助産師になるには?資格取得方法から給料・年収や看護師との違いを解説

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出産だけでなく、育児中まで妊婦をサポートするのが助産師。助産師になるには、看護師と助産師の資格を取得する必要があります。本記事では、国家試験の難易度から助産師に向いている人の特徴、仕事内容や給料・年収における看護師との違いまで解説します。

助産師とは?看護師との違いを解説

助産師とは妊娠から出産、育児にいたるまで母子の健康をサポートする仕事です。仕事内容は分娩介助にとどまらず、妊婦さんの健康指導やメンタルケア、産後の体調管理、新生児のケアなど多岐にわたります。

正常分娩であれば医師の指示なしで助産師自身の判断により分娩介助ができるのも特徴です。海外では男性の助産師が活躍している国もありますが、日本では女性のみが就業できる職業となっています。

助産師の法律的な定義や役割

保健師助産師看護師法第三項で助産師について、以下のように定義されています。

厚生労働大臣の免許を受けて、助産または妊婦、じよく婦もしくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいう

前述した通り、2023年1月末時点で、日本で助産師になるための絶対条件は“女性”であることです。性別を問わず助産師養成学校や大学の助産師養成コースで学ぶことはできますが、助産師国家試験は受験できなくなっています。

アメリカ、オーストラリア、イギリスなど一部の国では男性も助産師資格を取得できますがその人数は非常に少なく、助産師全体に占める割合は各国1%程度です。

助産師と看護師の違い

助産師と看護師の違いは以下の3つがあげられます。

助産師と看護師の違い1:必要な資格が異なる

助産師と看護師では、必要な資格が異なります。助産師は、看護師と助産師の両方の免許が必要です。そのため、助産師になるには看護師免許を取得してから助産師養成機関で1年以上指定カリキュラムを修め、助産師国家試験に合格する必要があります。看護師国家試験に不合格の場合は、助産師国家試験に合格しても資格を取得することはできないので注意が必要です。

なお、一部例外として4年課程の大学で看護師・助産師両方の指定カリキュラムを修了した場合のみ、看護師資格取得見込み者として助産師国家資格も同年度に受験することが認められています。

助産師と看護師の違い2:業務範囲が異なる

看護師は保健師助産師看護師法により、医師の指示のもとに医療行為を行うと定義されていますが、助産師は正常分娩に限り医師の指示なく自らの判断で分娩介助ができます。

また、産婦人科に所属する看護師であっても直接的な分娩の介助はできず、あくまで医師や助産師のサポートに回ります。

助産師と看護師の違い3:働く場所が異なる

厚生労働省の調査によると、助産師の主な勤務先は病院、診療所、助産所で約6割の助産師が病院に勤務しています。病院勤務の助産師は産科で妊産褥婦のケアや分娩に携わっていますが、分娩には携わらず小児科や新生児科に配属されているケースもあるようです。また、開業権を認められているので、自ら助産所を経営することも可能です。

看護師も助産師同様に約7割が病院に勤務していますが、訪問看護ステーションや介護施設、社会福祉施設など助産師に比べ幅広い施設で働いていることが特徴です。

助産師になるには?資格取得方法と国家試験の難易度

助産師になるには、大きく分けて2つの方法があります。以下では、具体的なプロセスを解説していきます。

助産師資格を取得する2つのルート

助産師になる方法1:看護師免許を取得後に助産師免許を取得

看護大学(4年制)や専門学校(3年制)などで看護師課程を修了し、看護師国家試験に合格した後、大学院(2年)や養成所(1年)などで改めて助産師課程を学び、助産師国家試験の合格を目指すルートです。大学院のほか、大学専攻科・短期大学専攻科・養成所(1年)などがこれにあたります。

看護師養成学校卒業後に進学する人だけでなく、看護師としての臨床経験を経て助産師へのキャリアチェンジを目指す人など、様々な経歴を持つ人が進学しています。看護師免許と助産師免許を別々に取得する場合、それぞれの国家試験に必要なカリキュラムをしっかり学習することができます。ただし、新たに大学院や養成所に入学し直すことになるため、仕事と並行して入試準備をする必要があります。

在学中は毎日朝から夕方まで講義や演習・実習があるため、フルタイムで働きながら通うことは難しいでしょう。勉強に専念するために、入学前に学費や当面の生活費を蓄えておくと安心です。勤務先によっては在学中の休職や学費補助などの支援が受けられるケースもあるので、事前に確認しましょう。

