退職・転職のときに必要な手続きは各種ありますが、なかでも税金や失業保険など「お金に関すること」は敬遠しがちです。しかし、これらの手続きは思っているほど複雑ではありません。支払うべきお金や受け取れるお金を理解して、万全な状態で退職・転職にのぞみましょう。
転職時は税金の納付忘れ&手当金のもらい損ねに注意!
退職後の予定は、「すぐに転職する」「しばらく離職して転職活動をする」など人それぞれですが、いずれの場合も、これまでと同様に税金を納める必要があります。ところが、ほどんどの方は給与から天引きされる形で税金を納めてきたため、いざ退職となると「税金ってどうやって支払うの?」「どんな手続をすればいいの?」と不安になる方もいることでしょう。
また、退職後すぐに転職の予定がない場合、申請によって受け取れる手当金があります。「失業手当」と呼ばれるものですが、離職期間は収入が途絶えますので、ぜひ手続きをしておきたいところです。これらの「納めるべきお金」「受け取れるお金」をしっかりと理解しておけば、退職・転職の際に慌てることもありません。
納めるべき税金は「所得税」と「住民税」
現在お勤めの方のほとんどが、給与から天引きされる「特別徴収」で税金を納付しているため、「税金」と言われてもピンとこないのではないでしょうか。給与から特別徴収されている税金には、「所得税」と「住民税」があります。
- 所得税:個人の1年間の所得に対して課税される税金です。毎月の給与から「源泉徴収」される形で、職場を通して税務署に納付します。
- 住民税:都道府県民税と市町村民税を合わせたもので、1月1日時点の居住地に納める税金です。前年1年間の所得に応じた税額と自治体ごとに決められた税額を合算し、6月〜翌年5月にかけて後払いする仕組みになっています。
退職後に受け取れる「失業手当」とは?
厚労省は、失業手当を『失業された方が安定した生活を送りつつ、1日も早く就職していただくために給付するもの』*1と定義しています。退職した人すべてが受給できるわけではなく、一定の要件を満たす場合のみ支給される給付金で、受給を希望する場合は手続きが必要です。
税金&失業手当の手続きってどうするの?
ここからは、税金に関する手続きと、失業手当を受給するための手続きについて解説します。
所得税に関する手続き
・退職後すぐに転職する場合
退職する職場から「源泉徴収票」を受け取り、転職先に提出します。これによって、その年の年末調整を転職先で行ってもらうことが可能です。
そもそも所得税は、給与水準や扶養家族の人数などに応じて、「おおよそこれくらい」と事前に決められた税額を職場が源泉徴収しています。そのため、年の途中で給与が変動したり、扶養家族が増えたりすることは考慮されていません。
年末調整は、「おおよその額」で源泉徴収された金額と、実際の所得税との差額を調整するために行われます。実際の税額より多く支払っていた場合は、「還付金」という形で余分に払った税金が戻ってくる仕組みです。
・退職後すぐに転職しない(しばらく離職する)場合
すぐに転職しない場合は、退職時に受け取った「源泉徴収票」を大切に保管し、翌年に確定申告を行う必要があります。しかし、離職期間があっても年内に再就職する場合(例:6月に退職し、同年11月に再就職する)は、再就職先で年末調整を行ってもらえるため確定申告は不要です。
ただし例外もあり、年末の再就職だと、転職先の年末調整に間に合わないことがあります。そのような場合は、年内に再就職しても確定申告が必要になるため注意しましょう。
住民税に関する手続き
住民税は「特別徴収」として給与から天引きされ、職場を通して納付しています。そのため、転職先でも同じように特別徴収を希望する場合は、退職元・転職先の両方で手続きが必要です。さらに、退職・転職のタイミングによって納付方法が異なる点も注意しておきましょう。
・転職先で特別徴収を希望する場合
転職先でも引き続き「特別徴収」を希望する場合は、その旨を退職する職場に伝え、「給与所得者異動届出書」に記載してもらう必要があります。「退職前に余計な手続きを増やしたくない」という方にとっては、少しハードルが高いと言えるでしょう。
退職時に特別徴収の継続手続きを行わなかった場合は、「普通徴収」に切り替えられ、自分で住民税を納付することになります。
◯1〜5月に退職する場合
住民税の納付の区切りは6月〜翌年5月なので、5月までに納付すべき住民税を最後の給与から天引き(一括徴収)して精算します。
◯6月〜12月に退職する場合
すでに転職先が決まっている場合で、特別徴収の継続手続きを済ませていれば、転職先でも給与から天引きする形で住民税が納付できます。ほかにも、普通徴収に切り替えて分割で納付する方法や、翌年5月までの住民税を最後の給与から天引きして納付する方法もありますので、いずれかを選択し退職前に伝えておくようにしましょう。
失業手当をもらうために必要な条件
失業手当は雇用保険制度のひとつで、離職後も安定した生活を送りながら、1日も早く次の就職先が見つけられるように給付されるお金です。そのため、失業手当を受給するには一定の条件を満たす必要があります。
【失業手当の受給要件】
- 離職前の2年間に、12ヶ月以上働いていた期間がある
※ただし、会社都合の退職(倒産や解雇など)や病気・出産による退職の場合は、離職前の1年間に通算6ヶ月以上働いていればOK - 再就職する意思や、健康状態・環境面で就職できる能力があり、積極的に就職先を探しているにも関わらず、職業に就くことができない場合
つまり、失業手当を受給するためには「一定期間働き、雇用保険に加入していた実績」と「再就職する意思」が必要ということになります。
失業手当をもらうための手続き
失業手当を受給するためには、居住地を管轄するハローワークで受給申請の手続きを行う必要があります。まずは、離職票(退職時に受け取ります)を提出し、求職申込みをしましょう。
ここで注意したいのが、「手続き後すぐに失業手当をもらえるわけではない」ということです。失業手当を受給するまでには、7日間の「待機期間」と、自己都合での退職の場合は3ヶ月間の「給付制限」があります。
さらに、失業手当の受給が開始された後も、4週に一度は「失業認定申告書」を提出し、就労の有無や求職活動の状況を申告する必要があります。これらの手続きを行い、受給要件を満たしていれば、退職日から原則1年間は失業手当を受け取る手続きが可能です。なお、失業保険を受け取れる期間は勤続年数により異なります。
【失業手当の申請に必要なもの】
- 離職票1、2(退職時に職場から受け取り、大切に保管しておきましょう)
- マイナンバーが確認できるもの(マイナンバーカード、通知カードなど)
- 身元が確認できるもの(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 印鑑
- 写真2枚(正面上半身で、タテ3.0cm×ヨコ2.5cm)
- 本人名義の預金通帳もしくはキャッシュカード
直前に慌てないためにも、お金関係の手続きを整理しておこう
退職や転職では、さまざまな手続きがつきものです。「税金」や「失業保険」など、お金に関する手続きはむずかしく感じますが、実際はさほど複雑ではありません。まずは支払うべきお金・受け取れるお金について理解し、退職や転職の直前に慌てないよう、ひとつずつ整理しておくことが大切です。
手続きや各種申請の最新情報については、お住まいの市役所や該当施設で情報をご確認ください。