院長をご紹介します!
-「ちょっと見つめてみる」ことについて-
運動のため時々ジョギングをしています。よく走る川沿いの道には、センダンの木がたくさん生えています。センダンは黄土色の実をつける落葉樹で、初冬に葉が落ちると、色づいた実だけが残り、遠くから見れば木が黄色くなっているように見えます。春になると、若葉が芽吹きやがて初夏には紫色の小さな花が咲きます。緑と紫がまじりあって意外に美しい。川沿いにセンダンが多いことに気づいて、その次に気づいたのは、街のいろんなところにセンダンの若木が生えていることです。道路の中央分離帯であるとか街路樹の下とかちょっと土のあるところによく生えているようです。センダンに関心がないときには気がつかなかったことです。そういうセンダンの若木の周りには、実を落とすような大きなセンダンの木はありません。この若木は、街中に住んでいる鳥が、センダンの生えているところまできてその実を食べ、そして街に戻ってまかれた種が大きくなったのではないかと想像しています。
季節によっては、頭の上から街路樹の花の芳香がふりそそいでくることもあるのです。そんな道を歩くのはなかなか楽しいものです。とはいえ街中の小さい通りに入り込むとそこにはあまり緑がありません。ごみごみしたビルが立ち並び、雑然としていて殺風景です。しかしそんなところを歩いていても、ふと何かに目を奪われることがあります。例えば味気ない電信柱の列が、あるリズムを刻んでいるように思えたり、ビルの窓や屋根の重なりの縦と横のラインが面白い構図を作ってるように感じられたりすることがあります。そんな時は、ちょっと立ち止まって、じっと眺め、また右や左に少し首を傾けてみたりします。すると、何の魅力もないと思われた風景がまるで現代アートのように見えてくることがあるのです。
少し目を凝らしてみることで、私たちの周りには美しいものや不思議で興味深いものがたくさんあると思います。別に遠い深山幽谷に行かなくても、美しい自然を味わうことができます。お金を出して美術館に行かなくても、魅力的なものが身近にはたくさんあるのではないかと思います。少し息抜きのつもりで、立ち止まり、なんでもないような日常の身の回りのものに目を凝らしてみませんか。そこには意外な楽しみがきっとあると思いますよ。
院長 相澤明憲