正しい手順で確実に行う採血(その1)

採血(静脈血採血)の手技に関する根拠について解説します。
より正確な検体の採取と患者さんの苦痛を最低限にすることがポイント。
正しい手技手順で確実に行うことが大切です。

このケアのリスキーポイント

新人の頃苦手な手技に挙げられることの多い採血。
正しい操作を繰り返して行うことが手技習得のカギですが、安全は手技をマスターしてからも常に意識すべきことです。
患者さんの取り違い、感染、針刺し事故などを予防することは、患者さんだけでなく、実施する看護師自身の身を守ることにもつながります。

採血(静脈血採血)を行う場合、注射器を使用する方法と真空採血管を使用する方法があり、近年では真空採血管による採血が推奨されるようになってきています。
いずれも安全な実施のために必要なのは、血管と神経の走行を十分に把握しておくこと、手技手順の流れとその理由を正しく理解しておくことです。
また、静脈血採血の目的は検査(血液学的検査、微生物学的検査、臨床化学検査)ですから、検体の扱いにも注意が必要です。

また、駆血帯の使用時間、採血時の正しいポジショニング、採血管ホルダーの固定など、一見ささいに見える手技の中に、患者さんの安全や検査データを左右する要因があることも忘れてはなりません。

安全なケアの根拠を知ろう!

クレンチングするのは血管を浮き立たせるためではない

[このケアの根拠は?]
血管が見つけにくいとき、患者さんに手を開いたり握ったりを繰り返す動作をしてもらうことがあります。
これはクレンチングといい、血管を浮き出させるために行うとされてきました。

しかし、これによって筋肉の収縮が起こって、カリウムが細胞外に出て血中に流出してしまうことがあります。
その結果、カリウム値が高くなってしまい、正確な検査データが得られなくなる可能性が生じます。
ですから、採血前にクレンチングを行うことは、避けるようにします。

血管を見つけにくい場合は、手関節から肘に向けて前腕を軽くマッサージしたり、40℃程度に温めたタオルなどで腕を温めると血管が拡張し、確認しやすくなります。

血管の選択は目視だけでなく必ず触る

[このケアの根拠は?]
血管の選択は、「橈側皮静脈」「尺側皮静脈」「肘正中皮静脈」など、できるだけ太くて柔らかな弾力性のある血管を選ぶのが一般的です。

しかしそれらを選んだとしても、弾力性がなかったり、十分な血量が得られないこともあります。
怒張しているように見えたとしても、必ず指で触って、太さや弾力性を確かめることが必要です。

また、高齢者の場合は、血管が脆弱で硬くなっていることもあるので、その状態を触れて確認することが求められます。

上腕動脈や正中神経などは皮下の浅いところを走行している可能性があるので、肘正中静脈や尺側皮静脈を選択したときには、それらを損傷するリスクがあることを忘れないようにします。
血管や神経の走行は十分に把握しておきましょう。

駆血帯は強く締めず血液は2分以内に採取する

[このケアの根拠は?]
駆血帯を締める場合の圧は、通常40mmHg程度とされています。
強く締め過ぎると静脈が圧迫されてしまい、皮下出血などを生じることがあります。

また、血液の採取時間が長くなると、血液凝固が起こり、血清クロール値(Cl)が低下する、血液比重が増加する、など血液の性状が変化してしまい、正確なデータが得られなくなってしまいます。

このような変化が起こらない時間の目安が2分間なのです。
特に翼状針を使用して採血する場合は、内腔が狭く時間がかかるので注意が必要です。

注射器使用の場合、内筒を静かに引きながら採決を実施する

[このケアの根拠は?]
注射器内筒を強く引いてしまうと、針先に血管が吸い付いて乱流が生じ、血液の溶血が起こる可能性があります。

溶血とは、血液中の赤血球が壊れ、赤血球中に含まれるヘモグロビンが血清・血漿中に出てきてしまう状態のことをいいます。
これにより検査データが高くなってしまったり低くなってしまったりして、正しく得られない項目が出てきます。
例えば、カリウムや鉄、インスリンなどがよく知られます。

この溶血を予防するために、内筒を静かに引くという手技が重要になります。
これには、患者さんの疼痛を減らす働きもあります。

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【後編】
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(「ナース専科マガジン」2011年8月号より転載)

【監修】
野崎 真奈美さん
東邦大学看護学部
基礎看護学研究室・教授

今城 直実さん
東邦大学大学院
医学研究科看護学専攻・修士課程

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