チーム医療における看護師の役割

医療現場において、チーム医療は重要な役割を果たすと言われていますが、チーム医療とはそもそもどのようなものなのか。またチーム医療における看護師の役割とはどのようなものなのかを解説します。

チーム医療とは

病院には様々な専門職が存在します。医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、臨床放射線技師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、メディカルソーシャルワーカー、医療クラーク、介護福祉士などがその一例ですが、この様々な医療分野のスペシャリストが、それぞれの専門性に応じた、治療やケアを同じ目的や目標に沿って、連携しておこなう事がチーム医療です。ひとりの患者に対して、どれだけの専門職が連携して治療やケアが実施できたかという事がチーム医療としての評価にもつながります。

2010年、厚生労働省では、医療の質の向上を目的として「チーム医療の推進に関する検討会」を設立しました。医療と言えば、医師、看護師というイメージが強いかと思いますが、この2職種だけでは質の高い医療を患者に提供することはできません。薬剤に関しては薬剤師、リハビリに関しては、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、食事に関しては管理栄養士、退院後の生活や社会資源や制度の利用に関しては、メディカルソーシャルワーカーが各分野のスペシャリストです。
例えば、心筋梗塞の患者が入院してきた場合、診断し、治療方針を決定するのは医師です。看護師は入院中の患者の環境を整え、医師に指示に合わせて治療のサポートや看護をおこないます。治療で使用する内服薬や輸液などに関しては、薬剤師がその内容や効果、副作用などを患者に説明し、理学療法士が心臓リハビリテーションをおこないます。退院後の食生活などの改善が必要となる場合には、管理栄養士による栄養指導がおこなわれます。退院調整が必要な場合は、メディカルソーシャルワーカーが調整をおこないます。医師の治療方針に沿って基本的に各職種は連携しますが、各職種からの患者の情報や状態によって、医師の治療方針も検討されます。

このようにひとりの患者に対して、様々な職種が共通の目標のもとで、専門的に連携して関わる事が、チーム医療なのです。

チーム医療を実践することのメリットと難しさ

チーム医療は、医療の質を向上させることを最大の目的としています。各分野のスペシャリストが、それぞれの専門性に応じた治療、ケア、関わり等を最大限に実践することで、チーム医療が目的としている医療の質を向上させることにつながります。医師や看護師だけではできない専門性の高い医療を、各分野のスペシャリストと分担しておこなうことにより、より専門性の高い、治療やケアが実践できるということです。これこそが、チーム医療のメリットなのです。

チーム医療なんて、当然の事なのでは? と疑問に思う方もいるかも知れません。しかし、チーム医療はそんなに簡単に実践できるものではなく、厚生労働省が「チーム医療の推進に関する検討会」を立ち上げるまでは、チーム医療という言葉は知っていても、実際に実践できている病院や施設は多くありませんでした。国を挙げて、チーム医療を推進することにより、現在ではチーム医療の実践は当たり前のこととして認知、実践されるようになりました。

チーム医療の体制

具体的には何が難しいのか、それは病院における医師の存在があまりにも絶対的で強いものであるからです。これは過去からの医師の存在が大きく関係しています。病院の医療は医師を頂点に、その他の職種がその指示に従い、各専門分野の業務をおこなうというのが、過去からの医療現場の状態です。ピラミッドの頂点に君臨する医師に、その他の職種が従い動くという形になってしまうことも多く、全ては医師の権限、指示だけとなってしまい、専門性を高く治療やケアをおこなう事が難しいというのが過去の医療現場の状態でした。まずはこの状態を改善する事がチーム医療の実践には必要となるのです。

チーム医療の難しさ

チーム医療の中心には、常に患者がいます。その患者を囲むように、各専門職がいて、連携して専門的な治療やケアを行う事が必要になります。一方的な医師の指示で動くのではなく、専門職同士が、お互いの専門分野においての見解や意見を持ち、医師と共にチームとして医療方針を協議し、医師が治療方針を決定し、共通の認識、目的を持って連携して治療、ケアを実践しなければなりません。まずはこの形を理解して、実践できるかどうかがチーム医療の最初の課題となります。

