看護師の夜勤専従は高収入だけどきつい?実態とメリット・デメリット

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看護師の夜勤専従は、高収入や日中時間の自由さなどのメリットがあります。その一方で、心身への負担が大きいのではないかと不安な方もいるでしょう。この記事では、夜勤専従の実態から働くうえでのメリット・デメリットまで解説します。

看護師の夜勤専従の実態

看護師の夜勤専従とは、夜勤のシフトだけに従事する働き方です。病棟に勤務している看護師の多くは日勤と夜勤の両方に従事することが一般的ですが、日勤専従者や夜勤専従者のように日勤あるいは夜勤のどちらかだけで勤務する働き方もあります。夜勤専従の看護師がどのように働いているのか、実態を把握しましょう。

夜勤専従看護師の仕事内容

夜勤専従看護師の仕事内容は、交代勤務の夜勤と同じです。職場によって仕事内容は異なりますが、主に次のような業務があります。

  • 病棟の巡回
  • ナースコール対応
  • バイタルチェック
  • トイレ介助やオムツ交換
  • 配薬
  • 点滴の交換
  • 体位変換
  • 看護記録の記載や整理

1回あたりの労働時間

労働時間は職場によって異なります。1回あたりの労働時間の目安としては、2交代制の場合は16時間程度、3交代制の場合は8時間程度です。2時間程度の休憩時間が設けられていることが多く、仮眠などに充てられます。

1ヶ月の勤務スケジュール

1ヶ月の勤務スケジュールは、シフトによって決定されます。 日本看護協会は、夜勤専従者の総勤務時間数の上限を月144時間としています。その基準に従う場合、2交代の場合は月に9回ほど、3交代の場合は月に18回ほどの勤務が入ります。

パートやアルバイトの場合は、週1日から働ける職場もあるため、特定の曜日に月4回ほど出勤するといった働き方も可能です。

2交代の月間シフト例

1回の夜勤を16時間勤務とし、月9日の夜勤があるシフトの例です。

2交代の月間シフト例

3交代の月間シフト例

1回の夜勤を8時間とし、月18日(準夜9回、深夜9回)の夜勤があるシフトの例です。

3交代の月間シフト例

日勤が発生する可能性はある?

夜勤専従で働く看護師は、原則日勤に従事しません。例外的に日勤をすることがあるとすれば、緊急かつやむを得ない事態になった場合です。

例えば、日勤の看護師が急病で欠勤することになった場合などが挙げられます。ただし月1回あるかないかの頻度であり、月数回の日勤が恒常的に発生することはない捉えてよいでしょう。

夜勤専従看護師の需要

夜勤専従看護師には需要があり、求人も多く出ています。病院や施設などは24時間365日休みなく動いており、夜勤に従事する人は不可欠ですが、家庭の都合などで夜勤に従事できない看護師も一定数存在し、不足しやすいためです。以下では夜勤専従看護師の雇用状況について解説します。

夜勤専従看護師の雇用状況

日本看護協会の「2020日本看護協会調査研究報告」によると、夜勤専従看護師を雇用していると回答した病院は46.0%、いないと回答した病院は52.6%でした。半数よりは少ないものの、病院以外の施設でも夜勤専従看護師を雇用していることから、需要は絶えずあることがうかがえます。

正規雇用のほうが非正規雇用よりも多い

夜勤専従には正規雇用だけでなく、パート・アルバイト・派遣といった非正規雇用もあります。ただ日本看護協会の「2020日本看護協会調査研究報告」によると、病院における夜勤専従看護師の平均人数は、1病院あたり正規雇用が3.6人、非正規雇用が1.8人という結果でした。この結果より現状では正規雇用の割合がやや高いことがわかります。