助産師になる方法2:4年制大学で看護師免許と同時に助産師免許を取得

4年制大学で看護師課程・助産師課程の両方を学び、看護師国家試験と助産師国家試験をダブル受験し資格取得を目指すルートです。4年間で看護師課程と助産師課程を履修することができますが、多くの大学で定員数が限られており、在学中の成績や実習評価などの要件があるため事前に確認しましょう。

また、通常のカリキュラムに加えて助産師課程の講義・実習を行うため、アルバイトや余暇などの自由な時間が少なくなります。さらに看護師と助産師の2つの国家試験を受けるため、方法1と比べるとより計画的な学習が求められます。

助産師国家試験の概要と合格率

例年、助産師国家試験は年に1回2月に行われます。過去の助産師国家試験を参考に、概要と合格率や合格基準(ボーダー)を解説します。

助産師国家試験の概要

試験日 助産師国家試験は毎年2月のいずれかの日で行われます。
令和5年の助産師国家試験日は2月9日です。
試験科目 基礎助産学
助産診断・技術学
地域母子保健及び助産管理
出題方法 マークシート
試験会場の場所 令和5年の助産師国家試験は以下の試験会場は以下の場所で行われます。
北海道・青森県・宮城県・東京都・新潟県・愛知県・石川県・大阪府・広島県・香川県・福岡県及び沖縄県
合格発表 毎年3月末、看護師・保健師と同日に行われます。
令和5年は3月24日です。

助産師国家試験の合格率と合格基準(ボーダー)

令和4年第105回助産師国家試験の合格率は、99.4%でした。また、2010年以降の助産師国家試験の平均合格率は95%を超えています。さらに、同年の看護師国家試験の合格率91.3%、保健師国家試験の合格率89.3%と比べると合格率は高いといえます。

なお、第105回助産師国家試験のボーダーは以下のとおりです。

一般問題を1問1点(75点満点)、状況設定問題を1問2点(70点満点)とし、次の合格基準を満たす者を合格とする

総得点 87点以上/145点

引用:第108回保健師国家試験、第105回助産師国家試験及び第111回看護師国家試験の合格発表 厚生労働省

例年、看護師・保健師・助産師の3つの国家試験は、1週間程度の間にまとめて行われます。同時受験を検討している方は、体調管理にも注意しましょう。

また、厚生労働省は定期的に出題基準を見直しています。令和5年版の助産師国家試験の出題基準は以下に詳しく掲載されているので、ぜひ参考にしてください。

助産師の仕事内容。「きつい」「辛い」といわれる理由から「やりがい」まで

助産師の仕事内容は、妊娠期・分娩期・産褥期で異なります。

助産師の仕事内容

助産師の仕事は出産前にあたる妊娠期、出産時にあたる分娩期、出産後にあたる産褥期それぞれで異なります。おもな助産師の業務について、各期にわけて紹介します。

妊娠期

妊娠期の助産師の仕事内容は、母子とその家族が安心した状態で安全な出産に臨めるよう精神的・肉体的な負担をサポートすることです。生活環境や職業など女性の社会的側面も考慮しながら、一人ひとりにあった支援を行います。母子とその家族が心身ともに親となる準備を整えられるよう、コミュニケーションをとることが大切です。

【代表的な仕事内容】
  • 妊婦検診
  • 母子の健康指導
  • 出産、育児に関する悩みの相談
  • 出産、産後の基礎知識指導

分娩期

分娩の兆候や進行状態の診断を行い、適切な助産技法を用いて母子ともに安全な分娩を介助します。どのような状況でも女性が最大限力を発揮できるよう、身体的なケアだけでなく心理的なサポートも行います。また、赤ちゃんを取り上げるだけでなく、その家族にとっても納得のいく出産体験になるようサポートすることも助産師の役割のひとつです。

【代表的な仕事内容】
  • 分娩の準備
  • 正常分娩の介助
  • 異常分娩の見極めと医師との連携
  • 産婦とその家族の精神的サポート

産褥期

産褥期とは、出産を終えた女性の心身が妊娠前の状態まで回復していく約6~8週間の期間を指します。助産師は女性が正常な産褥経過を辿れるように診断し、適切なケアを行いながら、退院後の生活を見据えて育児の基本を指導します。産褥期の助産師の仕事は、女性自身のサポートと育児指導にとどまりません。家族機能と役割の変化に適応できるよう、支援することも重要です。

【代表的な仕事内容】
  • 母児の健康状態のチェック
  • 授乳指導
  • 育児支援
  • 褥婦とその家族の精神的サポート

助産師のやりがい。「きつい・辛い」といわれる理由は?

