看護師がついやってしまう、用語や略語の落とし穴

テレビ業界でも「シース―」や「ザギン」などの業界用語があるように、医療業界でも様々な用語や略語が存在します。看護学生時代や新人時代はそれらが何をさしているかわからずに苦労しますが、徐々に仕事に慣れてくると、ある程度それらの用語や略語を使いこなせるようになっていきます。
世間で使う略語と医療で使う略語の違いを感じる瞬間もありますよね?よくあるものとして・・・

世間 略語 医療
ダイレクトメール DM 糖尿病
野球のWBC WBC 白血球
生命保険 生保 生活保護
ゴールデンウィーク GW グループワーク/ガーゼ交換

そもそもなぜ、医療の現場においてたくさんの専門用語や略語が存在しているのでしょうか?そして、看護師としてより多くの用語や略語に対応できるようになるためには、どのようなことがポイントとなるのでしょうか?

今回は、看護師の用語・略語について解説していきます。

1. 看護師が用語や略語を使う理由とは?

看護学生として病棟に入り、看護師さんが聞きなれない用語が略語を使っているのを見た時、「かっこいいな。私もあんな風に略語や用語を自然に使えるようになりたいな。」と思いませんでしたか?

用語や略語を使うとかっこいいように感じますが、もちろん看護師が仕事上用語や略語を使うには、それなりの理由がちゃんと存在します。「知らない用語や略語が出ていたら、その都度調べなくちゃいけないから面倒くさい」と思いがちですが、まずはなぜそれらを現場で使っているのか、その理由について考えてみましょう。

患者にばれないようにするため

看護師は患者へ看護を提供するために、患者の病状や家庭の事情など、様々な情報を扱っています。情報の中には、患者に知られないように注意しなくてはいけないものも存在します。

そのような情報を医療の現場で取り扱う時、用語や略語を使うことで知られるリスクを減らすことができます。例えば患者が亡くなることを「ステる」という用語で表現します。

病棟内はもちろんのこと、ナースステーション内においても、どこで患者が看護師の会話を聞いているかわかりません。そのような時、「〇〇さんが昨日亡くなってね」とストレートに話してしまうよりも、「〇〇さんが昨日ステってね」と言った方が、患者に「〇〇さんが亡くなった」という情報が伝わりにくくなります。

最近はネットの普及により、不審に思った患者が看護師の使った略語や用語の意味を調べ、内容がわかってしまってトラブルとなった、というケースも出てきています。そのため、「用語を使っているから患者には知られないだろう」と安易に患者の前で使うのは、避けたほうがよいでしょう。

時間を短縮できる

病名や術式の正式名称を聞いて、「漢字が多い!そして、長い!」と感じたことはありませんか?同じ医療者とカンファレンスなどで話し合う際、正式名称をいちいち言っていては、時間がかかってしまいます。

そのような時にも、

  • 慢性閉塞性肺疾患のことは「COPD
  • 冠動脈バイパス術は「CABG

など、正式名称を使うよりもアルファベットの略語を使うことで、大幅に時間を短縮することができます。

また、記録に残す際にもいちいち「慢性閉塞性肺疾患による…」と記載するよりも、「COPDによる…」と記載したほうが、時間を大幅に縮小することができます。

ただし、カルテなどに記載する際は、病院ごとに「記載してよい略語」を規定している、あるいは略語の記載そのものを禁止している病院もあるため、記録に使う際には「どの略語は記載していいのか」を事前に確認しておくことが大切です。

より専門的な話ができる

看護学生時代や新人、異動や転職直後では、用語や略語がわからず、みんなが何を話しているかわかりません。もしその時に、用語や略語を理解することができれば、それだけその領域の専門性を高められるのです。

例えば内分泌科に配属され、糖尿病についての薬について医師とカンファレンスをしている際、「この人はSUを使っていたけれど効果がいまいちだね」「この人はBGを飲んでいましたっけ?」と話していたとします。