参考: 2020日本看護協会調査研究報告|日本看護師協会

常勤看護師から夜勤専従看護師を選ぶことも

職場によっては、もともと常勤であった看護師の雇用形態を変更して、夜勤専従を担ってもらう場合もあります。

しかしその場合、日本看護師協会の「看護職の夜勤・交代勤務に関するガイドライン」では、看護師を夜勤に従事させるうえで次のような点に留意が必要であるとしています。

①本人の選択(夜勤に伴う心身の負担とその軽減策、処遇などについて十分な説明を受け、納得した上で、職員本人の希望によって勤務が選択されること)、②相応の報酬の支給、③十分な健康管理体制(夜勤専従勤務に就く前の健診の実施、労働安全衛生法の特定業務従事者健診、産業医の意見を聞く、健康状態に問題があれば直ちに夜勤専従勤務を解除する、など)に留意が必要

引用:看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン|日本看護協会

無理にやらされるのではなく、説明を受けて納得できるかどうかが大切です。健康に問題が生じたときに中止を申し出せるなど、負担を考慮したルールづくりがされているかについても確認しましょう。

夜勤専従看護師の給料

夜勤専従看護師の給料体系は、正規雇用か非正規雇用かによって異なります。正規雇用の場合は月給、非正規雇用の場合は日給や時給で計算されるのが一般的です。正規雇用や非正規雇用の夜勤専従看護師は、どのくらい給料がもらえるのか解説します。

正規雇用の夜勤専従看護師の給料

正規雇用の夜勤専従看護師は、月給30万円~40万円くらいの収入を得ることが可能です。ただし勤務先などの条件により一概にいくらとはいえないため、おおよその目安として参考にしてください。

正規雇用で勤務する夜勤専従看護師は、深夜手当がつくほか、夜勤手当がもらえることもあります。そのため、日勤と夜勤の交代勤務や、日勤のみで働くよりも高い収入を得やすくなっています。

深夜手当と夜勤手当

深夜手当と夜勤手当の違いは次のとおりです。

深夜手当:午後10時から翌朝5時にかかる給与額について25%相当が上乗せされる。

夜勤手当:夜勤1回あたり○円という形で支給される。金額は雇用主の任意。

深夜手当は労働基準法第37条4項で次のように規定されており、割増される金額も決まっています。

④使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

引用: 労働基準法第|e-gov法令検索

一方、夜勤手当は雇用主が任意で支給するものであり、1回あたりの手当金額も雇用主が決定できます。

非正規雇用の夜勤専従看護師の給料

パート、アルバイト、派遣など非正規雇用の夜勤専従看護師の給料は、時給で2500円前後、1回あたり3万円程度が目安です。ただし勤務先や労働条件によって一概にいくらとはいえないため、おおよその参考にとどめてください。

非常勤で働く夜勤専従看護師の給料体系は、時給や夜勤1回あたりの固定報酬になっていることがほとんどです。たとえば、2交代の夜勤1回の給料が30,000円の場合、月に10回働けば30万円の収入が得られます。給料は曜日やオペの有無などにより変わってきます。

看護師の夜勤専従のメリット・デメリット

夜勤専従は高収入を得やすいことや、日中の時間が自由に使える点など、魅力的な働き方であると感じる方も少なくないでしょう。一方で、夜勤専従勤務のきつさや、心身への影響など、心配な点もあるはずです。メリットとデメリットの両方を理解したうえで、夜勤専従での働き方を検討しましょう。

夜勤専従のメリット

夜勤専従のメリットには次のようなことが挙げられます。

少ない勤務日数で高収入

夜勤専従の働き方には夜勤手当がつくため、勤務日数が少なくても高収入を得やすいメリットがあります。週1回のアルバイトで夜勤専従看護師として働くなど、ダブルワーク先として検討することも可能です。効率よく収入を得たい方には利点に感じられるでしょう。

生活のリズムが変わりにくい

夜勤専従の働き方では夜勤のみの勤務となるため、生活のリズムを一定にしやすいメリットがあります。日勤と夜勤との交代勤務では、生活リズムを切り替えることにきつさを感じる方も少なくありません。そのため夜勤専従のほうが体への負担感が少ないと感じる方もいます。