助産師は「きつい」「辛い」と言われることも多い仕事です。理由としては「母体・胎児の命を同時にあずかるプレッシャー」「幸せな妊娠・出産ばかりではない」「精神的、体力的な負担が大きい」ことなどが挙げられます。

助産師の仕事は大きな責任が伴う一方で、やりがいを感じる場面も多い仕事です。その中でも命の誕生に立ち会うことができるのは、他の職業では味わうことができないやりがいのひとつでしょう。

また、助産師は医師と同様に開業権が認められているため、開業というキャリア選択も可能です。さらに、自身の妊娠や出産、子育ての経験が活かすことができる点にやりがいを感じる人も多いようです。

助産師が活躍できる職場

2020年末時点で、全国で37,940人の助産師がさまざまな場所で働いています。厚生労働省のデータをもとに助産師が活躍できる職場を解説します。

一般病院

全体の約6割にあたる約23,000人の助産師が病院に勤務し、外来と病棟の業務にあたっています。医師や助産師だけでなく小児科医や新生児科医などと連携して、妊産婦・胎児の対応まで幅広く学ぶことができます。

その他にも、よりハイリスクな妊娠・出産に対応する周産期母子医療センターで働く助産師もいます。

診療所・クリニック

診療所・クリニックで活躍する助産師は約8500人で、全体の約2割にあたります。出生数が減少するなか診療所・クリニックは全国の約半数の分娩を担っており、そこで働く助産師のニーズが衰えることはないでしょう。

診療所・クリニックは病院とは異なり、産婦人科医と助産師で運営されているのが特徴です。医師数は病院や周産期母子医療センターよりも少なく、業務全体における助産師の担うウエイトは高いです。さらに、診療所・クリニックは以下の3つにわけられます。

分娩可能な有床診療所・クリニック

正常分娩を含めた低リスク妊婦や他医療機関と連携したリスクの低い帝王切開、および正常新生児に対応しています。

妊婦検診のみを扱う無床診療所・クリニック

最近では分娩を取り扱わず、妊婦検診をになう診療所・クリニックが増えています。分娩に対応しないため夜間や休日出勤等がない、土日・祝日・年末年始などは休めるなど、ワークライフバランスが保てるという特徴があります。

不妊治療専門クリニック

晩婚化・晩産化が進み女性の妊孕性が低下している近年、不妊治療のニーズが高まっています。日本生婦人科学会の報告では2020年に全国で約6万人の新生児が体外受精で産まれ、その割合は14人に1人にのぼります。今後も不妊治療専門クリニックは増加していくと推測できるでしょう。

治療のゴールが見えづらい不妊治療では、精神的負担も大きいため、助産師の知識・スキルを活かした精神的なサポートが求められているのです。

助産所(助産院)

助産所とは、助産師を施設の責任者とする医療法で定められた施設を指します。2019年の日本看護協会の調査では、助産所で働く助産師の数は2,281人で就業者全体の約5%を占めます。そのうち約半数の助産師が施設長として助産所を開業しています。助産所には助産師のみが勤務し医師は不在のため、すべての判断を助産師が行います。

保健所や自治体・行政

保健所や自治体・行政などでは約3%、約2,000人の助産師が活躍しています。保健所の健診や母子保健事業に携わるだけではなく、厚生労働省では看護系技官として国の公衆衛生や医療のために働いています。地方公務員や国家公務員と同等の扱いになるため、公務員試験を受ける必要があります。

託児所や保育園・幼稚園と教育機関など

全体の約4.5%、1,700人の助産師は託児所や保育園・幼稚園、教育機関で活躍しています。とくに看護師等養成所または研究機関で働く助産師が多く4.1%、1562人にのぼります。託児所や保育園・幼稚園ではおもに0歳児の乳児期の保育に携わります。教育機関では看護師養成学校や助産師養成学校の産科・婦人科の教員や研究者として働いています。

助産師の給料・平均年収

平均的な助産師の給料や年収を、厚生労働省の令和3年度賃金構造基本調査やハローワーク求人データをもとに看護師と比較して紹介します。

助産師の給料・平均年収

厚生労働省の調査に基づく助産師の平均給料と賞与、推定平均年収は以下の通りです。

(推定平均年収=平均給与×12ヶ月∔年間賞与で計算)

給料(万円) 賞与(万円) 推定平均年収(万円)
38.7 88.7 553

※平均年齢37.1歳、勤続年数7.5年

※令和3年度賃金構造基本統計調査 第2表年齢階級、勤続年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額より抜粋

助産師と看護師、給料・年収が高いのは?