さらにチーム医療が難しいポイントが、それぞれの専門職同士が共通の認識を持ち、連携するという点です。同じ医療職でありながら、それぞれ専門分野が違うため、患者を見る視点や重要視する点に違いが生じてしまうこともあり、時には意見が食い違うこともあります。しかしチーム医療に必要なのは共通の認識と連携です。お互いの意見を上手く融合し、共通の認識となるように調整する事が必要となるのです。これが二つ目のチーム医療の難しい点です。それぞれの専門職であるからこそ見えるということを理解し、患者のためにより良い治療やケアを実践するためにも、良いチーム医療を実践できるように取り組んでいく事が大切です。

チーム医療における看護師の役割とは

チーム医療における看護師の役割とは、治療方針に基づいた治療の介助と、患者が安心して治療を受ける事ができる環境を整える事です。また、入院中の生活をサポートすることも看護師の役割です。患者の一番近い位置で、一番長く関わるのは看護師です。その為、患者と医療者をつなぐ橋渡し役としての役割も看護師に求められます。患者はチーム医療として関わる専門職に対して、様々な思いを伝えられないということも珍しくありません。そんな時、看護師が患者の思いをチーム内に情報提供することにより、より良いチーム医療の実践へとつながるのです。

さらに、看護師はチーム医療で必要な連携の推進役であり、チーム医療のキーパーソンであるとも言われています。スムーズな連携はチーム医療の実践もスムーズにします。そのため様々な場面で意見の調整が必要となる事があります。そんな時、各職種間の連携をスムーズにするのは、看護師の大きな役割であり、チーム医療の連携に看護師は欠かす事が出来ない存在なのです。

また、看護師の大きな役割のひとつに、家族との関わりということもあります。チーム医療は患者を中心としたものではありますが、患者の家族も同時にチーム医療に巻き込んでいかなければなりません。退院後の生活や、継続した治療が必要となる場合には、家族の協力は必要不可欠なものとなります。患者と同時に、家族に対しての様々なケアや配慮することも、結果的には患者にとって必要なことになるのです。

また看護師は看護の専門職としての視点から、患者の問題点を見出し、その問題点の解決に向けて看護を展開していかなければなりません。患者の抱える様々な問題点は、看護師だけで解決できるものばかりではありません。そんな時は他の専門職と連携し、チームとして問題を解決していく事が必要となります。看護師はチーム医療の中の調整をするだけでなく、看護の視点から患者の問題解決をおこなう、スペシャリストとしての役割も果たさなければならないのです。

これからのチーム医療のあり方

これからの超高齢社会に向けて、国は地域包括ケアシステムというプランを掲げています。ご存知の方も多いかと思いますが、この地域包括ケアシステムは2025年を目標にその対策が検討されているプランです。2025年には65歳以上の高齢者の人口が3677万人に達し、全人口の30.3%が65歳以上になります。3人にひとりが65歳以上の高齢者となるわけです。
その後も急速に高齢化が進み、2055年がピークで65歳以上の高齢者の割合は全人口の39.4%、そのうち75歳以上の高齢者の割合は全人口の26.1%になると推測されています。

そんな超高齢社会の対策として、掲げられている地域包括ケアシステムこそが、次世代のチーム医療の形なのです。地域包括ケアシステムでは、【医療】【介護】【生活支援・介護予防】の3つの柱で出来ています。
病気になれば病院などの医療機関で治療を受け、介護が必要となれば施設や在宅での介護を受けます。またいつまでも元気に暮らすためにという目的で、生活支援や介護予防に対しての取り組みが行われます。

