急速な高齢化が進む大分県では、医療・介護サービスの需要が増大していく中で、患者それぞれの状態にふさわしい良質で適切な医療を効果的かつ効率的に提供する体制を構築することが喫緊の課題となっています。そのため、地域の医療機能の適切な分化・連携の推進や技術革新を活用した新しい健康・医療・介護システムの構築などさまざまな施策に取り組んでいます。
具体的には、かかりつけ医と医療機関の適切な役割分担をはかるため、身近な地域におけるかかりつけ医の普及・啓発やプライマリ・ケア機能の充実を促進しています。また、医療機能の分化として、必要な医療機能情報を医療機関や県民が共有できるように、5疾病ごとの各病期に対応できる医療機関名や病床機能報告結果等を県のホームページで公表しています。そのほかにも、患者・住民が日常的に自身の状態に応じた医療機関を選択する意識を持ち、適切な受療行動をとることが重要であることから、行政や医療機関、保険者や関係団体が協働して、患者・住民への啓発にも取り組んでいます。地域医療介護総合確保基金を活用し、病床の機能転換など医療機能の分化・連携に関する各医療機関の取り組みを推進しています。
大分県では、医療における情報化の推進として、医療機関の電子カルテやオーダリングシステム等の導入、レセプトの電子化等の情報化を行っています。加えて、地域におけるITを活用した医療情報連携や在宅療養支援等のシステムの導入など自主的な取り組みを支援し、限られた医療資源の有効活用、地域の医療の質の向上に努めています。
このように大分県では、医療領域においてさまざまな施策や支援・取り組みを行っています。
出典: 第7次大分県保健医療計画
大分県の看護師に対する支援・取り組み
大分県の就業看護職員数は増加傾向にあり、人口10万人あたりの看護師・准看護師の就業者数は、全国平均を大きく上回っていますが、地域偏在がみられています。また、高齢化や疾病構造の変化、療養場所の多様化により、訪問看護ステーション等の在宅分野での看護師の活躍と充足が求められています。
大分県では看護学生の県内就職の促進を図るため、小中学生や高校生等の若年層への啓発を行っています。それとともに、修学資金の貸付事業を実施し、看護学生の職場体験や職場環境改善による魅力ある病院づくりの推進、養成機関と就職施設との連携による学生への的確な情報提供方法などを検討しています。さらなる在宅医療等の推進を図っていくため、一定の手順書により一定の診療の補助を行う看護師を養成する「特定行為にかかる看護師の研修制度」が平成27年10月から施行されています。大分県では、大分県立看護科学大学が特定行為研修を行う研修機関に指定され、大学院NP(ナースプラクティショナー)コースにおいて特定行為にかかる看護師の養成を行っています。このような指定研修機関及び実習を行う協力施設の確保等、研修体制の整備も進めています。
なお、大分県立看護科学大学大学院のNP(ナースプラクティショナー)コースは、2015年より厚生労働大臣より特定行為研修の指定研修機関として認可されています。このコースを修了することで日本NP教育大学院協議会(JONPF)が実施するNP(診療看護師)資格認定試験の受験資格が得られる国内でも数少ない教育機関です。合格することでJONPFからNP資格が与えられます。NP(診療看護師)とは、必要とされる診療行為を、医師やほかの医療従事者と連携・協働し、効果的、効率的、タイムリーに実践できる能力を備えた看護師のことをいいます。
このように、大分県では質の高い医療を提供することのできる看護師を育成する機関や研修が整っています。
そのほかにも、看護師等の離職防止と定着・再就業促進のため、病院内保育に対する助成や各種支援制度の周知を図り、働きやすい勤務環境の整備促進に努めています。職場での研修体制の充実は、離職防止につながることから、研修体制が整いにくい訪問看護ステーションや診療所、福祉施設などの小規模施設での研修体制づくりにも取り組んでいます。
このように、大分県では看護職員が安全で質の高い看護の提供ができるよう、勤務環境改善や再就業の促進などさまざまな支援・取り組みを行っています。
出典:
大分県看護師等修学資金貸与制度
第7次大分県保健医療計画 第6章
大分県立看護科学大学
日本NP教区大学院協議会(JONPF)