助産師と看護師で給料・年収が高いのは助産師です。

令和3年度賃金構造基本統計調査をもとに、助産師と看護師の平均給料・推定平均年収を比較します。

平均給料(万円) 年収(万円)
助産師 38.7 553
看護師 34.4 498.2

※助産師:平均年齢37.1歳、勤続年数7.5年

※看護師:平均年齢42.1歳、勤続年数9.2年

またハローワーク求人統計データによると、令和3年度の助産師・看護師の月額求人賃金は以下のとおりです。

月額求人賃金(万円)
助産師 28.7
看護師 24.9


参考:「職業情報提供サイトjobtag – 助産師」厚生労働省


参考:「職業情報提供サイトjobtag – 看護師」厚生労働省

いずれの調査結果からも、月平均約5万円程度、年収で約60万円程度看護師よりも助産師の給料が高いことがわかります。

助産師の給料・年収が高い理由

助産師の給料・年収が高い理由は、看護師よりも手当の種類が多いことが挙げられます。具体的には「助産師資格手当」や「分娩介助手当」などがあります。分娩介助手当は分娩介助1件ごとに支給される場合と、分娩介助件数に関わらず一定額が支給される場合があり、分娩1件につき3000円が支給されるという病院もあります。

助産師へのニーズは増えている

少子化が進み出生率が下がっていますが、毎年新生児が産まれるということには変わりはなく、助産師の仕事がなくなるということもありません。また、産婦人科の数の減少に伴い、助産師が妊婦検診を担う「助産師外来」を設置する施設も増加しているほか、不妊治療など新たな分野での助産師のニーズも増えているのが実情です。

助産師に向いている人は?特徴3選

最後に、助産師に向いている人の特徴を紹介します。

特徴1:人に寄り添える

看護師は新生児・小児・成人と看護の対象が分かれていて、同時に異なる年齢を対象にすることはほとんどありません。しかし、助産師は出産の場面では母体・胎児の状態を同時に看護し、対象者の年齢は多岐にわたります。うれしいことだけでなく、辛いことなどさまざまな状況にある対象者に寄り添い、前向きな気持ちに導くことができる人が助産師に向いています。

特徴2:体力・精神力に自信がある

深夜・早朝を問わずはじまるお産。時には数日間長引くケースや、急速に分娩が進行し迅速な判断を迫られるケースも少なくありません。さらに助産所を開設した場合には、診療時間外の対応も発生します。時には辛い経験もある助産師の仕事には、体力的にも精神的にもタフな人が向いていると言えるでしょう。

特徴3:継続的に学習する意欲が高い

医療は日々進化し、ガイドラインやマニュアルもアップデートされるため、常に最新情報をキャッチし実践に生かす能力が求められます。新生児蘇生法(NCPR)講習会の修了認定や、アドバンス助産師の資格取得などプラスアルファの資格取得しておくと日々の業務にも役立てることができます。成長意欲を持って継続的に学習し続けられる人が向いているでしょう。

助産師資格取得をキャリアの選択肢のひとつに

助産師になるには、看護師免許と同時に助産師免許が必要です。また、助産師は命の誕生に携わることができるやりがいのある仕事ですが、正常分娩であれば自らの判断で分娩介助ができるという点など、より責任の大きさを感じ「きつい」「辛い」と感じる人も多いようです。体力的にも精神的にもハードな場面も多く、心身ともにタフな人が向いているでしょう。助産師が働く場所は主に病院ですが、助産師のニーズ拡大に伴い活躍の幅も広がっています。 “独立”や“開業”という助産師ならではの選択肢も含めて、助産師資格を活かしたキャリアプランを検討してみてください。

【参考】


厚生労働省「令和2年衛生行政報告例 就業医療関係者概況」

小田あかり
この記事を書いた人
小田あかり
大学看護学部卒業後、小児・内分泌・循環器科で勤務。看護師として働きながら、知識と経験を活かし、医療ライター・監修者として活動中。

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