これらの3つの柱の中心は高齢者が生活する自宅となります。自宅を基盤として、高齢者の状態に合わせて、病院、介護、生活支援・介護予防が選ばれるというものです。医療機関においては、今まで通りのチーム医療が実践されますが、今後は医療機関だけでなく、介護施設や、生活支援・介護予防を行う老人クラブ、自治会、ボランティア、NPOなどとも連携を図り、地域全体でのチーム医療が求められるのです。

高齢者が病気になった場合、治療すれば全てが完治するという場合ばかりではありません。退院後も継続して治療や再発予防などの取り組みが必要となります。病院で全てを完結出来ないまま、患者は自宅へと戻り生活をしていかなければなりません。現在でも退院調整などで、退院後の生活を患者、患者家族と相談し、様々な調整をおこないます。高齢者が増えるということは、今後益々この退院調整が必要となるということだけでなはなく、地域包括ケアシステムに準じて、医療機関の外でもチーム医療を実践して行く事が必要となるという事なのです。

地域包括ケアシステムは、厚生労働省がその方針を打ちたてましたが、具体的な内容は都道府県や各市町村自治体へ託されています。既に多くの自治体では地域包括ケアシステムに対しての具体策が検討され、実施されているところもありますが、まだまだ全国共通というには程遠い状態です。
さらに各自治体でということになれば、患者の住居のある自治体の取り組む内容との調整が必要となり、求められるチーム医療はさらに複雑なものになってしまう事が予測されます。我々医療人も今後の高齢化社会に向けての対策を、具体的に検討して行く事が求められているのです。チーム医療は次なるステージにその進化が求められており、高齢化社会・高齢社会・超高齢社会における病院、介護施設、自治体などの広い範囲でのチーム医療は、より良い社会、高齢者が安心して生活できる社会という面において、必要不可欠なものになるのです。

まとめ

チーム医療は、医療の質を高めることを目的して、全ての医療機関においてその実践が推奨されているものです。難しい部分はありますが、患者に提供する医療の質は、必ずより良いものになります。チーム医療のポイントは中心に患者がいて、各専門職が患者の周囲から、共通の認識を持ち、連携し治療やケアを提供していくことです。バラバラの認識では、連携はできずチーム医療はできません。

看護師はチーム医療の中で、患者と各専門職の橋渡し役であり、専門職間の調整役でなければなりません。その調整は時として患者家族を巻き込んだものでなければならない場合もあります。看護師のチーム医療における役割は、チーム医療を実践するうえで、欠かすことのできないものであり、看護師はチーム医療におけるキーパーソンであると言われています。

さらに看護師は、看護の専門職としての視点から、患者の問題点を見出し、その問題点の解決に向けて看護を展開していかなければなりません。チーム医療を実践すれば、医療の質は向上しますが、各専門職それぞれが、患者に対してより良い医療、ケアを提供するという姿勢を忘れず、取り組むことも忘れてはいけません。この姿勢こそが、チーム医療をより良く実践するために重要となるのです。

そして、これからのチーム医療は病院を飛び出して、超高齢社会に対応できるものへと進化しなければなりません。2025年を目標に掲げられて地域包括ケアシステムは、高齢者が安心して生活するために必要不可欠なシステムです。これまでの病院内の専門職との連携に加え、介護の分野や、市町村や行政との連携がこれからのチーム医療には求められます。やがてくる超高齢社会に向けて、地域包括ケアシステムに関わる全ての人達が、高齢者が安心して生活できる社会を目指し、それぞれの役割、立場を十分に理解し、連携してく事が必要な時代となるのです。まだ先と考えずに、一日も早く次なるチーム医療の実践に向けて準備を始めていく事が大切なのです。

この記事を書いた人:永島直俊
看護師として17年臨床勤務。
看護管理、院内感染、医療安全、救命救急、手術室、病棟看護経験あり。
管理職(看護部長の経験あり)として、各種管理、病院経営、職員教育の実戦経験あり。
現在はフリーランスとして医療関連、看護関連の執筆、記事監修などをおこないながら、次なる目標を求めて自己研鑽中。

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