【変化する理想のはたらき方】社会人から看護師になった40代ママの今後の目標

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社会人から看護師になった40代ママインタビュー

シリーズ「私らしくはたらく 看護師ストーリー」では、様々なキャリアを歩む看護師にインタビュー。自分らしいはたらき方の実現に至るまでの道のりや転機などを深掘りしていきます。

インタビューさせていただいたのは、社会人経験を経て離婚を機に30代で看護師になったAさん。ラストとなるPart3では、病棟から訪問看護へ移った現在の働き方や、様々な職場を経験して変化した価値観、今後の展望について伺いました。

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「子供との時間を最優先に」病院から訪看へ

―約4年の病棟勤務を経て、訪問看護ステーションへ転職されています。訪看へ転職を決めた理由を教えてください。

最も大きな理由は、子供との時間を確保するためです。それまでは自分が看護師として一人前になることを優先していて、子供に充分な時間を割いているとは言えない状況でした。

当時、上の子が中学2年生、下の子が小学5年生だったかな?勉強を見てあげる時間もなかったので、特に下の子の成績は芳しくなく「これはまずい」と思ったことがきっかけです。

当時勤めていた病院は土日祝の休みが少なかったので、土日祝の休みが取れる訪問看護ステーションに転職することを決断しました。

また、病院では常に時間に追われ、前残業や後残業が多く、体力的にも負担がありました。

訪問看護では残業が少なく、時間に追われることが少なく落ち着いて業務に取り組むことができます。訪問看護ステーションもいくつか経験していますが、訪問中は患者さん一人一人にしっかりと関わることができる点も、今も訪問看護を選び続けている大きな理由の一つです。

転職してからわかりましたが、訪問看護では基本的に一人での訪問となるため、病院時代に比べて人間関係のストレスが少ないこともありがたいですね。

― 病院と訪問看護の違いに戸惑うことはなかったですか?

最初は病院との違いに不安を感じることはありました。特に、「自分一人で判断し行動しなければならない」という点が、大きな不安の要因でした。

病院は先輩や医師が近くにいて、困った時にすぐに相談できる環境です。訪問看護ではそういったサポートが少なく、自己判断が必要な場面もあります。そのため、責任の重さを感じることも少なくありませんでした。

一方、良かったこともあります。自己判断能力や責任感が育まれたことに加えて、急変対応や緊急時の対応スキルが向上したことです。訪問看護でも急変は起こりえます。定期的に急変時対応の講習を受け、実際にその場面に直面した時に適切に行動できるようになりました。

また、患者さん一人一人と密接に関わる中で、患者さんやご家族の気持ちをより深く理解し、信頼関係を築けるようになったことも大きな収穫でした。

不安を乗り越えるための努力が、私自身を看護師として成長させたと感じています。

― 同じような理由から、訪問看護への挑戦を迷われている方も多い印象です。訪問看護の魅力や好きな業務があれば教えてください。

私が感じる訪問看護の魅力は、患者さんの意向に沿うことができることです。病院では治療が最優先されますが、在宅では治療よりもQOL(生活の質)や本人と家族の意向を優先することができます。

例えば、終末期で患者さんが誤嚥性肺炎の場合、病院では医師の指示により絶飲食を厳守しなければなりません。しかし、在宅では患者さんは食べたいものを最期まで食べることができます。

私は患者さんと一緒に散歩に行くことが好きです。春には近くの公園へ桜を見に行くなど、一緒に自然や季節を感じながら患者さんと過ごす時間がとても心温まります。

― 患者さんとの印象に残っているエピソードを教えてください。

誤嚥性肺炎を繰り返していた終末期の患者さんのエピソードです。元々、食べることが大好きだった方で、特に甘いものがお好きでした。

しかし、徐々に食事が困難になり、食べても吸引が必要になることが増えました。吸引は苦しい処置で、ご家族も「食べさせたい」という思いと「苦しませたくない」という思いの間で葛藤していました。

そこで私が思い出したのが、看護学校で学んだ「好きな飲み物で口腔ケア」の看護です。ご家族に提案し、患者さんの好きだったお汁粉で口腔ケアを行ったところ、患者さんは穏やかな表情を見せ、ご家族も安心されていました。

この経験を通して、患者さんの思いに寄り添う看護の素晴らしさを実感するとともに、「患者さんにとっての安全・安楽とは何か」を深く考えさせられました。患者さんとご家族の希望を少しでも形にできたこと、そして人生の最期の大切な時間を温かく有意義に過ごしていただけたことに、看護師としてのやりがいと喜びを感じました。

今のはたらき方、職場の好きなところは?