  • SUとは「スルホニル尿素薬」
  • BGとは「ビグアナイド薬」

の略語です。これらを知っていることで、より専門的な話ができる第一歩を踏み出すことができるのです。

その領域の専門用語や略語の知識を増やし、身に着けておくことで、「SU?何それ。薬について話しているようだけど…」という状態から、「スルホニル尿素薬を使っているのに、なんで効果があまり出ていないんだろう?」とより深く疾患や治療方法を学ぶことができ、看護師として成長することができるのです。

2. 看護師が用語や略語を使うことで起きるトラブル

看護師や医療従事者が医療の専門用語や略語を使うことには、様々な理由が存在しています。しかし、用語や略語を使うことは、決していい面だけではありません。

では、用語や略語を使うことでどういったトラブルが起こりうるのでしょうか?
そして、それらのトラブルにはどのように対応すればよいのでしょうか?

その分野に精通していないと、意味が通じない

先ほど「専門的な話ができる」でも触れましたが、用語や略語はその領域に精通していないと意味が理解できないものもたくさんあります。そのため、その領域に慣れていない人にとっては、わからない言葉が次から次へと出てきて、意味が通じないということになります。

私自身、それまで経験したことがなかった領域へ配属された際、はじめは医師の書いたカルテや先輩たちのカンファレンスで使われている略語が全くわからない状態でした。

患者が今どのような状態なのか、看護師として最低限知っておかなくてはならないのに、カルテを読んでも用語や略語がわからないので、情報を十分に得ることができません。これではダメだと思った私はしばらく白衣のポケットに略語辞典を持ち歩き、「この言葉、知らないな」と思ったら、その場ですぐに辞典を出して調べるようにしました。

また、仕事の合間に少しでも時間があれば、医師が記載したカルテを読み、その中でわからない用語や略語は意味を調べるようにしました。そして、一日の終わりにはその日に調べた用語や略語についてメモ帳にまとめ、次にわからなかった時にはそのメモ帳を見ればすぐにわかるようにしておきました。

これを繰り返し、少しずつですが専門用語や略語について理解できるようになりました。カルテもカンファレンスなどでも内容が頭に入ってくるようになりました。このように、用語や略語にある程度慣れるまでは、かなりの時間と努力を要するのです。

患者に誤解されてしまう

用語や略語に慣れてくると、患者との会話でもついそれらを使ってしまいがちです。例えば朝、患者の元へ行き「今日は夜に検査があるため、禁食です」と伝えたとします。

私たち看護師には「禁食」という言葉は日常茶飯事に使われているために「食べてはいけない」と理解できますが、患者さんにとっては「禁食ってことは、食べちゃいけないんだろうけど、ゼリー飲料とかそういったものだったらいいのかな?」と誤解してしまう可能性があります。

ずっと用語や略語を使っていると、それらが医療現場だけの用語や略語であることをつい忘れてしまいがちです。そして、それを日常会話でも使ってしまうことで、周囲とのコミュニケーションに支障が出ることもあります。

そのため、このケースでは「禁食です」と専門用語を使うのではなく、「この時間まではものを食べず、飲み物だけにしてください。」というように、より分かりやすい表現で伝えることが大切となります。

意味を知りたくても、教えてもらえない

新人時代は、先輩から仕事について様々なことを教えてもらう期間です。しかし中には、わからない用語や略語を先輩に聞いても「自分でそれくらい調べて」と言われてしまい、教えてもらえない、ということがあります。

それが辞典やネット上で調べられる用語や略語だったらまだよいのですが、その病院や病棟独特の用語や略語であるため、何を表しているのかわからないことも出てきます。そのような時、意味がわからないまま仕事をしなくてはいけないことになり、自分自身も困りますし、意味が通じないことで先輩たちも結果的に困ることになります。

もし仕事上でわからない用語や略語があったら、まずは自分で一度調べてみます。そして、それでもわからない場合には、「自分で辞書やネットで調べてみたんですが、意味が載っておらず、わかりませんでした。教えてもらえませんか?」と聞いてみましょう。

一度自分で調べたということを言えば、ほとんどの先輩はきっと快く教えてくれるでしょう。

3. 看護師が用語・略語により詳しくなるために

仕事をする上で医療用語や略語を使うことは、メリット・デメリット双方が存在します。しかし、せっかく看護師として働いているのですから、より自分を成長させるためにも、積極的に用語や略語に慣れていきたいものですよね。

そこで、より用語や略語に強くなるためには、どのようなことに注意していけばよいのでしょうか?