日中の時間が自由に使える

夜勤専従の働き方には日中の時間を仕事で拘束されず、自由に使えるメリットがあります。

介護、育児、家事、通学、副業、趣味など、日中にしなければならないことやしたいことがある方もいるでしょう。働く時間を夜にすることで、日中にしたい活動と仕事を両立できるかもしれません。

研究会・勉強会の参加が免除になることがある

夜勤専従の看護師は通常業務以外の仕事は任意となることがほとんどであり、研究会などへ出席しなくてよい場合があります。研究会への出席を億劫に感じている方にとっては魅力的といえるでしょう。

人間関係の悩みが少なくなる場合がある

夜勤に従事する看護師の数は日勤よりも少ないため、人間関係が煩雑になりにくいというメリットがあります。また師長などの管理職は日勤のみの出勤であることが多いこともあり、上下関係で悩みを感じている人や、できるだけ関わる人の数を減らしたい人は向いているでしょう。

夜勤専従のデメリット

夜勤専従のデメリットには次のようなことが挙げられます。

「きつい」と感じる人もいる

夜勤専従では、人によって肉体的なきつさを感じるデメリットがあります。体力的につらいと感じる方や、昼夜逆転の生活がストレスになる方も少なくありません。実際に夜勤が「きつい」「しんどい」と感じる看護師も一定数いるため、夜勤専従の働き方が過度な負担になる可能性も考えられます。

心身へ悪影響が出るリスクもある

夜勤専従は、心身に不調をきたす場合があります。昼夜逆転の生活になるため、自律神経の乱れによる体調不良や睡眠障害、メンタル面の不安定などの症状が出ることもあります。心身の健康を害するリスクがあることは、充分理解しておきたいところです。

高い対応能力と責任が求められる

夜勤では看護師の人員が少なく、医師もすぐに駆けつけられない場合があることから対応力・判断力が必要とされます。経験が浅い方や指示がないと対応できない方では、責任の重さが負担に感じる場合もあるでしょう。

患者さんとのコミュニケーションが難しい

夜勤専従では患者さんが眠っていることが多いため、コミュニケーション面でのデメリットがあります。顔と名前を一致させたり、日中の状態を把握したりするのが難しいと感じることもあるでしょう。患者さんと密なコミュニケーションをとりたいと考えている方からすると、ものたりなさを感じるかもしれません。

看護師の夜勤専従の違法性

夜勤専従で働く場合、シフトによっては1日8時間を超えたり、月の勤務日数が増えたりすることがあります。月間の勤務時間や、夜勤で勤務する日数が多くなると「法律に違反しているのでは?」と気になる方もいるでしょう。夜勤専従の働き方に違法性はないのか解説します。

変形労働時間制であれば1日8時間以上でも可

変形労働時間制を採用している職場は、1日の労働時間が8時間を超えていても違法性があるとはいえません。一定期間を平均したときに1週間あたりの労働時間が法定の労働時間を超えければ、特定の日や週に法定労働時間が超えることがあってもよいとされているためです。

1日や1週間あたりの労働時間については、労働基準法第32条で次のように規定しています。

使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

引用:労働基準法|e-gov法令検索

そのうえで、32条2項では次のように規定されており、1日8時間や1週間40時間といった原則的な労働時間よりも勤務時間が長くなることが認められています。

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、一箇月以内の一定の期間を平均し一週間当たりの労働時間が前条第一項の労働時間を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

引用:労働基準法|e-gov法令検索

月間の勤務時間や回数の上限はない

現状では月間の夜勤勤務時間や、夜勤の回数について定める法律がないため、夜勤の総勤務時間や回数が多くても、違法にはなりません。

しかし、夜勤で勤務する時間数や回数が著しく多い場合は、看護師の健康を損なうおそれもあります。夜勤専従勤務で働く看護師の健康を守るため、日本看護師協会では次のことを提唱しています。

  • 夜勤の総勤務時間数や回数を少なくする
  • 夜勤専従勤務の期間を短くする
  • 月の夜勤時間数は月144時間程度が上限
  • 夜勤と夜勤の間隔をあける
  • 勤務中2時間の仮眠確保
  • 連休の設定