― 現在は施設内訪問看護に勤務されています。出勤から退勤まで1日のスケジュールを教えてください。

  • 8:50 その日の施設に出勤(複数の施設で勤務)
  • 9:00 申し送りノートや訪問表に目を通し、情報収集
  • 9:30〜12:00 訪問(30分)2〜4件とその記録
  • 12:00〜13:00 昼休憩
  • 13:00〜17:30 訪問(30分)4〜6件とその記録
  • 17:30〜18:00 申し送りノート記載と上司に報告
  • 18:00 退勤

訪問件数は常に増減します。患者さんの入院などで減ることもあれば、施設内で感染症流行により増えることもあります。

― 施設内訪問看護に転職した理由を教えてください。

訪問看護に転職したことで、土日祝に休みを作り、家族との時間を中心に生活のバランスを整えることができました。

ですが、訪問看護では自転車移動が主だったため、年々体力的な負担を感じるように。その点、施設内訪問看護は出勤すれば同じ建物内での移動だけで済み、天候に左右されることもありません。

移動のストレスがなくなったことで、より安心して看護に集中できるようになりました。

― 今の職場の好きなところを教えてください。

好きなところはたくさんありますが、主に3つあります。

1つめは、時間的に余裕があることが多く、一人一人の患者さんとゆっくり関わることができるところです。そうした環境の中で、自分の理想とする看護を実践できていると感じています。

2つめは、基本的に一人で動くことが多いため人間関係のストレスが少ないところです。余計なストレスが減り、看護により集中することができるようになりました。

3つめに、点滴業務を通して注射の機会があり、手技の感覚を忘れずにいられる点も気に入っています。

職場に求めることは変化して当然

― 様々な職場をご経験されるなかで、職場に求めることは変化しましたか?

はい、変化しました。最初は休日や給料などの条件面よりも、病棟で一人前の看護師になるための教育環境を重視していました。

しかし、経験を重ね自分のペースで動けるようになってきた頃から、ワークライフバランスや条件面を重視するように。

今後は、子供の独立や親の介護、自身の加齢や体力の変化により、職場に求めることもまた変わってくると感じています。

― これまで「転職してよかった」と思ったことはありますか?

転職してよかったと思うことはたくさんあります。病院勤務と比べると、他の職場では体力的にも精神的にも負担が少なく、余裕を持って働けるようになりました。

条件面では、やはり土日祝に休めることが多くなったこと。自分の人生で最優先したいのは子供との時間だということに気づくことができましたし、行動に移して転職して良かったと感じています。

看護師になったばかりの頃は、1つの職場に長く勤めることで経験が積めると考えていました。もちろんそれも1つの選択肢ですが、様々な職場を経験したことで、看護師としての知識やスキルが増え、視野も広がったと感じています。

― 反対に、転職を後悔したこともありますか?

後悔した経験も一度だけあります。エージェントを通さずに直接応募して入職した職場で、事前に聞いていた労働条件から大きく変更されたことがありました。

この経験から、第三者であるエージェントを介することで、条件面のズレを防ぎ、労働契約がきちんと履行されるようサポートを受けられる点は、私にとって大きな安心材料だと感じました。

エージェントは職場の雰囲気など面接だけではわからない詳細な情報にも精通しているので、より自分にあった職場を見つけやすいこともメリットだと思います。

― 今、働く上で最も大切にしている価値観はどんなことですか?

今、働く上で最も大切にしているのは、患者さんの気持ちに丁寧に寄り添うことです。病院勤務時代は、常に業務に追われており、患者さんに「ちょっと待ってください」と言わざるを得ない場面が多くありました。

忙しそうな私に声をかけづらいと感じさせてしまっていたと思います。そういった状況では、私が理想とする看護は実践できないと感じていました。

今は、患者さんが話しかけやすい雰囲気の中で、しっかりと気持ちを受け止める時間を持てることを大切にしています。老化に伴ってできなくなっていくことへの苛立ちや辛さ、死期が近づくことへの不安など、患者さんが抱える様々な思いに寄り添いながら関わることが、私の看護観の中心にあります。

― 今のはたらき方に満足していますか?それはどんなところが理由ですか?

