急性期看護の特徴は?看護師の役割ややりがいを解説

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急性期とは、一般的には病気になり始めた時期のことを言います。急性期病院における看護師の役割は、おもに異常の早期発見とスピーディーな緊急対応、患者さん、家族の精神的サポートです。命に関わる場面が多く常に緊張感を伴いますが、急変時のアセスメント力や対応力、モニターや人工呼吸器など医療機器管理の知識が身につきスキルアップを目指せる環境といえます。急性期で働く看護師のやりがいや大変なことを解説します。

急性期看護の特徴

急性期看護の特徴は、病状が不安定であり急変のリスクが高く、検査や処置、手術を必要とする患者さんが多いことです。ICU、HCU、脳神経外科、循環器内科の疾患が多い傾向にあり、脳血管疾患や急性心筋梗塞、骨折、持病の急激な悪化など重症度や緊急性が高い患者さんの治療を行います。

急性期は限定される疾患がないため、看護師には幅広い対応が求められます。病状が安定し急性期の治療を終えた患者さんは、自宅退院もしくは回復期や療養型へ転院するか、介護施設などに入所します。

急性期での入院は一般的に2週間程度です。これは診療報酬の急性期充実体制加算や総合入院体制加算が14日以降加算されないことと関係しています。

参考:厚生労働省「令和4年診療報酬改定の概要 入院Ⅰ」

急性期病院で働く看護師の役割と仕事内容

急性期病院で働く看護師の役割や仕事内容には、どのようなことがあるか見ていきましょう。

急性期病院で働く看護師の役割

急性期病院で働く看護師の役割は、異常の早期発見とスピーディーな対応、患者さん、家族の精神面でのサポートが中心となります。

患者さんは、重症度や急変のリスクが非常に高い状態です。看護師は適切に状態を把握し、変化があれば速やかに医師へ報告したり、処置を行ったりする必要があります。スピーディーな対応をするためにはスタッフ間の連携やコミュニケーションが欠かせません。

患者さん、家族の精神面をサポートすることも重要な役割です。患者さんとその家族は病気や怪我により日常が一変し、さまざまな不安や悲しみを抱えることになります。身体的な処置や対応と同様に、患者さん、家族の気持ちに寄り添い対応していくことが大切です。

急性期病院で働く看護師の仕事内容

急性期では処置や検査、手術などが多く、看護師は細心の注意が必要です。主に次のような仕事内容があります。

  • 全身状態の管理
  • 検査や処置など診療の介助
  • 人工呼吸器の管理
  • 点滴、ドレーン類の管理
  • 術前術後の管理

状態が不安定な患者さんが多い急性期病院の看護師の仕事内容は、診療の補助が中心です。生命に直接関わる内容が多いため、常に緊張感を伴います。しかし、近年は入院患者さんも高齢化しており、認知症を有している場合も少なくありません。急性期の治療と認知症のケアを同時に行わなければならない状況もあります。

参考:厚生労働省 中医協 総-2 H27.11.25

急性期病院で働くやりがい

急性期病院で働くやりがいは「生命の危機から回復する姿を見守ることができる」「幅広い看護知識や技術を身につけられる」ことです。

生命の危機から回復する姿を見守ることができる

これまで解説してきた通り、急性期病院には重症度が高い患者さんが入院しています。重症で医療機器に囲まれていた患者さんが生命の危機を脱し、回復して退院する姿を見届ける時は感慨深いものがあります。チームで行った治療の成果であり、達成感ややりがいを感じることができるでしょう。

幅広い看護知識や技術を身につけられる

急性期病院では幅広い疾患の患者さんに対応します。様々な症例に携わることで知識を深めることができるでしょう。また、重症度の高い患者さんは人工呼吸器などの医療機器や点滴・ドレーン類の管理などが必要なため、技術面での成長も実感できます。得られた知識や技術は即戦力として異動や転職でも役立ちます。

急性期病院で働く上で大変なこと

急性期病院はやりがいも大きいですが、大変なこともあります。今後のキャリアを考える上でどちらも理解しておくことが大切です。

命に直結する場面が多い

急性期病院では命に直結する場面が多いため、緊張感やプレッシャーなど心理的な負担を感じる人もいるようです。また治療を行っても、悲しい結果になることは少なくありません。全ての患者さんが回復に向かうわけではないということを理解しておく必要があります。

時間に追われることが多い

定時で行うバイタルサイン・全身状態のチェックや処置に加え、急変の頻度も高いため、時間に追われることが多くなります。緊急入院や手術もあり、回復期や慢性期と比較すると残業が多い傾向です。

