看護師として就職活動をして内定をもらったら、第一志望ですぐに承諾したい、複数の内定を吟味したいなど、様々な状況が起こるでしょう。そのような中で内定に誠実な対応をすることは、その後スムーズにキャリアを積むことにつながる大切なポイントです。今回は、看護師として内定をもらった後の手続きについて、承諾する場合と辞退する場合それぞれの流れをご説明します。
内定とは
そもそも内定とは、どのような状態を意味するのでしょうか?承諾・辞退どちらにしても手続きがしやすいように、基本的な考え方を知っておくとよいでしょう。
内定とは労使間で雇用契約が結ばれること
内定とは、「労働者と使用者との間で雇用条件についての合意がなされ雇用契約が結ばれた状態」のことをいいます。使用者から内定通知が出され、労働者がこれを承諾した時点で成立します。形式は、書面と口頭のどちらでも可能です。
内定取り消しは稀だが内定辞退は可能
内定は雇用契約なので、使用者側がこれを取り消す行為は“解雇”にあたります。そのため、よほどのことがない限り内定が取り消されることはありません。労働基準法では、“客観的に合理的な理由がある場合”に限り内定の取り消しを認めており、使用者側の経営困難や卒業見込みが果たされなかったなどがこれにあたります。
一方で労働者による内定辞退は、憲法で“職業選択の自由”が認められているため難しくありません。ですが民法での規定上、遅くとも入職日の2週間前までには申し出る必要があります。また、内定通知に対して辞退を伝える場合のみではなく、一旦内定を承諾した後で辞退することも可能です。
ただし内定承諾後の辞退はマナー違反であり、使用者側に大きな負担をかけるため、できるだけ避けることが望ましいでしょう。
内定を承諾する場合の手続き
内定を承諾する場合には、内定通知に対して承諾と返答し、必要書類の提出など入職のための準備を始めます。
内定通知を受け取り、指定の方法または電話で承諾の意向を伝える
内定の通知は、電話かメール、または書面の郵送にて行われます。採用試験から内定通知までの期間は様々なので、事前に確認しておきましょう。その期間を過ぎても連絡がない場合には、こちらから問い合わせをしても構いません。
内定通知を受け取ったら、返答の方法と期限について確認します。特に指定がない場合は、遅くとも1週間以内に電話で承諾の意向を連絡しましょう。電話の際には、先方が多忙な時間帯(始業直後・昼休み・就業間際)を避け、明確に承諾の意思を伝えます。内定をもらったことへの感謝と入職への意欲も伝えられると好印象です。何度か電話をしても担当者につながらなかった場合には、その旨を明記してメール連絡をしてもよいでしょう。
雇用条件を再確認し必要書類を提出
内定の承諾後、または内定通知と同時に必要書類が郵送されてきます。雇用条件に関する書類の内容をよく確認しましょう。不明確であれば問い合わせをして構いません。雇用条件に納得できるようであれば、提出用の書類を揃えて返送します。同時に、入職までのスケジュールや準備についても確認し、当日に備えましょう。
内定を辞退する場合の手続き
内定を辞退する場合には、速やかに辞退の意向を連絡し謝罪します。内定を一旦承諾した後で辞退する場合には、より誠実な対応が求められます。
速やかに電話連絡し辞退の意向を伝えて謝罪する
内定の辞退は、できるだけ速やかに行いましょう。先方が代わりの看護師を確保しやすいようにするためのマナーです。内定を承諾する場合と同じく、特に指定がない場合には電話で連絡します。内定承諾と違う点は、電話がつながりにくくてもメールで済ませず、なるべく直接話すことです。
電話連絡の際には、選考の手間を無下にしたことを謝罪し、心苦しいながらも辞退させていただく旨を丁寧に伝えましょう。内定を一旦承諾した後で辞退する場合には、先方は既にあなたを迎え入れる準備を進めており、代わりの看護師を確保することが難しくなるかもしれません。その重さを認識した上で、心を込めて謝罪する必要があります。
辞退の理由は失礼にあたらない範囲で先方に合わせて
内定を辞退する理由については、こちらから具体的に話す必要はないでしょう。「検討の結果、辞退させていただきたい」で構いません。それに対して先方が具体的な内容を質問してきたら、失礼にあたらない範囲で正直に伝えます。「看護理念に賛同できない」、「もっと待遇のいい雇用先が見付かった」など相手の欠点を指摘するのではなく、「自分では力不足で戦力になる自信がない」、「特にスキルアップしたい分野の病院から内定をもらった」など、自分側の理由として説明しましょう。
内定を一旦承諾した後で辞退する場合には、より具体的な説明が必要になるかもしれません。気が重いでしょうが、先方が納得してくれるまで誠実に対応することをおすすめします。
内定への返答を待ってもらいたい場合の手続き
内定への返答は、指定された期限内に行うことが原則ですが、それをすることで併願している施設の選考結果を待てないなどの困った事態に陥ることもあるでしょう。そのような場合には、内定への返答期限を延長してもらえるように交渉することも可能です。
内定への返答期限を延長してもらうためには、担当者に電話連絡をし“入職の意思はあるが熟慮するための時間がほしい”旨を丁重にお願いします。延長できる期限は長くても1週間程度だと考えておきましょう。先方から詳しい説明を求められた場合には“併願している施設の選考結果を待ちたい”と話しても構いませんが、あくまで入職の意思はあるという姿勢でいるのが好印象です。
内定は看護師としての対人関係の始まり、誠実に対応しよう
看護師としてのキャリアを積んでいく上で、“どこで働くか”はとても重要なポイントです。目指す看護師像に近づくためには、希望する施設への就職・転職を成功させたいですよね。晴れて内定通知を受け取ったときの対応は、その施設で働く上での対人関係の始まりです。
また、辞退する場合も含めて内定に誠実に対応することは、相手に対する配慮というだけではなく、今後自分が何かとつながりの多い看護業界でスムーズに働いていくための手段でもあります。内定への適切な対応を知り実践することで、看護師としての対人関係が豊かになることを願います。