用語・略語辞典を持ち歩く

もし自分が知らない用語や略語が出た場合、その場ですぐに調べるのがベストです。
「家に帰ってからネットで調べる」という方もいらっしゃいますが、用語や略語の中には意味が複数あるものも存在するため、できる限りすぐに調べることが大切です。

すぐにネットで調べられれば良いですが、スマホを持ち歩くわけにはいきませんし、何よりネット上で出ている意味が本当に正しいかどうかはわかりません。

そこでお勧めなのが、用語・略語辞典を常に持ち歩くということです。最近は各領域の略語も掲載されているポケットサイズの辞典も複数出版されています。それを常に持ち歩き、「これ、どういう意味なんだろう?」と思ったらすぐにその辞典で調べ、意味を確認すること。

ネット上でも確かに簡単に調べることができるのですが、中には医療の専門知識がない人が編集していることがあり、本当にその情報が正しいのか判断できないことがあります。

一方、用語・略語辞典では専門家が執筆・監修しているために、より信頼できる情報が掲載されていることがほとんどです。そのため、ネット上で調べるよりも、用語・略語辞典を持ち歩いて調べ、知識量を増やすことをお勧めします。

先輩へどんどん質問をする

辞典やネットで調べてみても、どのような意味かわらかない場合には、そのままにせず、先輩へどんどん質問するということも大切です。自分で一度調べてから質問することで、先輩から「自分で調べてよ」とその場で回答を拒否されることを防ぐこともできます。

中には、用語や略語の意味だけではなく、「これじゃなくて、こっちの本に載っているよ」と用語や略語の調べ方を教えてくれる先輩もいるかもしれません。

また、病院によっては、院内で使用している略語を一覧にしているところもありますので、そのようなものを先輩から教えてもらい、コピーして覚えるというのも良いでしょう。

「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」です。わからない略語や用語があったら、まず自分で調べ、それでもわからない場合には積極的に先輩へ質問することで、どんどん自分の糧にしていきましょう。

学ぶ環境を変えるというのも一つの手段!

「先輩に質問したいけれど、うちの病棟は人間関係がよくなくて。用語や略語について知りたいことがあってもそのままになってしまう」と思っている方、いませんか?用語や略語についてもっと知りたいという意欲があり、看護師としてより成長するチャンスなのに、人間関係によってそのチャンスをつぶしてしまうのは、とてももったいない事です。

そのような時は「仕方ない」とあきらめるのではなく、ぜひ思い切って学ぶ環境、つまり職場を変えることをお勧めします。

看護師として成長するために、先輩に教えてもらうということはとても大切なことです。先輩とうまくいかず、自分の疑問を質問できない環境では、自分が看護師としてより成長する機会をつぶしてしまうことになります。

私も新卒時代、先輩たちとの関係がうまくいかず、質問できないことでどんどん関係が悪化してしまいました。そこで思い切って転職し、新しい環境で一から先輩との関係を見直し、わからないことはどんどん質問するようにしたことで、看護師という職業のやりがいや楽しさに気づき、成長することができました。

4. 積極的に聞いたり調べたりして看護師として成長しよう

用語や略語を使う理由や身につけるための方法をご紹介しました。用語や略語を使うことはメリット、デメリット両方ありますが、より専門的な知識を増やして看護師として成長するチャンスでもあります。使い方には注意しながら、積極的に吸収していきましょう!

用語・略語辞典が気になる方はこちら

この記事を書いた人:りこママ
看護師、地方糖尿病療養指導士の資格を生かし、2014年よりライター業を開始。
看護系以外にも経験を活かし、育児、病気、介護など、幅広い分野の執筆を手掛けている。
ライター業の傍ら、0歳と1歳の年子、犬二匹、夫(医療従事者)1人の世話にも追われる日々。

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