看護師の多様な勤務形態。変形労働制・裁量労働制など理想を叶える働き方

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病院勤務は不規則な2交代制、3交代制勤務が約半数を占め、プライベートに十分な時間を割けなかったり、過労で体調を崩したりすることも多いです。しかし今、変形労働時間制や裁量労働制など、従来とは違った働き方が存在します。様々な勤務・雇用形態を知り理想のワークライフバランスを目指しましょう。

看護師の働き方には多様な選択肢がある

看護師の働き方は交代制が主流ですが、夜勤や長時間勤務を伴い、心身の負担が大きい働き方です。さらに、新型コロナウイルス感染症の流行によって勤務体制がより過酷になり、看護職員の離職率にも影響を与えています。
2020年の病院看護実態調査では、2019年度の正規雇用看護職員の離職率が11.5%と前年度より0.8ポイントの上昇です。
そんな中、看護師不足解消に向けて、労働環境の改善や多様な働き方を推進する動きがみられています。

看護師が選べる雇用形態や勤務形態の種類を解説

ナース専科で実施した勤務先が「働き方改革」に取り組んでいると感じるかどうかを聞いたアンケートでは、約半数が「取り組んでいる」、約2割が「取り組んでいない」と回答しました。

Q:働き方のどのようなことが改善されたと感じますか? (複数回答)

さらに、働き方改革で具体的に改善されたと感じた内容を見ると、「有給休暇の推進」に続く上位に、「長時間労働の改善」「業務効率の改善の取り組み」「多様な働き方の推進」などがあがっています。看護師の働き方を改善するさまざまな取り組みがみられますが、その方法のひとつとして、新たな雇用形態や勤務形態の導入が働き方の改善として評価されていることがわかります。
それでは、看護師の雇用形態や勤務形態には、どのようなものがあるのか見てみましょう。

雇用形態の種類

雇用形態とは、雇用者と従業員が締結する雇用契約の採用種別の区分を指します。下表のような雇用形態があります。

雇用形態 内容
正社員 雇用者と契約期間を定めないで雇用契約を結んだ労働者のこと。求人票には「常勤」や「正職員」と記載されることもある。
契約社員 雇用者と雇用期間が定められた雇用契約を結んだ労働者のこと。契約期間が満了すると、雇用契約が終了となるか、双方合意すれば契約の更新が行われる。
パートタイム労働者・非常勤 1週間の所定労働時間が、正社員と比べて短い労働者のこと。看護師の場合、時給による賃金の支払いの場合が多い。
短時間正社員 正職員として雇用され、フルタイムの職員と比べて所定労働時間が短い労働者のこと。時間あたりの基本給、賞与・退職金などの算定方法が正職員と同じで、雇用期間の定めがなく、社会保険加入や昇給昇格、育児・介護休業も適用される。
派遣社員 人材派遣会社と雇用契約を結んだうえで、期間を定めて派遣先で働く労働者のこと。看護師の場合、医療施設への一般派遣は認められていないが、紹介予定派遣(派遣期間終了後に、派遣先の職場で雇用される)と産休や育休の代替に限り認められている。

勤務形態の種類

勤務形態とは、病院(もしくは企業など)での勤務のあり方をいいます。下表のような勤務形態があります。

勤務形態 内容
交代勤務制 2交代や3交代勤務など、24時間稼働の職場で交替で働く勤務形態。夜勤専従、日勤専従などを選択できる場合もある。
変形労働時間制 一定期間を通じて法定の労働時間を超えない範囲(週の法定労働時間×変形期間の暦日数/7)で、特定の日または週に法定労働時間を超えて働く勤務形態。
例:1日10時間・週4日勤務など
裁量労働制 実際の勤務時間に関係なく、あらかじめ決めた時間を働いたとみなす勤務形態。看護大学の教員に多い働き方。
フレックスタイム制 1か月以内の一定期間における総労働時間をあらかじめ定め、その枠内で各日の始業・終業の時刻を労働者が自主的に決定して働く制度。

実際に選ばれている働き方

看護師には多様な働き方がありますが、実際の就職者はどんな働き方を選んでいるのでしょうか?
2020年度のナースセンター登録データによると、就職先の施設種類が「病院」で、就職先での雇用形態が「常勤」である就職者の勤務形態で最も多かったのが、「2交代制」で半数を超えています。次に多いのが「日勤のみ」でした8)。
就職先の施設種類が病院のほか、診療所や介護老人福祉施設、訪問看護ステーションなども加えた場合、「日勤のみ」が約65%と最も多い結果となっています。少数ですが、日勤+オンコールや日勤+当直という働き方もあり、多様な働き方をしたい人にとっては病院勤務以外の働き方を選ぶのもひとつの選択肢かもしれません。

