道府県別の年収ランキングは毎年変わりますが、上位にあがるのは首都圏や大阪、愛知などの都市部が多く、四国や九州地方は低い傾向があることがわかります。1位の青森と47位の大分では、135万円程度も差があり、月では11,000円程度の差になります。
看護師の全国で統計をした平均給与に関してはこちらも参照ください。
看護師の平均給与(ナース人材バンク調べ)
20代の年収は?年代別・男女別の看護師の平均年収
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20~24歳 | 349万円 | 352万円 |
25~29歳 | 418万円 | 404万円 |
30~34歳 | 451万円 | 421万円 |
35~39歳 | 466万円 | 442万円 |
40~44歳 | 492万円 | 469万円 |
50~54歳 | 566万円 | 517万円 |
55~59歳 | 545万円 | 533万円 |
60~64歳 | 521万円 | 462万円 |
65~69歳 | 390万円 | 404万円 |
70歳~ | 457万円 | 374万円 |
全体では男性看護師の平均年収は約506万円、女性看護師は約490万円となっています。男性看護師のほうが16万円ほど高いことがわかりますが、女性は出産や子育てなどで働き方を変える人が少なくないことや、男性は夜勤を多くしたり、家族手当などがついたりすることが影響しているのではないかと考えられます。20代は約350万円ほど。そこから年収のピークを迎えるのは男性は50~54歳で年収が566万円。女性は55~59歳が533万円となっています。
施設規模別の看護師の平均年収
職員10~99人 | 職員100~999人 | 職員1000人~ |
456万円(平均年齢46.6歳) | 479,7万円(平均年齢42.6歳) | 521,5万円(平均年齢37.3歳) |
総合病院や大学病院などの施設規模が大きいほど、年収が高い傾向にあることがわかっています。看護師は規模が大きい施設から転職をして、規模が小さいところへ移る傾向があるためか、施設規模が小さくなるほど、平均年齢は高くなる傾向があるのではないかと考えられます。
条件別の看護師の平均年収
経験年数別の平均年収
経験年数 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
0年 | 307万円 | 310万円 |
1~4年 | 400万円 | 397万円 |
5~9年 | 456万円 | 426万円 |
10~14年 | 490万円 | 450万円 |
15年~ | 540万円 | 508万円 |
経験年数4年頃までは年収における男女差はほとんどありませんが、経験年数5年目以降になると、年収に差が出てきます。これは結婚や出産、子育てなどにより、日勤のみの勤務になったり、非常勤に切り替わったりと働き方が変わることなどが考えられます。
看護師と他職種の平均年収を比較
看護師と近い職種と年収比較
職種 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
看護師 | 506万円 | 490万円 |
准看護師 | 429万円 | 411万円 |
看護補助者 | 329万円 | 309万円 |
保健師 | 476万円 | |
助産師 | 570万円 |
保健師は看護師の資格とダブル受験で取得可能ですが、企業や自治体などで働くこととなると夜勤がないため、その分年収は看護師より低めとなっています。反対に助産師は看護師の資格と1年以上の助産師教育課程を修了する必要があるため、ベースの給与は高めであることがわかります。
看護師と他業界の平均年収を比較
全職種の平均年収 | 全職種(女性) | 看護師 |
---|---|---|
487,3万円 | 381,9万円 | 492万円 |
国家資格が必要な職業で比較
職種 | 平均年収 |
---|---|
航空機操縦士 | 1,725万円 |
大学教授 | 1,440万円 |
公認会計士・税理士 | 958万円 |
小・中学校教員 | 714万円 |
高等学校教員 | 681万円 |
航空機客室乗務員 | 526万円 |
保育士 | 375万円 |
販売店員 | 347万円 |
理容師・美容師 | 330万円 |
他業界の職種と比べると、看護師の年収は平均より少し高めであることがわかります。これまでのデータでは平均より少し低めではありましたが、2020年はやや上回る結果となりました。女性の職種のなかではこれまでのデータをみても100万円以上高いことがわかります。また、国家資格が必要な職業のなかでは、決して看護師は高給与ではないこともわかります。さらに業界別に平均年収をみていきましょう。
業界別 女性
業界 | 平均年収 |
---|---|
情報通信業 | 315,5万円 |
教育、学習支援業 | 306,9万円 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 301,4万円 |
金融業、保険業 | 281,4万円 |
医療、福祉 | 263,0万円 |
建設業 | 251,2万円 |
卸売業、小売業 | 236,0万円 |
サービス業(他に分類されないもの) | 228,5万円 |
生活関連サービス業、娯楽業 | 225,1万円 |
運輸業、郵便業 | 223,3万円 |
製造業 | 222,7万円 |
宿泊業、飲食サービス業 | 208,9万円 |
業界別 男性
業界 | 平均年収 |
---|---|
金融業、保険業 | 479,2万円 |
教育、学習支援業 | 429,4万円 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 420,9万円 |
情報通信業 | 405,0万円 |
医療、福祉 | 354,5万円 |
卸売業、小売業 | 346,1万円 |
建設業 | 345,5万円 |
製造業 | 321,8万円 |
生活関連サービス業、娯楽業 | 300,7万円 |
運輸業、郵便業 | 285,3万円 |
サービス業(他に分類されないもの) | 283,5万円 |
宿泊業、飲食サービス業 | 278,2万円 |
参考資料: 厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」
男女別にみても、医療・福祉業界としての賃金水準は特別高いことはなく、真ん中あたりであることがわかります。
看護師の平均年収を医療・福祉業界で比較
医療従事者と比較
職種 | 平均年収 |
---|---|
医師 | 1,440万円 |
歯科医師 | 788万円 |
薬剤師 | 565万円 |
診療放射線技師 | 549万円 |
臨床検査技師 | 493万円 |
看護師 | 492万円 |
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 | 419万円 |
介護支援専門員(ケアマネジャー) | 399万円 |
栄養士 | 374万円 |
介護職員 | 360万円 |
歯科衛生士 | 356万円 |
参考資料: 厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」
医療・福祉業界の職種のなかでは、医師が飛びぬけて年収が高いことに対し、歯科医師、薬剤師、診療放射線技師に次いで、看護師は臨床検査技師と同じくらいの年収であることがわかります。医師と歯科医師、薬剤師は大学で6年間の教育を受ける必要があるため、給与が高いのは頷けます。
看護師の年収は地域や環境によって大きく異なるため、よく検討しよう
看護師の年収は地域や働く環境によって大きく異なることがわかりました。全体的にみても看護師の給与は全体平均よりやや高めではありますが、それは夜勤手当や残業手当が含まれてのこと。地域格差や手当に頼り、基本給が少ないという傾向があることは理解しておきましょう。自分のいまの給与や待遇がどの程度であるのかの指標として、転職の際には参考にしてみてください。
【参考】
- 令和2年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)
- 看護職の仕事と給与の特徴(日本看護協会)
- 2020年 病院看護実態調査(日本看護協会)
- (5) 主な産業別にみた賃金(厚生労働省)
- 2 短時間労働者の賃金(厚生労働省)
-
この記事を書いた人白石弓夏
- 1986年千葉県生まれ。2008年に看護専門学校卒業、看護師免許取得。10年以上病院やクリニック、施設等で勤務。2017年よりライターとして活動。現在は非常勤として整形外科病棟でも勤務中。2020年11月には9人の看護師にインタビューした著書『 Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~(メディカ出版)』を発売。