看護師が抱える看取り時の不安やストレスって?解消ための糸口

患者さんを看取る際、不安やストレスを感じることは避けられないでしょう。看取り期を担当される方は、これから死を迎える患者さんの気持ちに本当に寄り添えているのか、今行っている治療と患者さんの希望との間に不一致はないか、悶々としながら患者さんに向き合っているのではないでしょうか。
今回はまず、皆さんと同じように、看取り期の不安やストレスを経験した看護師の声を紹介します。その後、患者・家族・看護師それぞれが抱える不安やストレスへの対処法をご紹介します。
同じ思いを抱える看護師がいることを知り、少しでも不安を解消して患者さんを看取れるようになってもらえると幸いです。

【1】 看護師が抱えるストレスとは?

まずは、実際に看護師が経験した看取り期の不安やストレスの事例を紹介します。看取り期を受け持つ看護師はどのような場面で不安やストレスを抱えているのでしょうか。

声掛けの仕方が分からない

体調が優れず化学療法を中止していた患者さんが、急性心不全となりICUに来られました。(中略)管理者レベルのスタッフは「大丈夫よ!ここに来たんだから治るって!」と声をかけていました。私はとてもそんなこと、気休めでも言えない、と思ってしまいます。
引用:ナース専科 ラウンジ ICUでの看取り

終末期を迎えた患者さんの気持ちは経験していない私たちには計り知れません。そんな中、声掛けをしようにも元気な自分が何を言って良いのかわからず、悩む看護師は少なくないようです。

ご家族の意向が変わる

入所している利用者さんが高齢で、徐々に食事がとれなくなったため、看取りを開始しました。ところが、発熱をしたら、病院に受診してほしいとのこと。施設で、できる医療の範囲でと説明すると、「今まで、発熱すると、病院に行っていた」と言われ、結局、看取りを解除して、受診となりました

引用:ナース専科 ラウンジ 介護施設での看取りについて

このケースでは、患者さんのご家族が、看取りに切り替えることに同意したにもかかわらず、再度病院での受診を希望されたようです。看取りに関して医師からの説明もあり、同意のサインもされていたため、担当した看護師はどこか納得できなかったようです。

医師や家族が患者さんに本当の病状を伝えない

子どものがん患者の話ですが、未告知でメタが広がっていたのですが、主治医が元気になるなどと言ったため、最期の看取り間近のとき、主治医に対して、「先生の嘘つき」と言って亡くなりました・・
引用:ナース専科 ラウンジ ICUでの看取り コメントno.3

患者さんの精神状態を鑑みて、医師やご家族が患者さんに本当の病状を告げないケースもあります。「本当のことを知りたい」と思っている患者さんの意思と、「伝えるのは酷である」と考えている医師やご家族の意思との間で板挟みになり、ジレンマに苦しめられるといった事例があります。

【2】患者さんのストレスや不安に対処するには?

患者の思いを家族に伝える

患者さんや家族間、また患者さんと医師とので治療に対する意思が食い違っている場合もあるでしょう。実際に患者さんが積極的な治療を希望していなくても、医師のプッシュで治療方針が決まってしまうこともあり得ます。一方で、患者さんは、家族に迷惑をかけてしまっているために自分の意思を伝えにくい状況にあるかもしれません。そんな時は「もし伝え辛いことがあれば私がお伝えしましょうか」と声をかけてみることもできるでしょう。

声掛けパターンを知っておく

・「なぜそう思われるのですか?」と聞いてみる
患者さんのネガティブな発言に対して、前向きな声をかけることに躊躇することもあると思います。そんな時は無理に元気づけるような声掛けはせず、「なぜそう思うのですか?」と問うことで本音を聞き出しましょう。なぜ?を問うことで患者さんも気持ちの整理をすることができ、自分で見えていなかった思いに気づくこともあります。

・オウム返しをする
「とにかく自分の不安を誰かに話したい」という思いでネガティブな気持ちをお話される患者さんもいらっしゃいます。「痛みますよね」「ご家族を心配されているのですね」など、患者さんが話した内容をオウム返ししたり、換言したりすることで、ネガティブな気持ちを他者に共感され、安心することができます。

・手を握る
「誰かがそばに居る」ことを実感できるだけでも不安や恐怖が和らぎます。声掛けが難しい場合には、行動で寄り添いの気持ちを示してあげることができます。

【3】ご家族の不安やストレスに対処するには?

患者さん本人はもちろん、「第二の患者」と言われるご家族も不安やストレスを抱えていらっしゃいます。特に、病状を宣告された時と、死の直前期にはご家族の不安がピークに達すると言われています。

ご家族はどのような精神状態になる?

病状の宣告時には、ショックで一時的に動揺した状態になることがあります。また、患者さんの病状の悪化に対して「できることがあったはず」と自責の念に駆られたり、患者さんのお世話に忙しく自分の時間を取れないことから怒りの感情を感じたりされる方もいらっしゃいます。特に、終末期には日を追うごとに元気がなくなっていく患者さんを前にできることがなく、無力感を感じてしまう方もいます。

ご家族を支援するためには?