参考:夜勤専従者の「荷重負担」を防ぎましょう|日本看護師協会

法律で上限は決められていないものの、看護師協会の指針に沿った勤務スケジュールになっているか確認したいところです。

詳細は就業規則や労使協定を確認する

勤務先の夜勤専従勤務のルールを知りたい場合は、就業規則や労使協定を確認しましょう。就業規則や労使協定には、労働時間や休憩時間など働くときの条件が記されています。変形労働時間制を導入している場合も、就業規則または労使協定にその旨が書かれています。

就業規則や労働協定には周知義務があるため、次のような方法で共有されていることが多くあります。

  • 職場の閲覧しやすい場所に備え付けられている
  • 書面で配布されている
  • パソコンの共有フォルダ内にアップされている

見あたらない場合は、先輩や師長に尋ねてみましょう。

夜勤から心身を守るための工夫

夜勤に従事している看護師は、様々な工夫をして心身の健康を保っています。健康な状態で夜勤専従に就くためには、看護師自身でも体調管理に気をつける必要があります。とくに、睡眠、運動、食事ついては、多くの看護師が気を配っているようです。実際に看護師が行なっている工夫を紹介します。

睡眠に関する工夫

睡眠に関しては、次のような工夫が挙がりました。

  • 夜勤に入る前はギリギリまで寝る
  • 帰宅したらすぐお風呂入り軽く何か食べて寝る
  • 無理に寝ようとせずにスパなどに行ってリラックス

睡眠時間を充分に確保するよう努めていることがうかがえます。その一方で、夜勤明けになかなか寝つけず「寝なくては」と思うほど寝られなくなる方も少なくないでしょう。無理に寝ようとせず別の方法でリラックスすることも、心と体を休めるのに有効かもしれません。

運動に関する工夫

運動に関しては、次のような工夫が挙がりました。

  • スポーツクラブで汗とともにストレス発散
  • ヨガに通っている
  • ウォーキングや自宅でのストレッチ

運動することで体力がつくだけでなく、汗を流すことによってストレス発散も期待できます。自分のペースで取り組んでいる方もいれば、ジムやヨガなどに通っている方もいるようです。夜勤専従の場合は日中の時間が自由になるため、ヨガ教室などの予定を入れるのもよいでしょう。

食事に関する工夫

食事に関しては、次のような工夫が挙がりました。

  • 寝る前はなるべく食べない
  • 暴飲暴食しない
  • バランスを考えてタンパク質や野菜を多めに摂る
  • 1日3食摂る
  • サプリメントやプロテインで補う

栄養バランスを気にかけている看護師が多いことがうかがえます。1日3食摂りつつも、寝る前の食事や暴飲暴食を控えるなど、食事のタイミングや量に気を配る工夫が見られます。どうしても不足しがちな栄養素は、サプリメントやプロテインで補うのも良いでしょう。

※ナース専科調べ(2022年5月27日/有効回答数:316)

夜勤専従のメリットとデメリットをよく考えて検討を

夜勤専従は、高収入や日中の時間が自由に使えるなどのメリットがあります。その一方で、夜勤自体がきついと感じたり、心身の健康によくない影響が出やすかったりと、デメリットがあることも否めません。メリットとデメリット、自分の希望や体調を考慮したうえで夜勤専従という働き方を検討してみましょう。

【参考・引用】

看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン|日本看護協会

労働基準法|e-gov法令検索

夜勤専従者の「荷重負担」を防ぎましょう|日本看護師協会

白石弓夏
この記事を書いた人
白石弓夏
1986年千葉県生まれ。2008年に看護専門学校卒業、看護師免許取得。10年以上病院やクリニック、施設等で勤務。2017年よりライターとして活動。現在は非常勤として整形外科病棟でも勤務中。2020年11月には9人の看護師にインタビューした著書『 Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~(メディカ出版)』を発売。

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