今のはたらき方にはとても満足しています。

まず、プライベートとのバランスが取れることが大きな理由です。 土日祝に休みが取りやすく、子供の予定に合わせて休暇を取ることができるため、学校行事や家族との時間をしっかり確保できます。

さらに、残業がないことも大きなポイントです。毎日決まった時間に帰宅できるため、子供の勉強を見たり、塾の送迎をしたりと、子供との時間を大切にできています。

次に、体力的にも精神的にも負担が少ないことです。 業務には時間的なゆとりがあり、忙しさに追われることなく自分のペースで働けるため、体力的に無理なく働けています。

また、精神的にも、病院のような極度の緊張やストレスが少なく、リラックスした環境で働けるため、長期的に無理なく働くことができると感じています。

今後も細く長く看護師を続けたい

― 今、「看護師になってよかった」と思いますか?それはどんな理由ですか?

「看護師になってよかった」と思う理由はたくさんありますが、特にコロナ禍を経験して、その思いが強まりました。

医療職は、他の職業が困難な状況に直面している中でも、求人が多く、転職の選択肢が豊富です。これが大きなメリットだと実感しています。

実際に働いてみないと、職場の雰囲気や実態はわからないものですが、看護師という職業の良さは、もし自分に合わない職場に当たった場合でも転職できる柔軟性がある点です。これは看護師の大きな強みだと感じています。

― 今後も看護師を続けたいですか?叶えたいことや、目標があれば教えてください。

今後も、できる限り看護師を続けていきたいと思っています。

先ほどもお話しましたが、6年前に乳がんと診断され、現在も治療を続けています。今の私の目標は、体力的に無理のない範囲で、年齢を重ねても看護師の仕事を続けていくこと。

そのため、ストレスが少なく、自分のペースで働けることは、長く続けていく上で大切な要素だと考えています。現在の職場では、その点が叶えられているので、「細く長く」続けていきたいです。

年齢を重ねるごとに体力の衰えは避けられませんが、その分、勤務日数を調整しながら、最終的には75歳くらいまで現役で看護師を続けられたらというのが今の展望です。

年金制度もどうなるかわからない中で、自分の生活の安定のためにも、そして何より自分自身の健康維持や社会とのつながりを保つためにも、看護師という仕事は私の人生にとって欠かせない職業だと感じています。

― 素敵です。離婚を機に、経済的な自立のために目指した看護師という職業が、今は自己実現に繋がっているんですね。では、今の悩みがあれば教えてください。

今、仕事で悩みはなく、子供の将来と親の介護について悩んでいます。

浪人中の長男の進路は、大きな悩みの1つです。私立の理系大学を志望しており、もし合格した場合には、学費に加えて下宿代も必要になります。経済的な負担も大きく、金銭面での悩みも尽きません。

一方、長女は成績が伸び悩んでいて…。今は一緒に勉強していますが、この先どうなるか心配です。

看護師は命を預かる責任の重い仕事だからこそ、もっと評価されて、給料にも反映されることを願っています。

さらに、両親も年老いてきており、病院通いも増えてきました。先日、父は要介護認定を受け、手すりの設置や訪問看護を導入するなど、生活のサポートを始めています。

私は看護師でもありますが、父は娘である私の話はなかなか聞き入れてくれないため、第三者のサポートをお願いすることにしました。

子供の教育と親の介護が同時進行で重なり、家庭内のことだけでも気が抜けず、心身ともに負担を感じる場面が増えています。

― 介護離職も社会問題になっていますし、同じような悩みを抱えていらっしゃる方も多いと思います。今はどれくらい訪問看護を利用されているのですか?

今は月に1回です。父はまだ老化と病気を受け入れられていない段階なので、この1回を受け入れてもらうまでも、時間をかけて説得が必要でした。父の気持ちも尊重しながら、私の負担が大きくなりすぎないよう、利用頻度を相談したいと考えているところです。

― 最後に、今後の夢を教えてください。仕事でもプライベートでもOKです。

仕事については、繰り返しになりますが、今の職場で無理なく、細く長く看護師としての仕事を続けていくこと。年齢を重ねても、自分のペースで続けていける働き方を大切にしたいです。

プライベートでは、何よりもまず、子供をしっかりと育て上げることが一番の願いですね。それぞれが自分の人生を前向きに歩んでいけるよう、親としてできる限りのサポートをしていきたいと思っています。

年を重ねた両親に対しても、自分の中で悔いの残らないよう、できるだけ在宅で、心を込めた介護を続けていこうと思っています。家族を大切にしながら、自分自身も無理なく続けられる毎日を築いていけたらと思っています。

― ありがとうございました。

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