キーパーソンにできるだけ頻繁に連絡を取る
病状の告知後、少し時間が経てば冷静になり、ご家族が「この治療方法で本当に良いのか」と治療に対して疑問を抱くこともあるでしょう。また、親戚や近しい友人などの意思などにも影響され、一度計画したケアも方法を変える必要も出てくるかもしれません。
そんな中大切なのはご家族の中のキーパーソンと頻繁に連絡を取ることです。ご家族の周りに居る人々も患者さんを心配されて治療に意見するようになると、連絡をとっていない間にご家族での治療の意向が大きく変わり、必要な治療とのギャップが生まれてしまう可能性があるため、病状の報告に加えて、治療方針についても定期的に確認を行うようにしましょう。

患者の容体の変化を事前に伝える
病状の宣告時、ご家族は患者さんの心身にこの先どのようなことが起こるのかが分からないために不安になります。人によっては、「何が起こってもおかしくない状態」と伝えられるだけでは余計に不安が大きくなってしまいます。必要に応じて、これから起こりうる症状を事前に伝えておくことで、ご家族もそれに対する心構えができ、不安要素を一つ解消することができるでしょう。

患者さんの状態の変化を肯定して伝える
ご家族が会えない間にも患者さんの病状は変化するもの。時には病状が悪化していることを伝えなければならないことも少なくないでしょう。この時、ご家族の不安を取り除くために、患者さんの変化を肯定して伝えることが大切です。「このような状態になる患者さんは他にも多くいらっしゃいます」と他の事例を提示するなどして、家族が病状を受け入れやすくなるよう説明することを心掛けましょう。

簡単にできることを実践してもらう
終末期を迎えられた患者さんをいざ目の前にしたとき、「何をしていいのか分からない」ことからストレスを感じられるご家族もいらっしゃいます。例えば、「反応はしていなくてもご家族の声は聞こえています」と一言伝えて呼びかけを促したり、痛みが現れた時にはどのように体をさするかレクチャーしたりして、ご家族にできることから実践してもらいましょう。

リラックスできるスペースで話をする
患者さんのいる病室など、緊張した場所にあると、ご家族と本音ベースで話をするのは難しいこともあります。外に出て散歩をする、ラウンジで飲み物を飲みながら話をするなど、リラックスしてお話する時間を作りましょう。ご家族が不安を抱えている背景には、ご家族が望む最期と行っている治療についてのギャップを感じているというケースも存在します。リラックスした場を設けることで、ご家族と病院側の認識の差を埋めるきっかけになります。また、病室から離れた日常会話の中で、患者さんに対するご家族の思いを知るためにも有効です。

【4】自分自身のストレスに対処するには?

「何ができたか」に目を向ける

死後カンファレンスの時間を有効に使えているでしょうか。本来、死後カンファレンスは、患者さんを看取った後、治療やケアを振り返り、次へ繋げていくことを目的としていますが、その中であなたの抱いた不安やジレンマを共有することが何より大切です。
「もっとこうしておけば」と「たられば」の話をしても前には進んでいかないと思わず、まずは自分が抱いた感情をそのまま吐き出してみてください。そうすることで、「こうしておけば」から「できたこと」がおのずと見えてくるでしょう。

死をネガティブなものと捉えない

最近では、「終活」という言葉を耳にすることが多くなってきました。従来のように、「死」をネガティブなものとしてタブー視するのではなく、誰にでも起こりうる「死」を受け入れ、「どのように最期を迎えたいか」そのために「どのように今を生きていくか」に焦点を当てた考え方です。

ある研究では、死を否定的なものとして捉えている看護師よりも、肯定的に捉えている看護師の方が、患者さんに対する「踏み込めない」「逃げ出したい」といった感情が少なくなるという結果が出ています。

「死」について語ることをタブー視するのではなく、理想的な最期の形について、ご本人や、難しい場合はご家族と話をすることで、患者さんに対する「踏み込めない」「逃げ出したい」といった感情も少なくなり、「患者さんの本質的な希望を知ることができない」「声掛けの仕方がわからない」といった無力感の解消にも繋がります。

【5】患者さんやご家族に寄り添うあなたへ

看取りを行う終末期は、特に患者さんやご家族の精神状態が不安定になる時期です。
患者さんへの精神的なケアを行うことは身体的なケアを行うよりもストレスが大きくなるといわれており、看取りを経験される看護師のみなさんは言葉にできない辛さを抱えています。

どれだけ看護師の経験が長くても「人の死」に慣れることはできないもの。
患者さん一人ひとりにとって理想の最期は違うため、「ベストな答え」を見つけることは非常に困難です。

今回紹介したストレスや不安への対処法はあくまで一例であり、患者さん一人ひとりの状態に必ず当てはまるものではありません。そのため、患者さんの病状やご家族の意思に沿った対応ができているかどうかは、医師や周りの看護師と充分に確認し合う必要があります。

しかしそんな答えがない状況の中、患者さん一人ひとりに向き合って、悩んだり、考え続けたりしたことは、それ自体が看護師として立派な役割を果たしたと言えると思います。
その方らしい看取りについて悩み考えたあなたの経験は他の看護師仲間にも新しい視点を与えるかもしれません。この機会に、ご自身の経験について周りの方とシェアしてみてはいかがでしょうか。


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