急変対応や医療的な処置を行う時は業務が多重となり、ナースコールが鳴り止まない状況になる時もあります。優先順位を考えながら、ミスなくスピーディーに対応することが求められます。

患者さんと関わる時間が少ない

重症度の高い患者さんが多い急性期病院では、生命を守る医療的処置が優先されます。看護師も常にそれらの業務に追われるため、回復期や慢性期に比べて患者さんとの十分なコミュニケーションの時間を確保することは難しいでしょう。

また、先に述べたように入院期間は14日程度であるため、短期間で関係を構築するという難しさもあります。忙しい時間の中患者さんにどれだけ寄りそえるかは大事なポイントになるでしょう。

急性期病院で働く上で大切なこと

急性期病院で働く上で大切なことを解説します。

気持ちを切り替える

急性期の特徴上、助けられない生命もあることを理解し、気持ちを切り替えることが大切です。自分の担当する患者さんの場合はひどく落ち込んでしまうことがあるでしょう。人によっては自分の責任と感じてしまうこともあるかもしれません。

気持ちを切り替えるため、上司や同僚など周囲の信頼できる人に話を聞いてもらうのもおすすめです。他の人に自分の気持ちを話すと楽になることがあります。患者さんから学んだことは次からの看護に活かすようにしてください。

また、仕事とプライベートのメリハリを意識して休日はリフレッシュしましょう。体を動かすなどして活動的に休日を過ごす方が心身に良い影響を与えます。うまくリフレッシュし、以降の勤務につなげましょう。

先を読み行動する

急性期の患者さんは急変のリスクが高い状態です。そのため先を読み行動する能力が求められます。急変に備え検査や処置、医療機器の物品準備をする、スタッフ間でコミュニケーションをとり、役割分担など連携の仕方を確認しておくことが大切です。

学ぶ意欲を持ち続ける

医療や検査方法など医療のスタンダードは日進月歩です。新しい情報に常にアンテナを立て学ぶ姿勢を忘れず、得た知識を患者さんの看護につなげることを意識しましょう。

急性期病院に向いているのはどんな人?

ここまで急性期病院で働く看護師の役割や仕事内容、やりがいや大変なことをお伝えしてきました。「実際に働いてみたい」と考えている人もいるでしょう。急性期病院には次のような人が向いています。

  • スキルや知識を高めたい人
  • 急変時でもスピーディーに動ける人
  • 向上心のある人

急性期病院では急変の対応をしたり、医療機器を使用したりする機会が多いので、スキルや知識が確実に身につきます。異常を発見してからスピーディーに動ける人や、知識や技術をレベルアップし患者さんに貢献したいという向上心のある人に向いています。

急性期病院への転職は何歳でも可能?

急性期病院への転職は何歳でも可能です。一般的に20~30代の看護師が多く勤務している印象がありますが、年齢制限を設けている病院はほとんどありません。看護師としてのキャリアが豊富であれば、即戦力として採用される場合もあります。

ただし急性期病院への転職は覚悟が必要です。これまで説明してきたように急性期病院は患者さんの回復を見届けられることがやりがいですが、スケジュールが過密で生命に関わる処置が多く、スピード感を求められるため、身体的にも精神的にもきついと感じる人もいます。育児や介護など家庭の事情がある人は、仕事とどう両立するか考えなければなりません。

急性期病院への転職を希望する場合、希望の職場ではどのような制度があるのか、自分の条件に合うかを確認することが非常に大切です。就業中に転職活動をする場合、時間の確保が難しいかもしれません。転職エージェントを利用してみるのも良いでしょう。

知識やスキルを身につけたいなら急性期病院を検討しよう

急性期病院では生命に関わる重症な患者さんが多く、看護師は異常を早期に発見できるアセスメント力や対応力、医療機器管理などのスキルが求められます。そのため回復期や慢性期に比べて、知識やスキルを身につけやすく、成長を実感できる環境と言えるでしょう。

急性期病院で働く上で大切なことは、気持ちを切り替える、先を読み行動する、学ぶ意欲を持ち続けることです。急性期病院での経験は、将来のキャリアアップに役立ちます。キャリアの選択肢を広げるためにも、興味のある人は急性期病院の勤務を検討してみてください。

北村由美
この記事を書いた人
北村由美
仙台市立看護専門学校を経て、東北厚生年金病院(現東北医科薬科大学病院)、一般財団法人三友堂病院 三友堂リハビリテーションセンターなどに勤務。正看護師資格のほか、保有資格はケアマネジャー、登録販売者、AEAJアロマテラピー検定1級など多岐にわたる。現在はフリーライターとして看護系や美容・健康記事などを執筆中。

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