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看護師の新しい働き方を事例で紹介

看護師の働き方は常勤・交代制だけではありません。ワークライフバランスが優先される今、どのような働き方ができるか具体的なモデルケースを見てみましょう。

事例1:育児中に嬉しい短時間正職員+病院看護師

育児中は、子どもの体調不良や行事など、休みを必要とするタイミングが多いほか、帰宅後から寝かしつけまでの怒涛のスケジュールを毎日こなす必要があります。配偶者や親の助けがないと、看護師として働き続けるのは難しいと感じる方も多いです。5)
そんな育児中の看護師が注目する働き方として、短時間正社員があります。
短時間正社員は、正職員の雇用条件で労働時間を短くできるため、ワークライフバランスをとりやすい働き方です。育児休暇から復帰後の看護師が短時間正職員を選択し、子どもの成長に合わせて通常の労働時間に戻すこともできます。
例えば、外来勤務なら下記のような働き方が可能です。

短時間正社員の外来看護師の場合

週30時間労働で週5日勤のみ(休憩時間1時間/日)の場合は以下のような働き方になります。

週5日日勤:6時間勤務 9:00~16:00
※土日休み

外来看護師の場合、土日休みが取りやすいこともあり、育休復帰後の看護師が働きやすい環境になっています。また、比較的家族の協力が得られ、週1回なら夜勤に入れるという場合に病棟勤務を選択される方もいます。

短時間正社員の病棟看護師の場合

週30時間労働、交代制・週5勤務(休憩時間1時間/日)の場合は以下のような働き方になります。

週1日深夜勤:9時間勤務 0:00~9:00
週4日日勤:6.5時間勤務 9:00~15:30

以前から働いている病棟なら、周りの協力も得やすく働きやすいと感じる人も多いでしょう。
短時間正職員のメリットとしては、勤務時間を前後ともに短縮した場合、前残業や残業がなくなることや、正社員と同じ待遇で有給が発生し、昇給・昇進などもできることです。
デメリットとしては、勤務時間が減り、残業もほとんどなくなるため、給与や賞与が減ることが挙げられます。

事例2:時間に縛られない非常勤+訪問看護師

2020年度のナースセンター登録データによると、就職者の雇用形態は「非常勤」36.2%、「臨時雇用」35.6%、「常勤」28.2%という結果でした。8)
非常勤の働き方で特に注目したいのが、訪問看護師です。訪問看護師は利用者宅へ訪問する曜日や時間が決まっており、下記のような働き方が可能です。

非常勤の訪問看護師の場合

週5勤務(休憩時間1時間/日)の場合は以下のような労働時間が考えられます。

月曜日:5時間勤務 10:00~16:00
火曜日:6時間勤務 9:30~16:30
水曜日:6時間勤務 9:30~16:30
木曜日:2.5時間勤務 9:30~12:00(休憩なし)
金曜日:5.5時間勤務 9:30~16:00

メリットとしては、曜日によって労働時間を調整でき、家族のスケジュールに合わせやすくなります。勤務時間をさらに減らせば、配偶者の扶養控除内で働くことも可能です。
デメリットとしては、常勤のようなボーナスや退職金がなく、勤務時間数によっては社会保険への加入ができないことになります。

勤務形態・雇用形態を理解してライフステージに合った働き方を実現する

看護師の働き方はひとつではありません。現在、就業中の勤務形態・雇用形態以外にも、多くの働き方が用意されています。今の働き方が合っていないと感じたら、新しい働き方にチャレンジするタイミングかもしれません。
看護師の多様な働き方を知り、視野を広げてみましょう。新たな選択肢が見つかるかもしれません。

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引用・参考

・News Release「「2020 年 病院看護実態調査」 結果 離職率は看護職員 11.5%、新卒 8.6%に上昇 二交代制勤務の平均夜勤回数が増加」(日本看護協会)
https://www.nurse.or.jp/up_pdf/20210326145700_f.pdf
・厚生労働省 さまざまな雇用形態
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/chushoukigyou/koyoukeitai.html
・日本看護協会 看護職のワーク・ライフ・バランス 働き続けられる職場づくりを支える制度や取り組み
https://www.nurse.or.jp/wlb/about/summary/support.php
・日本看護協会 職場の制度と法律を知ろう
https://www.nurse.or.jp/nursing/shuroanzen/madoguchi/hatasapo/pdf/2019hatasapo_p31-48.pdf
・日本看護協会 はたさぽ ナースのはたらくサポートブック
https://www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/kakuho/2019/hatasapo.pdf
・新潟県 No.16「交替制勤務と変形労働時間制は別物?」
https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/jouetsu_kikaku/1356864804279.html
・厚生労働省 フレックスタイム制とは
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/flextime/980908time01.htm
・ナースセンター登録データに基づく看護職の休職・求人・就職に関する分析報告書2020(令和2)年度
https://www.nurse-center.net/nccs/scontents/NCCS/html/pdf/2020/202_6.pdf

広田沙織
この記事を書いた人
広田沙織
大阪府立看護大学医療技術短期大学部卒業、看護師資格を取得。国立系総合病院の周産期科にて勤務を経て、婦人科クリニック勤務や、派遣看護師として老人福祉施設、デイサービス、健診センター、訪問入浴などで勤務。一般企業にて勤務後、医療ライターを始め、医療ライターズ事務所メディペンを開設。ファイナンシャルプランナー3級の資格を所持。

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